映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

奇蹟 ミラクル

2022年01月13日 | 映画(か行)

奇蹟を呼ぶバラの花

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たまには、あっけらかんと楽しめるジャッキー・チェンもいいですよね。
本作は、ジャッキー作品の中でもストーリー性が高いと言われています。

 

舞台は1930年代の香港。
一旗揚げようと香港にやって来たコウ(ジャッキー・チェン)ですが、
たちまちのうちに全財産をだまし取られてしまいます。
そんな時、バラの花を売る貧しいおばさんが「幸運を呼ぶ花だよ」という一輪のバラを、
なけなしのお金で買ったことから、彼の人生は一変します。

黒社会のボス・パクを助けたことから、
その跡継ぎとして次のボスの座につくことになってしまうのです。
敵対する組織との抗争に巻き込まれることにもなるけれど、
ナイトクラブを開いたことから、資金繰りもうまく回り出し、
コウはまずまずの成功を収めていきます。

あるときコウは、世話になった花売りのおばさんが困っていることを知り、
彼女の願いを叶えようとしますが・・・。
実は、このミッションは黒社会の敵対関係よりもさらにやっかいなのでした。

 

花売りのおばさんの願いを叶えたとしても自分には何の得もない。
けれど人情に厚いコウは、何とかしようと一生懸命。
ヤクザ同士のいざこざに加えてここの部分のストーリーがなんとも胸を打つといいますか、
最後のハッピーエンドシーンでは泣きそうになりましたもん。
この作品で泣けるとは思っていませんでしたが。

CGもスタントマンもなしのアクションシーン。
これもいつものことではありますが、
その組み立て方がユニークで、面白く、そしてキレがある。
マトリックスのアクションシーンは結構すぐに飽きるけれど、
こちらは飽きませんねえ・・・。
ジャッキー・チェン、さすがです。

 

<WOWOW視聴にて>

「奇蹟 ミラクル」

1989年/香港/118分

監督・脚本:ジャッキー・チェン

出演:ジャッキー・チェン、アニタ・ムイ、ブア・アーレイ、グロリア・イップ、クェイ・アルイ

ドラマ性★★★★☆

アクション度★★★★☆

満足度★★★★☆


99.9 刑事専門弁護士 THE MOVIE

2022年01月11日 | 映画(か行)

天下一刑事弁護士

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おなじみのテレビドラマシリーズの映画化。
本作に先駆けて、テレビドラマのスペシャル版が放映されまして、
その中ですでに、本作で登場する人物たちの人となりが紹介されています。

人気のテレビドラマの映画化は、当然それなりの興行成績が見込まれるわけで、
ちょっとズルい感じがしてしまうのですが、
それにしてもこういう連携の仕方は、うまいとしか言いようがありません。

法律事務所の新人、河野穂乃果
(深山に心酔していて、やたら張り切っていてうるさくて、ちょっとウザい)。

深山たちと敵対関係となる南雲弁護士
(一見人が良さそうだけれど、実は闇?)

というような人となりが、すでに私たちの中に入っていて、
その説明なしで本題に入ることが出来るのはナイスです。

 

さて本作。

常に事実を追求し、99.9%逆転不可能と言われる刑事裁判で、
最後の0.1%まで諦めず、真実を追究し、無実を勝ち取るという、
型破りな弁護士・深山大翔(松本潤)が主人公。

この度は、15年前に起きた天華村毒物ワイン事件の再調査をするというストーリー。
実は、この事件の犯人とされる男はすでに死刑判決を受けて、
刑も執行済みなのです。

その時の弁護士が南雲(西島秀俊)。
結局彼は男の有罪を覆すことができなかったわけです。
そして、南雲は男のまだ幼い娘・エリを引き取り、自分の娘として育てました。
エリ(蒔田彩珠)には本当の父親が殺人犯として死刑になったことは言っていません。
ところがピアノコンクールで入賞したエリに対して、
心ないマスコミがスクープとしてそのことをバラしてしまった。

