初老の男と無邪気な少女の旅情
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フランスの喜劇王ジャック・タチが娘のために残した脚本をアニメ映画化したものです。
1950年代パリ。
初老の手品師タチシェフは、場末のバーで時代遅れの手品を披露しながら細々と暮らしています。
あるとき、バーで知り合った男の招きで、スコットランドの離島へ赴きます。
タチシェフはそこで貧しい下働きの少女・アリスと出会います。
アリスはタチシェフの手品を見て、魔法使いだと信じ込み、
またタチシェフは、アリスに生き別れた娘の面影を重ねていました。
やがて二人はエジンバラで一緒に暮らし始めますが・・・。
パリを離れて遠くスコットランドやエジンバラへの旅。
美しい光景とその時代性、なんとも旅情がかき立てられます。
二人が一緒に暮らし始めるといっても、全く性的な関係はなく、
タチシェフはひたすらにこの子がかわいくて守りたい。
つまりは本当の娘のように思っているのでしょう。
さてしかしアリスは、タチシェフが何もないところから靴などを取り出すのを見ても、
それは魔法だと思っているので、嬉しくは思いますがさほど感謝の念がありません。
そして次々に別の靴やオシャレなコートを欲しがります。
タチシェフは手品の仕事だけでは全く稼ぎにならないので、
密かにアルバイトを始めます。
涙ぐましい努力で手にした稼ぎも、宿代とアリスの洋服などで消えていきます。
アリスはいつの間にか貧しい下働きの少女ではなくて、
オシャレな都会の少女になっているのです。
それはもうすでにタチシェフが娘の面影を見た少女ではないのかも知れない・・・。
生きるのに疲れた初老の男に対しての、少女の無邪気さ故からなる残酷姓が浮かび上がります。
よくぞこんなストーリーをアニメにしたものです・・・。
タチシェフの商売道具である「ウサギ」が見当たらず、
その日の食事のメニューがウサギのシチューで、
密かに焦ってしまっているタチシェフのシーンがおかしかった。
(幸い、彼のウサギはシチューにはなっていませんでした!)
「イリュージョニスト」
2010年/イギリス・フランス/80分
監督・脚本:シルバン・ショメ
出演(声):ジャン=クロード・ドンダ、エルダ・ランキン
旅情性★★★★☆
満足度★★★★☆
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