映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

天使の分け前

2013年05月11日 | 映画(た行)
彼らが得た「分け前」とは



            * * * * * * * * *

ケン・ローチ監督といえば・・・、
過酷な環境の中を生きる人間ドラマ、
ずっしりと重いものが多いのですが、今作は少し印象が異なります。



スコットランド、グラスゴーに住む青年ロビーは、
これまで喧嘩の絶えないやさぐれた人生。
しかし、恋人レオニーに子供ができたため、
なんとか人生を立て直したいと思っています。
でも、まともな職には付けず、
思いとは裏腹にまたトラブルを繰り返してしまう。
彼は服役の代わりの社会奉仕活動を義務付けられているのですが、
その指導者であるハリーにスコッチウイスキーの奥深さを学びます。
そしてウイスキーのテイスティングの才能を開花させるのです。
そんなある時、一樽100万ポンド(約1億4000万円!!)以上という
ウイスキーのオークションがあると聞き・・・。
社会奉仕活動仲間と、ある行動に出るのですが・・・。



「天使の分け前」というのは
樽に収められたウイスキーは年に2%ほど蒸発してしまうのだそうで、
その分のことを「天使の分け前」というのだそうです。
なんておしゃれな、ネーミング。
本作主人公ロビーも、気に入ったみたいです。



全体的には、ユーモアを交えた軽いタッチの仕上がりとなっています。
ラスト付近の悲劇的な「事故」のシーンでは、
場内の皆さん、「キャー」とか「うわあ」とか、悲鳴が上がりました。
つい、見入っていましたねえ・・・。
彼らのキルト姿がまた、なんともいえません。
立派に民族衣装ですが、でもやっぱりユーモラス。
キルトの正式な着用の仕方は、下には何も付けないのだと聞いたことがありますので、
キルトをまくり上げるシーン、
あそこは想像すると、恐ろしいくらいです。



この、ポンコツ仲間とちょっとした犯罪という部分、
なんだか伊坂幸太郎氏のストーリーを連想してしまいました。
犯罪といえば犯罪ですが、
誰も損をしたと思わないところもいいじゃないですか。
これぞまさしく、「天使の分け前」というわけです。


それにしても、ウイスキーを飲んでみたくなります。
それもちょっぴりいいものを・・・。
ウイスキー、ワイン、もちろん日本酒にしても、
奥深いものですね。
でもその深淵、最高級というものには
一生手が届きそうにないのもちょっぴり悔しいですけれど。

「天使の分け前」
2012年/イギリス・フランス・ベルギー・イタリア
監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラバーティ
出演:ポール・ブラニガン、ジョン・ヘンショウ、ゲイリー・メイトランド、ウィリアム・ルアン、ジャスミン・リギンズ

文化度★★★★☆
軽妙さ★★★★☆
満足度★★★★☆

「落花は枝に還らずとも 会津藩士・秋月悌次郎(上・下)」中村彰彦 

2013年05月09日 | 本(その他)
幕末~明治を生き抜く、会津藩士

落花は枝に還らずとも〈上〉―会津藩士・秋月悌次郎 (中公文庫)
中村 彰彦
中央公論新社


落花は枝に還らずとも〈下〉―会津藩士・秋月悌次郎 (中公文庫)
中村 彰彦
中央公論新社


            * * * * * * * * *

幕末の会津藩に、「日本一の学生」と呼ばれたサムライがいた。
公用方として京で活躍する秋月悌次郎は、
薩摩と結び長州排除に成功するも、直後、謎の左遷に遭う…。
激動の時代を誠実に生きた文官を描く歴史長篇。
新田次郎文学賞受賞作