かねてからエリのことを気にかけていた佐田(香川照之)は、
この際エリの父親の無実を証明しよう!!と言いだして、
事務所こぞって調査に取り組むことになります。

天華村に出向き、村人の協力を得て当日の出来事を再現していきますが・・・。

調書や人々の証言だけでなく、現場に赴き、できるだけ出来事を正確に再現しようとする、
これぞ、深山の真骨頂。

しかし最後の最後にたどり着いた真実は、切ないものではありました・・・。
手放しでは喜べない真相、こういうオチも悪くありません。

それにしても、個性が強烈な人々に囲まれて、西島秀俊さんは応戦一方。
そういえば、「真犯人フラグ」のテレビドラマもそういう感じですね。
どうもご苦労様でした!!

あちらこちらに笑える小ネタ満載ですが、「天華一葡萄会」に私はハマりました。

<シネマフロンティアにて>

「99.9 刑事専門弁護士 THE MOVIE」

2021年/日本/119分

監督:木村ひさし

脚本:三浦駿斗

出演:松本潤、香川照之、杉咲花、片桐仁、マギー、西島秀俊、蒔田彩珠

 

コミカル度★★★★☆

西島秀俊の魅力度★★★★☆

満足度★★★★★

 


「平場の月」朝倉かすみ

2022年01月10日 | 本(その他)

「太い」彼女の生き方

 

 

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須藤が死んだと聞かされたのは、小学校中学校と同窓の安西からだ。
須藤と同じパート先だったウミちゃんから聞いたのだという。
青砥は離婚して戻った地元で、再会したときのことを思い出す。
検査で行った病院の売店に彼女はいた。
中学時代、「太い」感じのする女子だった。
五十年生き、二人は再会し、これからの人生にお互いが存在することを感じていた。

第32回山本周五郎賞受賞の大人のリアルな恋愛小説!

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まさに、大人のリアルな恋愛小説という触れ込みにふさわしい物語です。

青砥と須藤は中学の同級生。
その時青砥は須藤を「太い」と感じていました。
決して太っているということではなく、スリムな体型。
でも、まだ中学生というのに「自分」を見極めて、
自立している、何か覚悟が決まっているというような雰囲気。
でもその時に好きだと告白した青砥は、あっさり振られたのでした・・・。

そんな二人が50歳になって再会します。
双方バツイチ。
どちらももう恋愛なんて・・・という思いもあって、
時々会って、飲んだり食べたりしながら他愛のない話をするようになります。

そのままで十分という思いが双方にはあったのですが、
関係が変わってきたのは、須藤の病が発覚してから。
これが直腸がんで、ストーマすなわち人工肛門を装着するという、
大変な出来事がかなりリアルに語られます。
妹の他には頼る者もなく、経済的にも厳しい須藤に、
青砥はしっかりと寄り添い、ついにはプロポーズをするのですが・・・。

 

その先の須藤の行動と運命には、心が揺り動かされます。
まさに「太い」。
凜として強い・・・。

でも、本当はもっと弱くても良かったのでは、と思ってしまったりもします。
強烈な印象を残す、まさに大人の恋愛です。

 

「平場の月」朝倉かすみ 光文社文庫

満足度★★★★★

 


アオラレ

2022年01月09日 | 映画(あ行)

落ち着いて、マナーを守って・・・

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題名の通り、あおり運転をされる受難の物語・・・ですが、それだけではありません。
まず本作での一番の驚きは、あの名優、ラッセル・クロウが
とんでもなく凶暴でクレイジーなサイコ野郎を演じるというところ・・・。
これは恐いですよ・・・。

寝坊して慌てて息子を学校へ送り、そのまま職場へ向かおうとしている
美容師・レイチェル(カレン・ピストリアス)。
道路渋滞で焦りまくっています。
あるところで、信号待ちで止まるのですが、信号が青になっても
前の車は一向に発進しようとしません。
クラクションを派手に鳴らしても動かないので、
レイチェルは無理矢理追い越して進みます。
すると、その車が追いかけてきて、運転する男(ラッセル・クロウ)が言う。
「運転マナーがなっていない」と。

