ナチス兵だったことは罪なのか?
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イギリスの国民的英雄となった元ナチス塀のサッカー選手、バート・トラウトマンの実話です。
1945年、イギリスの捕虜となったナチス兵のトラウトマン。
収容所でサッカーをしているのを地元のサッカーチーム監督が見て、スカウトします。
日中は監督の営む食料品店を手伝い、サッカーの練習や試合に参加。
用が済めば収容所に戻ります。
捕虜の行動は意外とゆるゆるだったんですね・・・。
でももちろん、この時期はイギリスも散々ドイツの空襲を受け、大きな被害を被っていて、
ドイツ兵をサッカーチームに入れるなんて何事だと一悶着はあったのです。
監督の娘・マーガレットも、
店にトラウトマンが入ってくるだけでも戦線恐々としていました。
しかしやがてトラウトマンの誠実な人となりがわかってきて、
そしてチームのゴールキーパーとしての活躍もモノを言い、
次第に彼は皆に慕われるようになっていきます。
やがてドイツは降伏し、終戦。
トラウトマンは名門サッカークラブ「マンチェスター・シティFC」にスカウトされ、
帰国せずにイギリスに残ります。
そしてマーガレットと結婚。
ところがその名門クラブの入団でまた、
元ナチス兵ということから想像を絶する誹謗中傷を浴びてしまうのです。
戦争は何も彼のせいではない。
他の道を選びようもなく兵士となっただけなのに・・・。
このような理不尽をもくぐり抜け、
やがて彼はイギリスの国民的英雄とも言える名選手となるわけですが・・・。
やがて彼は一人息子を事故で亡くすことになる。
どんな人生も順風満帆とはいかないものです。
本作で優れているのは、トラウトマンが捕虜になる以前、
ユダヤ人の子どもたちとのある出来事の光景が、
ときおり彼の脳裏に蘇るというエピソードを入れたこと。
ナチス兵だとイギリス人に糾弾される以前に、彼はある「罪」を犯したと思っているのです。
それは妻に打ち明けることもできない恥の記憶。
この記憶と、あるアイテムを結びつけることで、
物語が一層奥深くなっていると思います。
<映画.comにて>
「キーパー ある兵士の奇跡」
2018年/イギリス・ドイツ/119分
監督:マルクス・H・ローゼンミュラー
出演:デビッド・クロス、フレイア・メーバー、ジョン・ヘンショウ、ハリー・メリング
人種差別の歪み度★★★★★
満足度★★★★.5
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