ステージおきたま

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コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

技あり!ワークショップ

2010-01-11 09:57:14 | 教育

 置賜地区の演劇部生徒講習会はワークショップだった。講師は甕岡裕美子さん。横浜で子どもたちのミュージカル指導をする傍ら、全国を飛び回ってワークショップを開いている方だ。

 参加者は地区内の五つの高校演劇部員30人ほど。地区大会以来久しぶりの顔合わせだ。どの学校も3年生が引退し新体制での参加なので、部員同士ほとんど交流がない。そんな見ず知らずの高校生たちをあっという間に近しくしてしまうわくわくするワークショップだった。

 僕がメモしたところではワークは16ほど、多分もっとあった、午前中は演劇やコミュニケーションにとって大切な感覚を呼び覚ますワーク。二人一組になって背中を合わせ、お互いの存在を背中を通して感じあうものとか、二人、さらには4人で一列につながり、目をつぶった先頭部分一人ないし三人を最後尾の一人が前の人の肩に置いた両手のみで誘導していくゲームとか。お互いの信頼感や背中や肩に置かれた相手の手に全神経を集中することを身体で学んでいく。

 さらに、言葉に反応するワーク。目をつぶって呼び声を頼りにパートナーを見つけ出す、これは比較的よく知られた方法だ。相手の呼び声に聴覚を研ぎ澄ますことと、しっかりと相手に言葉を伝えることの大切さを学べる。二人で向かい合って両手をつなぎお互いの足を踏みあう競技なんか、寒いときやテンションの下がっているときには効果的かもしれない。

 その他6人ほどが輪を作り、スターターが思いついたプレゼントの品に次々と装飾を加えていくなんてのもあった。これなんか、イメージ喚起力を鍛えるのとお互いが作り上げていくって感じが舞台作りに生かせるって感じだ。

 午後からはエチュード作りだったが、これも、丁寧にワークを重ねながら、チームの仲間が互いにカバーしあうことで一つの情景や物語が生み出されていく課程を巧みに誘導してくれた。

 甕岡さんのワークショップはスピードがあり変化に富んでいて部員たちがぐいぐい乗っていくのが感じられた。寄せ集めの生徒たちを巧みにシャッフルして交流させてくれたのもありがたいところだ。でも、一番大きいと思ったのは、一つ一つワークの後で、そのワークの目的を明確に語ってくれたことだ。演劇にとって何が大切なのか、他者とのコミュニケーションで心がけることは何か、それを感じとるワークを終えた直後の解説はとても納得の行くものだった。

 相手を身体で感じること、相手との距離感覚、言葉を力として受け止めること、集中すること、目を見つめ合うことの大切さ、相手を信じること、心を自由に動かすこと、シーンを作る意識を持つこと、相手を利用するのでなく、相手の支えになること、こういった芝居作りや人間関係を築く上で重要な点を、話しだけでなく、身体を通して感じとらせてくれた。

 ワークショップ終了時の感想では、各グループ代表から充実した時間を持てたことに感謝の気持ちが素直に語られていた。自分が変わったと表現した生徒さえいた。まずは、おおいに効果的で感動的なワークショップだった。

 ただ、無いものねだりの僕としは、この経験がどう血肉化していくのか、ってあたりにワークショップ単発の限界のようなものを感じた。人間ある瞬間に、劃然とわかる!卒然と悟る!ってこともあるには違いない。でも、それが自分のものとして身体化されるにはかなり意識的な努力が必要な気がする。しかも、その取り込み作業を自分に課していくことって、かなり高度で持久力を要する仕事なんじゃないか。

 要するに、人間そうは簡単に変われやしないよってことだ。身も蓋もない!いえいえ、時間と環境ってことなんだ、僕の言いたいことは。人は変わる、誰にも大きな可能性がある、それはほんと!僕も信じてる!!でも、それを開いていくには様々な経験や押し出してくれる周囲の力や絶え間ないアドバイスなんてことが必要なんじゃないか、ってことだ。で、その一つの経験としては大きな意味をもったワークショップだったのは間違いない。でも、それを部員一人一人が自分のものにしていくためには、演劇部の日々の活動があるっとことだ。このワークショップで感じた心地よさ、学んだ事柄を忘れることなく、今日からの活動に取り組もう、って、これが実はとても難しいことなんだよ。

コメント
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