苛立っていて謝る気持ちもないレイチェルは、
いやがらせにあおり運転をするその車を振り切って、息子を無事学校に送り届けます。
そしてその後、ガソリンスタンドに寄って買い物をしていると、
さっきの男につけられていることに気がつきます。

レイチェルに手助けしようと、男に忠告をしようとした人はあっけなく男の車に跳ね飛ばされ、
いよいよ男とレイチェルの攻防戦が始まるのです・・・。

この男、クレイジーなくせに意外と頭が良いのが、なお恐いところ。
レイチェルが買い物をしている間に、
彼女のスマホと自分のモノを入れ替えてしまうのです。
面倒だからとロックもしていなかったレイチェルのスマホで、
男は易々と彼女の家族や交友関係、息子の学校などを知ってしまう。
彼女のスマホを使って自分のケータイを持っているレイチェルに電話してくるというあたり、
なんともイヤラシイ残忍さが垣間見えます・・・。
そしてレイチェルを「後悔」させるために、
彼女本人ではなく家族や知り合いを殺そうとするのです。
事態はカーチェイスだけではなく、その外の世界にまで広がっていきます。
警察に通報しても警察の動きは後手後手。
結局この巨体の凶暴な男に、女子供で立ち向かわなければならない・・・。

しかしまあ、子供を護ろうとする母は強いものですけどね。

90分というやや短い尺の中、展開はスピーディで恐怖がぎゅっと凝縮されている。
昨今どこで人の恨みを買うか分からない。
まことに空恐ろしい物語。

<WOWOW視聴にて>

「アオラレ」

2020年/アメリカ/90分

監督:デリック・ボルテ

出演:ラッセル・クロウ、カレン・ピストリアス、ガブリエル・ベイトマン、ジミ・シンプソン

 

理不尽な殺戮度★★★★★

満足度★★★★☆

 


大統領のカメラマン

2022年01月08日 | 映画(た行)

感動も憎悪も、切り取り方次第

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レーガン大統領やオバマ大統領の専属カメラマンとして関わった写真家、
ピート・スーザの視点で、ホワイトハウスの裏側に迫るドキュメンタリー。

彼は、唯一無二の存在として重責を担う大統領を目の当たりにした生き証人でもあります。
大統領が政治上の重大な決断を下すときの苦悩ばかりでなく、
家族との和やかな場面もあり、
大統領の人間性をくっきりと浮かび上がらせる写真の数々が紹介されます。
映像ではなく、「写真」だからこそ、
より一層その「瞬間」を切り取っているように思います。

 

さて、ピート・スーザ氏はレーガン大統領の専属カメラマンも務めていたので、
その当時の写真もあるのですが、本作中ではわずか。
ほとんどがオバマ大統領の写真となっています。

というのも、ちょうどドナルド・トランプ氏の大統領再選をかけた選挙運動が始まった頃に、
ピート・スーザ氏のインスタグラムが始まったのです。
それは主に彼がホワイトハウス在職中に撮影した、オバマ元大統領の写真を紹介したもの。
そこに添えられたピートのコメントは、どれもトランプ氏に向けた皮肉たっぷり。
「オバマ大統領はこんなに良かった。それなのにトランプは・・・」
という感じです。

すなわち、このインスタグラムはピートの反トランプという政治的主張そのものなのでした。
本作はその主張に沿って作られているので、当然反トランプ作品ということになります。
だからまあ、盲目的にすべてを鵜呑みにするのは危険かも知れません。
そこの所はご用心を。
けど、私はピート氏の主張は好きですけどね。

写真はより決定的な瞬間を映し出しはするモノの、
切り取り方によっては、全く違う感情を呼び起こすこともある・・・、
そんなことも考えさせられるのでした。

 

<WOWOW視聴にて>

「大統領のカメラマン」

2020年/アメリカ/103分

監督:ドン・ポーター

出演:ピート・スーザ

 

写真の主張性★★★★☆

満足度★★★☆☆

 


羊とオオカミの恋と殺人

2022年01月07日 | 映画(は行)

