映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ハナレイ・ベイ

2019年09月23日 | 映画(は行)

悲しみを悲しめない

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村上春樹さんの同名小説が原作です。
確かに、そういう雰囲気がしっかり出ていました。

シングルマザーのサチ(吉田羊)は、ある日突然、
一人息子タカシ(佐野玲於)の死亡の連絡を受けます。
ハワイのカウアイ島、ハナレイ・ベイでサーフィン中、サメに襲われて亡くなったのです。
早速現地へ赴いたサチ。
タカシの火葬を終えたサチは、その地にしばらく滞在し、
海岸にチェアを置き、読書をして過ごすのでした。

そしてそれから10年。
サチは毎年同じ時期にハナレイ・ベイへ行って過ごすことを繰り返していました。
このときも同様にハナレイ・ベイを訪れたサチは、
二人の若い日本人サーファーと親しくなります。
その二人が、赤いサーフボードを持った右足のない日本人サーファーを何度か見た、
と言うのです・・・。

 

サチとタカシは母と息子でありながら、どうにもそりが合わないようで、
同居していてもほとんど会話もなく、
サチにはタカシが何を考えているのかもわからないようでした。


タカシの父親は生活能力のないダメ男(栗原類!)で、
子どもができてしまったために結婚し、
サチは自分の夢を捨てなければならなかった
・・・と言う彼女の悔いが、息子に対する愛情をゆがめてしまっていたようなのです。

そんな息子の突然の死に、サチは思考停止してしまったように見えます。
悲しみを悲しめない・・・。
息子を愛していなかったことの罪悪感なのか。
そんな自分への嫌悪感なのか。
どう受け止めてよいのかわからない。
だからこそ、彼女は息子の死を受け入れることができず、
いつまでも引きずっていたのかもしれません。

そんな彼女が、本当に息子の死を受け入れ、悲しみを表出させるまでの物語。

村上春樹ワールドを楽しみました。

ハナレイ・ベイ [DVD]
吉田羊,佐野玲於
バップ

<WOWOW視聴にて>

「ハナレイ・ベイ」

2018年/日本/97分

監督・脚本:松永大司

原作:村上春樹

出演:吉田羊、佐野玲於、村上虹郎、佐藤魁、栗原類

 

喪失感度★★★★☆

満足度★★★★☆



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