様々な切り口を味わう、ぜいたくな短編集
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通勤途中や家事の合間など、スキマ時間の読書でぜいたくなひとときを―。
NHK WORLD‐JAPANのラジオ番組で、
世界17言語に翻訳して朗読された小説のなかから、
選りすぐりの8作家の作品を収録したアンソロジー。
夫が遺した老朽ペンションで垣間見た、野生の命の躍動。
震災で姿を変えた故郷、でも変わらない確かなこと。
心が疲弊した孫に寄り添う、祖父の寡黙な優しさ…。
彩り豊かに贈る、好評シリーズ第三弾!
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NHK WORLD‐JAPANのラジオ番組で、
世界17言語に翻訳して朗読された小説のなかから、選りすぐり・・・
というアンソロジーシリーズ3冊目です。
★「ピアノのある場所」沢木耕太郎
転校が決まったユミコは最後に友だちのマリちゃんの家へ遊びに行きます。
ところが約束したはずなのに、マリちゃんはどこかへ遊びに行ってしまって、いない。
マリちゃんのお母さんが恐縮して、マリちゃんが帰ってくるまで待っていて、と家へ上げる。
マリちゃんの家はピアノもあって優しいお母さんがいて、
紅茶とお菓子なんかも出してくれる。
仕事もせずごろごろしているお父さん、パートにでているお母さんのいる
我が家とは全然違う。
しばらく待っても戻らないマリちゃん。
ユミコはマリちゃんなんか戻らなくてもいい、
このまま自分がここの子になってしまいたいと思いますが・・・。
子どもにはつらい現実だけれども、
最後に家に帰ったユミコへ、お父さんからの意外な一言。
ふっと落ち込んでいく気持ちをすくい上げてくれる、ステキな一作でした。
★「ムシヤシナイ」高田郁
秋元は駅構内の立ち食い蕎麦の店を営んでいます。
そんな店へある日中学生くらいの少年が訪ねてくる。
よく見るとそれは、5年ぶりに会う孫の弘晃。
弘晃は親の期待が過剰で、勉強漬けの毎日が苦しく、家出してきたのでした。
そんな彼が「立ち食い蕎麦の店」なんて、むなしくないかと聞くのです。
軽く何かを食べて、腹の虫をなだめておくのが「ムシヤシナイ」。
とりあえず駅蕎麦で空きっ腹を養うのもいいのじゃないか、
ちゃんとした食堂ばかりなら息苦しい・・・と、秋元は孫に言うのです。
孫にとっては祖父とのひとときがムシヤシナイであったようです。
★「ああ幻の東京五輪」他 山内マリコ
ここにある短編4篇はとてもユニークで、東京の「区」が語り手。
例えば始めの「ああ幻の東京五輪」は、「世田谷区」が語り手で、
1940年に開催されるはずだった東京五輪では世田谷区がメイン会場となるはずだった・・・と、
五輪にまつわる自慢やら悔しさやらを説き始めます。
そして2020年の東京五輪では
「既存施設を利用する」ことをモットーとしながら、
世田谷区内の施設は何にも使用されないことを憤慨しているのです。
面白い切り口もあるものですね。
最後の方に「いまは2020年の東京オリンピックが、
無事に開催されることを祈るばかりでございます」とあるのが、なんとも・・・。
他に、板橋区、江戸川区、そして「東京都」が語り手となります。
何もないところへ家康がやって来て町を造る。
その町はどんどん人が増えるけれど
幾度も火事やら地震やら、戦争やらで壊滅状態になって・・・
という東京の歴史を語る部分は圧巻です。
・・・と、好きな作品もありながら、
なんだかもう飽きてきまして、
本シリーズ、次の巻が出たとしてももう買わないかも・・・と思ったりして。
「1日10分のぜいたく」あさのあつこ他 双葉文庫
満足度★★★☆☆
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