ホラーラブコメ

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杉野遥亮さんが見たくて見た、ミーハー視聴です。
でもこれは、ちょっと一筋縄ではいかない、謎のホラーラブコメ(?)。

大学受験に失敗し、予備校もやめ、バイトにも行かず、
支払いが滞ったため電気も水道も止められた黒須(杉野遥亮)。
なんとかしようという意欲もなく、自殺を図るのですが、それも失敗。
そんな彼がふと、壁に空いた穴から隣家に住む色っぽい女子大生、宮市(福原遥)をのぞき見てしまいます。
いつしかその穴から彼女をのぞき見ることが生きがいとなってしまった黒須。
ところがある日、彼女が部屋で殺人を犯すのを見てしまうのです。
そしてまた、そのことをのぞき見ていたことを彼女に気付かれてしまった!
しかし、黒須は勢いで宮市に愛を告白。
2人は付き合うようになります。
依然として宮市は人を殺し続け、そのことに喜びを抱いている・・・。
黒須は宮市の殺戮を止められるのか、それとも・・・。

返り血を浴びないように、ビニールカッパを着て喜々として人を殺す美女。
なんともシュールですなあ・・・。
面白いのは、こういう死体処理を仕事としている人々がいる、という所。
謎の死体処理班のリーダー延命寺(江口のりこ)は言う。
新鮮な遺体の需要は意外と多い、と。
頸動脈をスパッと切り裂く宮川の殺人死体は、まさに新鮮。
まあ、急げば臓器移植などには使えるかも・・・(?) 

そんなことをすべて知ってしまった黒須が
全く無事に過ごしているというのも不思議といえば不思議ではありますが・・・。
普通にそんなこともアリとしてしまう、この不可思議世界の設定が、
もはや快感になってきます。

変だけれど、これはこれでいいか、という気にさせられる怪作。

<Amazon prime videoにて>

「羊とオオカミの恋と殺人」

2019年/日本/103分

監督:朝倉加葉子

原作:裸村「穴殺人」

出演:杉野遥亮、福原遥、江野沢愛美、笠松将、江口のりこ

 

ホラー度★★★☆☆

満足度★★★.5


「中野のお父さんは謎を解くか」 北村薫

2022年01月05日 | 本(ミステリ)

日本文学・・・、まあ、苦手でも大丈夫

 

 

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運動神経抜群の編集者・田川美希の毎日は、本や小説にまつわる謎に見舞われ忙しい。
松本清張の「封印」作品の真実、
太宰治作品中の意味不明な言葉、
泉鏡花はなぜ徳田秋声を殴ったのか……
そんな時は実家に行き、高校教師にして「本の名探偵」・お父さんの知恵を借りれば親孝行にもなる!?
愛されシリーズ第二弾。

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北村薫さんの「中野のお父さん」シリーズ第2弾。

編集者である田川美希が、仕事の中で出会ったちょっとしたナゾを、
高校教師で「本の名探偵」であるお父さんの知恵を借りて解いて行きます。

主には、日本文学史上の著名な作家などにまつわるナゾ。
そもそもそういう世界のことをある程度理解していないと
「ナゾ」自体が発生しないし、
その答を見つけるためには、かなり古今の作家や作家同士のつながり、
その周辺のことを熟知していなければ、解答を見つけることも出来ません。

私は、そのナゾ自体が発生しない部類なので、
実はこの物語を読む資格自体がないようにも感じてしまうのですが、
それでも、なんだか興味深さは感じられる。
ともあれ、著者北村薫氏の知識量こそを賞嘆すべきですね。

まあこんな私なので、例えば美希の恋模様などが注目の的だったりするミーハー読みです。
本作では、他社の編集者で手塚という人物が、なんだかいい感じになりそうな気配。
児童書担当なので、会う機会はあまり多くなかったのが、
文芸書に配置換え。
この先は会う機会も多くなりそうなのですよ・・・。

そもそも手塚を意識するようになった
「『百万回生きた猫』は、絶望の書か」の問いが、シビれます。
この先が楽しみになってきました。

「中野のお父さんは謎を解くか」 北村薫 文春文庫

満足度★★★.5

 


