映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

野火

2016年06月29日 | 映画(な行)
何と戦っていたのだろう



* * * * * * * * * *

第二次世界大戦末期、フィリピン戦線におけるレイテ島。
物語はいきなりジャングルの中で、物資が極端に不足し、
疲弊した軍隊の様子が描き出されます。
結核を患った田村一等兵(塚本晋也)は、使いものにならないということで
部隊を追放され、野戦病院に送られます。
しかし、食料不足として入院を拒絶されるのですが、
部隊に戻っても受け入れられません。
カメラは、空腹と孤独を抱えジャングルをさまよい歩く田村の姿を追います。
暑さと空腹でふらふらのところへ不意に敵軍の銃弾を浴びたりもします。
やはりここは戦場なのです。
道端に転がる友軍の死体。
すでに見慣れてしまって、感情も麻痺しています。
ついに田村も行き倒れかと思われた時に、顔見知りの兵が現れ、
「猿の肉だ」と言って、食べるようにと差し出すのですが・・・。



人の極限状態を描いているわけです。
すべてが狂気のようでもある。
でもこのような中で、正気でいられる方がおかしいという気もします。
実際にこのような体験をし、生き延びた人は、
無事家族のもとに戻っても決してその体験を語ることはないだろうと思います。
だからPSTDを抱えてしまう。
今でこそ「PTSD」という言葉とその症状は市民権を得ていますが、
敗戦直後の日本で、そのような言葉はなく、
生還してなお、苦しみを抱えた人が大勢いたのだろうなあ・・・。



重いです。
大変重要なメッセージなのですが、やはり重い。
そして残酷。
まあ誰にでもおススメはできません。
が、こういう作品は特に若い方に、一度は見て欲しいですね・・・。
二度までは見なくてもいい・・・。



田村を演じる役者さんに見覚えがないと思ったら、
なんと本作の監督ご本人だったんですね。
そもそも皆顔がドロドロに汚れていて、誰が誰やら、判別がつきにくいですが、
声でやっとわかったのが、リリー・フランキーさんでした。

野火 [DVD]
塚本晋也,リリー・フランキー,中村達也,森優作
松竹


「野火」
2014年/日本/87分
監督・脚本:塚本晋也
原作:大岡昇平
出演:塚本晋也、リリー・フランキー、中村達也、森優作
極限状態度★★★★☆
満足度★★★☆☆


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