            * * * * * * * * *


突然に、私としては珍しい本を読みました。
時代小説ではなく、幕末の実在する人物を描いた作品。
会津藩といえば・・・、そう、今やっているNHK大河ドラマ「八重の桜」。
これを見ていた先日、会津藩の秋月という人が
蝦夷地の斜里代官に任官されたというところで、思わず絶句してしまったのです。
斜里といえば、北海道知床の町。
(知床半島の付け根のあたりです。)
札幌の私からしてもとんでもない地の果てと思えるのですが、
当時の会津からするとどうなのか。
そもそも当時そんなところに町があったのか?
・・・などと、今の現地の方に怒られそうな思いまで湧いてしまい、
非常に興味を惹かれました。
そこで調べてみると、へええ・・、ちゃんとこんなふうに本まで出ている。
そこですぐにKindleにて、購入。
実は、それよりまず山本覚馬でしょ!!と、
西島ファンなら思うわけですが、
同時に「山本覚馬」ももちろん購入。
そちらは後のお楽しみです。


秋月悌次郎は会津藩のお侍ですが、
武官ではなく文官ですね。
京都守護職についた松平容保(かたもり)とともに、京都へやってきて大変な苦労をする・・・。
いえ、この方の場合、苦労をするのはその後、ということになります。
山本覚馬もそうですが、昌平坂学問所で学び、
様々な藩の人と語らい、教えを受け、海外の知識もある。
けれど会津の超保守的な藩士たちにはそれが鼻につくというか、
煙たいところがあったようなのです。
で、何がなんだかよくわからないけれども、突然斜里に飛ばされた・・・。


どうやって斜里に行くのかと思ったら、船でした。
なるほど・・・。
新潟から日本海を北上し江差まで。
そこからまた船で函館へ行き、更に乗り換えていよいよ斜里まで。
この時は奥様も同伴で、ついて来た奥様も偉いなあ・・・。
斜里は漁業の町。
その地の管理を会津藩にまかされていたということなのです。
当時頻繁に出没したロシア船の見張りの意味もあったようです。


さすがの秋月氏も、冬の斜里で、
こんなところに流されてしまったという寂寥感に
打ちひしがれそうになったという描写があります。
しかし彼は厳寒の空に満天の星を見る。

「わけても北斗七星は冴えわたった北の空に力強く輝き、
物言わぬままなにかを語りかけてくるかに見える。
(京から六百里の参加を隔ててまた仰ぐ七曜星がなおも光を注いでくれるのであれば、
この秋月悌次郎もどこまでも定次郎らしく歩んでいかねばならぬ)・・・」


そう考えて、力を漲らせたというシーンが実に印象的でした。
蝦夷地らしく熊と遭遇するシーンもあります。
そして結局斜里にいたのは1年4ヶ月。
また、突然に京へ呼び戻されることに。
せっかく一度引っ込んだはずの長州藩が、
秋月氏がいないうちにまた力をつけ始め、
お偉方が慌て始めたというのがよくわかります。
全く宮仕えは辛いのです。
しかしこの時、季節は冬。
12月ということで、まだ流氷はきていなかったでしょうが、
海は荒れて危険なため船は出ない。
この時ばかりはやむなく陸路で釧路へ、
そして様似まで行って、そこから船。
雪と氷に覆われた山道を命がけで歩くことに・・・。


実のところ、この本は語り口も固く、やや難しく感じられたのですが、
この斜里のくだりで俄然面白みを感じ始めました。
京都での様々な思想的やり取りは実生活からは遠く感じられますが、
この場面は妙にリアルに身近に感じてしまいます。


会津藩はその後京を追われ、地元会津での戊辰戦争に突入。
鶴が城に立てこもり、絶体絶命となりますが、
降伏のための道のりをつけたのが、この秋月氏。
それにしても会津藩のなんとも理不尽な命運・・・。
いまさらですが同情を禁じえません。
八重の桜を見ていてもそうですが、明治維新の英雄とうたわれる
薩摩や長州藩が非常に胡散臭く思えてしまいます。
歴史というのは、色々な面があるんですね。


秋月氏は明治維新後、生涯を青少年の教育のために捧げました。
なんと、熊本の第五高等学校(今の熊本大学)で、
ラフカーディオ・ハーンと教職を共にした時期があったといいます。

個人を軸に歴史を考えるのもなかなか面白い。
すばらしい一冊でした。


「落花は枝に還らずとも会津藩士・秋月悌次郎(上・下)」中村彰彦 中公文庫
満足度★★★★☆

今作中、山本覚馬の名前は幾度か出てきますが、
直接会話するシーンはありません。
しかし、会津藩が京を追われて出るときに、
「山本覚馬は失明のため京へ残った」という一文が。
非常に気になるところです。
次の本に行きます!