マトリックス レボリューションズ

2022年01月04日 | 映画(ま行)

圧倒的なザイオンの攻防戦

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マトリックスの三作目。
というか、前作「リローデッド」と本作はつながっており、二つで一つの話。
だから前作が本作の前置き的な役割で、大きな盛り上がりに欠けていた、
というのも無理のないことだ、と本作を見て大いに納得しました。

 

本作では冒頭、ネオは現実世界と仮想世界“マトリックス”との狭間に
閉じ込められてしまっているところから始まります。
でもそれはモーフィアスとトリニティの決死の働きにより、なんとか脱出に成功。

そしてようやく、本題の問題に向けてストーリーが動き始めます。
それというのは、残された人間たちが暮す地下深くのザイオンの街に、
マシンの放つセンティネルの大群が今にも到達し襲いかかろうとしているのです。
最後に残された人類の戦艦2隻のうち、一隻はごく狭い通路を伝いザイオンの救援へ。
そして、ネオとトリニティはもう一隻に搭乗し、
コンピューター本体の街、マシン・シティへ向かうことにします。

 

そして、このザイオンでの攻防戦がなんといっても圧倒的な質感と重量感で迫力満点。
群れとなって飛び交い襲ってくるセンティネル。
迎え撃つのは、ガンダムみたいなマシンを操る兵士。
ここの将軍が「ミフネ」という名前です♡

決死の攻防もむなしく、あわやのところで戦艦が到着。
センティネルの大群を一掃したかと思いきや・・・。

絶望的な一難去って、また一難。
それはない・・・。

結局、決着はマシン・シティへ向かったネオにかけるしかない。
なんとも心憎いストーリー運びであります。
マシン側では、実はマトリックス内でかってに増殖を始めて
内部の調和を著しく乱しているスミスの存在に困っていた、という事情が鍵になります。

なるほどー。
前作で何が何だかよく分からなかったところが、うっすらとは分かったような気がしてきました。
何度も見ればもっと分かるのかも知れないけれど、もういいかな?

とりあえずは、最新作を見るための復習としては十分でしょう。

 

 

「マトリックス レボリューションズ」

2003年/アメリカ/129分

監督:アンディ・ウォシャウスキー、ラリー・ウォシャウスキー

出演:キアヌ・リーブス、ローレンス・フィッシュバーン、キャリー=アン・モス、
   ヒューゴ・ウィービング、ジェイダ・ピンケット・スミス

迫力度★★★★★

満足度★★★★☆


マトリックス リローデッド

2022年01月03日 | 映画(ま行)

ザイオンの危機が目前に

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さて、マトリックスの二作目。
2作目と3作目はセットで連続した話になっています。

 

救世主として覚醒したネオは、
コンピュータ支配から人類を解放する闘いを続けています。

人間たちが暮す最後の都市・ザイオンに
ロボット兵センティネルが25万の大群で押し寄せ、ザイオンの滅亡が迫っています。
その危機を救うには、ネオがマトリックスの「ソース」に到着しなければならない。
そしてそこへ通じる道を開くことができるのは「キー・メーカー」という人物だけ。

ということで、RPG的に、一つ一つの課題を解決しつつ進んでいくことになります。

 

仮想世界“マトリックス”でのカーチェイスは、とにかく派手。
まあ、一番の見所でしょうか。
数々のアクションはやはりスタイリッシュでカッコイイですが、
こんなシーンがあまり続くとなんだか飽きてしまって、
さほどの驚きはなくなってきてしまいます。
エージェント・スミスが自己をコピーする技を身につけたようで、
うじゃうじゃとMr.スミスが湧き出てくる。
これはかなり気味悪いですが。

 

このコンピュータと人類の泥沼のような闘いの根源は
いったいいつからどのようにして・・・、
という所に恐るべき謎が潜んでいるようではあるのですが、
なんだかよく分からないうちに「続く」と言うことになってしまいます。
2作目はやや消化不良。

とにかく次へ行きましょう。

 