ドリームハウス

2013年05月08日 | 映画(た行)
“幸せの家”の正体



            * * * * * * * * *

ウィル(ダニエル・クレイグ)は、家族との時間を大切にするため
仕事をやめ、郊外の家に越して来ました。
こじんまりとした家。
美しい妻と二人の娘。
これ以上の幸せはない。
これぞドリームハウス・・・。

幸せを噛み締めるウィルでしたが・・・。
しかし、その家は、過去に家族3人が惨殺されるという
忌まわしい事件のあった家だったのです。
家の周囲に忍び寄る不気味な影。
犯人とされる父親は精神病院を出ているという。
果たして、狂った父親がまたこの家の家族を狙っているのだろうか・・・。



じわじわと怖くなっていきながら、驚きの真相が待っているという、
なかなかすぐれもののサイコスリラーです。
私なら、そんな曰くがあると知れた家には、
いっときも長く居たくないと思うのですが、
彼らには彼らの事情がある・・・ということか。



温かな明かりの灯る家が、実は・・・。
“浅茅が宿”にも似ていますが、
ストーリーはそれよりも複雑ですね。
冒頭、会社の皆に惜しまれながら退職していくウィルの姿が、
後でまた、重要な意味を帯びてきますので、お見逃しなく。
ウィルのフル・ネームがウィル・エイテンテンと、
随分奇妙に感じられるのですが、
このことにもちゃんと意味があるのです。
隣人の怪しげな視線にもまた・・・。



ダニエル・クレイグの長髪(長髪というほどではないのですが・・・)には、
最後まで違和感を持ってしまいましたが、
007のイメージを払拭するためにも、ここはしょうがないでしょうか。
本作での共演がきっかけで、ダニエル・クレイグとレイチェル・ワイズが結婚したとのこと。



ドリームハウス [DVD]
ダニエル・クレイグ,ナオミ・ワッツ,レイチェル・ワイズ,マートン・ソーカス,イライアス・コティーズ
Happinet(SB)(D)


ドリームハウス [Blu-ray]
ダニエル・クレイグ,ナオミ・ワッツ,レイチェル・ワイズ,マートン・ソーカス,イライアス・コティーズ
Happinet(SB)(D)


「ドリームハウス」
2011年/アメリカ/92分
監督:ジム・シェリダン
出演:ダニエル・クレイグ、ナオミ・ワッツ、レイチェル・ワイズ、マートン・ソーカス

家族愛度★★★★☆
衝撃度★★★★★
満足度★★★★☆

ラストスタンド

2013年05月07日 | 映画(ら行)
帰ってきたシュワルツェネッガー!!



            * * * * * * * * *


カリフォルニア州知事を務め上げたアーノルド・シュワルツェネッガーが、
またスクリーンに帰って来ました!!
実のところ、今更またシュワちゃんでもないでしょう・・・と、
見るつもりはなかったのですが、
知人の映画好きの方が「意外と良かった」とおっしゃるので、
みてみる気になりました。



レイ・オーウェンズ(アーノルド・シュワルツェネッガー)は、
元ロサンゼルス市警の敏腕刑事でしたが、
今はメキシコ国境に近い田舎町の保安官を務めています。
ところが、こののどかで平和な街に、
逃走した凶悪犯が向いつつあるいるという。
彼、コルテス(エドゥアルド・ノリエガ)は、メキシコの麻薬王で、
ほとんど私設軍隊ともいえる装備やチームを持っているのです。
この度も護送車を強力磁石で釣り上げて
コルテスを脱走させるという大掛かりなもの。
コルテスはFBI女子職員を人質に取り、スーパーカーで国境までひた走ります。