 

「マトリックス リローデッド」

2003年/アメリカ/138分

監督:アンディ・ウォシャウスキー、ラリー・ウォシャウスキー

出演:キアヌ・リーブス、ローレンス・フィッシュバーン、
   キャリー=アン・モス、ヒューゴ・ウィービング

 

カーチェイス度★★★★☆

満足度★★.5

 


マトリックス

2022年01月02日 | 映画(ま行)

仮想現実の中で生きる人々

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本作はもちろん見ておりますが、シリーズ最新作を見るための復習ということで、
改めて見てみました。
20年以上も前なんですね。
当然、当ブログ記事にもなっていないので。

コンピューターソフト会社のプログラマ-として勤務するトーマス・アンダーソン(キアヌ・リーブス)。
しかし、裏ではネオという名で知られた凄腕のハッカーでもあります。
あるとき、トリニティ(キャリー=アン・モス)と名乗る美女から接触を受けたネオは、
彼を探していたという男、モーフィアス(ローレンス・フィッシュバーン)と出会います。
彼は言います。
「人類が現実だと思っているこの世界は、
実はコンピューターによって作り出された『マトリックス』と呼ばれる仮想の世界だ」と。

現実の世界では、人間は眠らされて、その生体エネルギーを電気的エネルギーに変換し、
コンピューターの原動力となっているというのです。
いまや人間は眠りながら脳内の世界で生きているだけ。

モーフィアスの誘いにより、現実世界で目覚めたネオは、
コンピュータ-に支配され、荒廃した世界を目の当たりにします。
ネオこそはこの世界を救う救世主とモーフィアスは言い、
ともに人類を解放するための闘いに乗り出すことに・・・。

この第一作公開当時、ワイヤーアクションやバレットタイムと呼ばれる
撮影法が話題になったものでした。
この革新的なアクションシーンは、いま見てもステキにスタイリッシュですね。

いま自分が生きている世界が、コンピューターで作り出された仮想現実内のことに過ぎないという発想は、
いま現在、さらに説得力を持って迫ってきます。
ある人物は思います。
「こんな薄暗くて寒くて狭くて、まずい食事、
危険に満ちたこの“現実”よりも、マトリックスの世界にいる方が幸せだ・・・」と。

脳が認識すること=現実であるならば、
確かに、眠りながら穏やかな日常を生きる方が幸せなのかもしれません。

マトリックスの世界の中での「死」は現実世界での「死」でもあります。
脳が自分の「死」を認識してしまったら、
すなわち肉体も生命活動を停止してしまう、ということなんですね。

しかしネオは、覚醒し、凄まじい精神力でもって、その法則を乗り越える。
果たして彼は、このコンピューターに支配された世界を変えることができるのか・・・!
ということで、復習は第一作目だけでいいかな、と思っていたのですが、
この際ぜんぶ見てみることにします。

さすが20年前と思えるのは、パソコンのディスプレイが液晶ではなくブラウン管だったり、
携帯電話はあるけれど、もちろんスマホはまだない、というあたり。
マトリックスから現実世界へ戻るには、
公衆電話から指令本部に電話回線を通じさせなければならないのですが、
公衆電話が滅多にはない現在は、ちょっとそれは難しいかも、なんて思ったりします。

<Amazon prime videoにて>

「マトリックス」

1999年/アメリカ/136分

監督:アンディ・ウォシャウスキー、ラリー・ウォシャウシュキー

出演:キアヌ・リーブス、ローレンス・フィッシュバーン、
   キャリー=アン・モス、ヒューゴ・ウィービング、ジョー・パントリアーノ

 

アクションの格好良さ★★★★☆

満足度★★★★☆

 

 


「夏物語」川上未映子

2022年01月01日 | 本(その他)

女と命の物語

 

 

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大阪の下町で生まれ小説家を目指し上京した夏子。
38歳の頃、自分の子どもに会いたいと思い始める。
子どもを産むこと、持つことへの周囲の様々な声。
そんな中、精子提供で生まれ、本当の父を探す逢沢と出会い心を寄せていく。
生命の意味をめぐる真摯な問いを切ない詩情と泣き笑いの筆致で描く、
全世界が認める至高の物語。