警察もFBIも間に合わない。
オーウェンズは戦闘経験などない副保安官や街の仲間、銃器オタクらとともに、
コルテスと彼の一味を迎え撃つことに・・・。



韓国のキム・ジウン監督の、ハリウッド進出初作品。
最高時速400キロで疾走するスーパーカー、
これでもかとばかり飛び交う銃弾、
迫力いっぱいでした。
でもそれ以上にいいのは、
やはり65歳というこの年齢のシュワルツェネッガーの魅力をひきだしているところ。
さすがにもうアクションにキレはありません。
でも、ここまで重ねた経験の重みとゆとりが感じられ、
実に安心できてしまう。
素人軍団をまとめるリーダーシップと行動力、勇気。
そして私は、その表情の中に、クリント・イーストウッドばりのタフな渋みを見ました。
うーん、こういうカムバックなら大歓迎。



俳優陣の布陣がまたいいのですよね。
頑張ってはいるんだけど役に立たないFBIの司令担当にフォレスト・ウィテカー。
麻薬王コルテスのエドゥアルド・ノリエガは、密かにかっこいいし、
身を持ち崩した元ヒーロー、ロドリゴ・サントロもいいなあ。
副保安官のフィギーは、そうそう、先日見た「センター・オブ・ジ・アース2」に出てきた
太っちょのオジサン、ルイス・ガスマン。
ちょっととぼけてコミカルな部分、スピード感あふれるシーン、
そして最後はやはり銃も捨てて肉体対肉体のぶつかり合い。
こういうバランスが凄く良かったと思います。
麻薬王一人のために、犠牲者多すぎ・・・
そういうまあ、ハリウッド的荒っぽさはお定まりのこととして目をつぶるとして、
スカッと楽しめる一作ではありました。

「ラストスタンド」
2013年/アメリカ/107分
監督:キム・ジウン
出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、フォレスト・ウィテカー、ジョニー・ノックスビル、ロドリゴ・サントロ、ジェイミー・アレクサンダー、エドゥアルド・ノリエガ、ルイス・ガスマン

スピード感★★★★★
チームワーク★★★★☆
満足度★★★★☆


「伏 鉄砲娘の捕物帳」

2013年05月05日 | 映画(は行)
アニメ化の必要なかった・・・



            * * * * * * * * *

先に原作を非常に楽しく読みました。
なのでアニメも公開時に見たかったのですが、
タイミングが合わず見逃していたのです。
それでこのたびようやく見ることができたのですが・・・。



ストーリーはこちらを御覧ください。
   →「伏 贋作・里見八犬伝」桜庭一樹
ただしアニメはかなり端折ってあります。



江戸が舞台とはいえ、今作は仮想江戸空間というふうで
相当のデフォルメがあります。
主だった登場人物たちの服装も時代考証無視で、かなり自由。
(他の人達は普通なのにね・・・)
その辺りはまあ、自由でいいんじゃないでしょうかと思えるのですが、
いかんせん、肝心のヒトイヌ、「伏」の信乃に魅力がない。
この着物の着流しというのはどうなんでしょうねえ・・・。
私的には全くいただけない。
イナセなら足をのぞかせちゃいかんし、
浜路であれだけ遊んでいるなら、
もっと面白みがあってもよさそうな・・・。
パンク風とかね。
犬夜叉風ももちろんOKだけど、
それではパクリになってしまいますしね・・・。

冥土はここでは女の子なんですが、原作ではさえない男性です。
そして彼が書く「贋作八犬伝」のストーリーが
不思議で不条理で悲しくて、無茶苦茶ステキなのですが、
ここではほとんどすっぽり割愛されています。
そんなこんなで、原作の面白みは影を潜め、
アニメとしてもさして魅力のあるものにはなっていなかったように思います。



みなさま、アニメを見るくらいなら是非原作のほうをお読みください!!

伏 鉄砲娘の捕物帳 DVD通常版
寿美菜子,宮野真守,宮本佳那子,小西克幸,坂本真綾
角川書店


「伏 鉄砲娘の捕物帳」
2012年/日本/110分
監督:宮地昌幸
原作:桜庭一樹
出演(声):寿美菜子、宮野真守、宮本佳那子、小西克幸

時代考証自由度★★★★★
満足度★★☆☆☆


「ひきだしにテラリウム」九井諒子

2013年05月04日 | コミックス
それぞれのワールドを旅するスリルと醍醐味

ひきだしにテラリウム
九井諒子
イースト・プレス


            * * * * * * * * *

奇想天外ショートショートコミック33篇。
この表紙イラストにひかれて手にとって見ました。

SFか?
メルヘンか?

まあ、そんなことはどうでもいいのです。
絵柄も自由、発想も自由。
著者の巧みな想像の世界に、一瞬で旅して帰ってくるこのスリルと醍醐味。
星新一氏のショートショートもいいのですが、
このコミックの世界では絵がすでにモノをいいます。
絵が邪魔して返って想像の余地がなくなるのでは? 
そんなことはありません。
彼女の創り上げたそれぞれのワールドが
より鮮明に浮かび上がって余韻をもたせます。
ショートショートに込められた世界観がタダモノではありません。


「龍の逆鱗」
ある村で一年に一度だけ龍を捉えて食べる習慣があるという。
捉えられた龍はまだ生きていて、
眼光鋭く睨みつけ、フーッ、フーッという息遣いが生々しい。
村人は日常茶飯事のごとく手早く龍をさばいて身を刺身にして差し出す。
うまいっ!!思わず夢中で頬張るが・・・。


「ユイカ!ユイユイカ!」
ある小国に、時折飛来するイエーカーという魔物。
この魔物には攻撃性が弱くそれ自体に害はないが
ごくまれに別の魔物がへばりつき、一国を滅ぼすほどの害をなすという。
従って、兵士は全力を上げイエーカーの到来を攻撃するが・・・。


「すごいお金持ち」
山のような豪邸に一人で住んでいて、
数千人の召使がいて、
玄関から部屋まではバスで行き、
毎朝採寸してその日着る服をつくる。
服が出来上がるまで裸のまま電車でお風呂に行く。
・・・こんな生活が果たして幸福?


「神のみぞ知る」
昔、ある小さな村で謎の奇病が流行。
都の陰陽師が言うには、
村の社に住みついている獣の姿をした神を
水の中に沈めて首に熊手を突き立てろ、と。
村人はたたりを恐れるが、他に手立てはなく、
この巨大な猫の姿をした神を川に沈めようとするが・・・。


どれも傑作なオチで、楽しいですよ~。
と言ったところで、
再び表紙イラストに戻ってみれば、
なるほど、このショートショートに登場する人物たちがひしめいていて・・・。
私、こういうごちゃごちゃした絵が大好きです! 
ストーリーの様々なシーンが思い出されるこのイラストは、
「ウォーリーを探せ」より面白い。
巨大な猫が昼寝して、
軍隊がいて、
オーケストラがいて、
バスを待ってるすごいお金持ちもいるし、
カニを剥く人、
こたつでみかんをむく人、
授業を受ける人・・・
おまけによく見たらこの絵はループになっていて、無限だ~。

いや、ほんと、面白い!!

「ひきだしにテラリウム」九井諒子
満足度★★★★★

キタキツネ

2013年05月04日 | インターバル
寒~いゴールデンウィークですが・・・



            * * * * * * * * *

札幌は例年にない大雪の冬の後、
薄ら寒い日々が続き、このゴールデンウィークにいたっても
温かな日差しが見られません。

先々週訪れてみた、このご近所の山間の公園は
まだ道が雪に覆われていて歩くのは断念しましたが、
本日は一応雪も消えていました。



例年ならもう桜の時期ですが、
まだつぼみも硬いまま・・・。



でも、ミズバショウはしっかり咲いていました。
こんな寒い日々でも
ちゃんとやっぱり春なんだなあ・・・と
感傷に浸ります(^_^;)



そしてなんと、珍しくキツネに遭遇!!
あちらも、じっとこちらの様子を伺っています。
しばらくストーカーになって写真を撮らせてもらいましたが、
やっぱりじっとしていてくれないので
なかなか難しい・・・。
我が家にいた愛犬なら
「マテ」といえば少しはじっとしていたのだけれど・・・。
いや、言ってみればよかったかな?