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夏子38歳。
独身。
駆け出しの小説家。
そんな頃彼女は、「自分の子供に会いたい」と思い始めます。

彼氏もいないのに、第一彼女はセックスに嫌悪感があって、その行為ができない。
にもかかわらず、子どもが欲しいと思う。
例えば、小さな子を見てかわいいと思いぎゅっと抱きしめたくなる。
そんな単純な、まるでペットを飼うような気持ちとは違うのです。
そんな夏子の思いを説明するために本作の第一部があります。

 

第一部では、夏子のいまは亡き祖母と母のこと、
そして、10歳ほど年上の姉・巻子とその娘・緑子のことが描かれています。

夏子の父親はただ恐ろしく緊張感を生むだけの存在だった。
けれどその父が出ていって戻らなくなってから、母は実家へ戻り、
狭いアパートで祖母と母、姉と夏子の女4人で暮した。
ひどく貧しかったけれど、平和で心は満ち足りていた。

その後、祖母と母は病で相次いで亡くなり、
残された姉妹だけの生活となります。
10歳ほど年上の巻子がホステスをして夏子を育て上げる。

夏子は奨学金を受けて東京の大学へ進み、
なんとか文章を書いて生活できることを目指しているけれど
今はバイト生活。
そんなところへ、大阪に住む姉とその娘・12歳緑子が訪ねて来ます。
反抗期なのか、緑子は母親とは一言も口をきかず、
どうしても伝えたいことがあれば紙に書くという、悲惨な状態。
学校やよその人とは普通に話すのです。
ところが、ある事件があってこの母と娘の関係は修復します。
そんなところを夏子は目の当たりにするのです。

親子といってもいつも関係が良好なわけではない。
互いに身を切るような辛い思いを抱くこともある。
でも、そうしながらも共に生きていくことの何か特別な意味を、
夏子はみたように思ったのではないでしょうか。
相変わらず生きるのにキチキチの収入で暮す姉。
祖母も母も姉も、やりくりの苦しい中で子供を守り育てた。

 

望むと望まぬに関わらず、女性の体は次の命を育む準備ができていて、
精子を受け入れなければむなしく卵子は流れていく・・・。
ただのムダなこととは思いたくない。
これまで受け継がれて、そして今の自分が在る「命」。
良いことばかりではない、むしろ辛いことの方が多いのかも知れないけれど、
これを次に受け渡したい。
命を育んで、引き渡したい・・・。

そんな思いが、彼女の中に湧いてきているのだと思います。

 

さて第二部では、こんな夏子の思いが実現できるのか、という話になっていきます。
結婚もせず、男性との交わりもなく子供を作るとなると、
その方法は「精子提供」。
極めて現代的な問題を含む話になっていきます。
その精子は誰のものか分かっていた方がいいのか、そうでないのか。
その精子と卵子との結合方法は・・・?

結婚している男女の不妊治療はもはや一般的ですが、
これが未婚女性だと途端にハードルが高くなるのですね。
漂う夏子の思いはどこへ向かうのか・・・。

 

ジェンダーレスといわれる昨今の世の中ではありますが、
そうはいっても明らかに女だけの体のつくりというものがあります。
このことと、真っ正面から向き合うストーリー。
今まで、ありそうでなかったかもしれません。
私にとって大切な一冊になりそうです。

「夏物語」川上未映子 文春文庫

満足度★★★★★

 


新年あけましておめでとうございます

2022年01月01日 | インターバル

年賀状スタイルで・・・

この年になると、一年の早いこと、早いこと・・・。

特にコロナ禍では、メリハリのあるイベントもなく
淡々と日が過ぎて行くので、特にあっという間に月日が過ぎていくような気がします。

今年は、少しでもこれまでの日常を取り戻すことができるでしょうか。

ともあれ、また様々な映画と本との出会いを楽しみに
前進していこうと思います。
いつも見に来ていただいている皆様、どうもありがとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。