 





もうよし、と思ってミズバショウのスポットに移動しましたが
彼(?)が興味津々でついて来ました。
今度はこちらがストーカーされました。
ここのところ雨続きでドロンコなのは仕方ない・・・。
つい何か食べ物をあげたくなってしまうけれど
それはタブーですね。
(そもそもこの時は何も持っていなかった・・・)
この後、うまく何か朝食にありついたことを願っております。



カルテット! 人生のオペラハウス

2013年05月03日 | 映画(か行)
音楽の原点に帰り、そして自分自身に帰る



            * * * * * * * * *

ダスティン・ホフマン初監督による映画作品。
引退した音楽家たちが暮らす「ビーチャム・ハウス」。
最近資金繰りが苦しく、
今度のコンサートが成功しなければハウスの存続があやしいという状況に追い込まれています。
そこに、かつてのスター、ジーン(マギー・スミス)が新たに入居してきます。
ところが、そこの住人レジー(トム・コートネイ)は、浮かない顔。
というのも、ジーンはかつてレジーの妻だった。
二人は結婚してまもなく破局。
カルテットを組んだ仲間でもありながら、
未だに顔も見たくないほど嫌っている(?)らしいのです・・・。
でも、次のコンサートの成功のために、
是非ジーンも加わってもらい伝説のカルテットを復活する必要が・・・。



ジーンは実力はNO.1ながら、かなり野心丸出しで自己中。
周りの人を傷つけることも多かったようなのです。
そんな彼女と組むのはゴメンだとレジーは思うのですが、
それ以上に、ジーン自身がイエスと言いません。
彼女は、老いて最高の状態で歌うことができないことを自覚しています。
そしてそのまま歌を続けることを自分で許せない。
だから、彼女はきっぱりと歌うことをやめていたのです。
彼女は歌うことを自分の楽しみと感じてはいなかったのでしょう。
確かに、プロというのはそういうものかもしれません。
それでお金を稼ぐ以上、
一定のレベルを保つことが義務であり、時には苦しみでもある。


けれども、私はこのハウスに暮らす人々の、
生活とともにある音楽の数々のシーンがとても素敵に感じられました。
プロではなく、自分のために、自然発生的に生まれる音楽の楽しみ。
今作は、ジーンが音楽の楽しさという原点に還っていく物語なのだと思います。
そして、自分の本当の心を取り戻していく物語。



このハウスは老人ばかりが寄り集まっているわけではありません。
時には学生たちが音楽の講義を受けに来たり、
子どもたちがピアノを習いに来たり。
こうした年齢を超えたふれあいがあるのもいいし、
いつもそこここで歌ったり、アンサンブルを楽しんだり、
時にはダンスをしたり・・・
こんな環境、ステキだなあと憧れてしまいました。
私自身は、音楽は何もできないので、
何かの職員として紛れ込みたいと思ったりして・・・。


出演しているハウスの住人たちは、実際の著名な音楽家。
エンドロールでは、彼らの若いころの写真とともに、人物紹介がなされています。
どれもとびきり若々しく魅力的。
どんなにみずみずしく素敵な人も、
やがては年老いて動作も鈍くなり、しわに覆われて行く。
あたりまえのことなのですが、
それを受け入れられるのは、ほんとうに自分が年老いたときなのだなあ・・・と、この頃感じます。
若い人は自分がシワだらけの年寄りになるなんてこと、想像もしないものです・・・。
けれど、年老いていくと、体が不自由になる代わりに、
なんだか気持ちが自由になっていく気がするんですよね。
最高のレベルでなくてもいい。
自分と周りの人がほんのひと時でも楽しめればそれでいい。
自分が「何者か」になどならなくてもいい。
そういうありのままの充足を感じられるようになるのかも。
・・・というか、そうなりたいものだと思います。



「カルテット! 人生のオペラハウス」
2012年/イギリス/98分
監督:ダスティン・ホフマン
出演:マギー・スミス、トム・コートネイ、ビリー・コノリー、ポーリーン・コリンズ、マイケル・ガンボン
音楽の楽しさ★★★★★
老いを考える★★★★☆
満足度★★★★☆


Dolls(ドールズ)

2013年05月01日 | 西島秀俊
破滅への道行だけれど



            * * * * * * * * *


さて、いよいよ北野武監督作品。
何がいよいよなんだか・・・。
いやあ、芸術的作品って触れ込みで、ちょっと緊張する~。
えーと、冒頭まず登場するのが人形浄瑠璃だね。
そう。そもそも、そっちの知識がまるでないのでよくわからないんだけど、
ものの解説によれば、近松門左衛門作「冥途の飛脚」の一シーンとのこと。
つまりは愛のために破滅する男女の物語だね。
のっぴきならない事情で、窮地にたった二人、というのはよくわかったよ。
だけどその終わりの所で、なんだか二人は希望を見出して顔を明るくしているようにみえた。
もちろん人形だから表情は変わっていないんだけどね。
どうしてだろう・・・と謎を残したまま、本編のストーリーが始まります。


西島秀俊さん演じる男は、恋人を捨てて、社長令嬢と婚約。
その結婚式の日のこと。
元恋人(菅野美穂)が自殺を図り、命は取り留めたけれど気が触れてしまった、
と友人に聞き、式場を抜けだして、彼女のもとに行きます。
その時点でもう会社へ戻る道は絶たれてしまったと同じなんだね・・・。
そこまで考えたのかどうか。
彼は、表情を亡くし虚ろな目をした彼女に同調し、二人で当てもなくさまよい歩くことになる。
赤い糸ならぬ、太く編みこんであるロープで結び付けられた二人。
桜の並木道。
夏の海辺。
紅葉の道。
そして雪の山道・・・。
美しく四季に彩られた背景をただひたすら歩み続ける男女。
ストーリーは、なおも2組の男女の愛を描いていくね。
何十年も一人の男を待ち続けた女。
相手のことを思いやるが故に、自ら失明する男。



これらは、愛と言うよりも妄執。
恋=狂気と言っているようだね。
はたから見たらほとんど喜劇とさえ思える・・・。
そういえば、男女の情愛を描いているというのに、どこにも濡れ場が出てこないよね。
ひたすら情念の世界なんだ。
二人を結びつけるロープは互いに絡みつき逃れられず、
ついには命取りとなっていく・・・ということか。
そこで、冒頭の人形の表情に戻るわけです。
ああ・・・、結局二人の愛を昇華させるための解答は「死」ということなのか。
世間のしがらみから離れ、つらいこの道行から開放される方法が、それ、ということなんだね。
監督はそのことを是としているわけではないと思う。
あくまでも冷静に見つめている気がする。
日本的な男女の情念の世界を、巧みに描ききったとはいえるだろうね。
うん、それにしても、表情が変わらないはずの人形に、表情をもたせる技術というのがさ、
やっぱりすごいと思った。
文楽、おそるべし。
西島さんはどうでした?
愛の巡礼者としては、なかなか良いのではないでしょうか。
感情を押し殺して、ひたすら無表情と沈黙のまま・・・って、
こういう役が多いのは、今作のイメージだったんでしょうかね。
うん、でも長髪はあんまりいただけないかも。
そうだよ~。
一番似合うのはお侍の髷さ!
はは・・・。

「Dolls(ドールズ)」
2002年/日本/113分
監督:脚本:北野武
出演:菅野美穂、西島秀俊、三橋達也、松原智恵子、深田恭子

日本的美意識度★★★★★
西島秀俊の魅力度★★★☆☆
満足度★★★☆☆