ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

置農演劇部のヒミツその二

2010-01-03 14:57:30 | 教育

 前回のつづきだ。置農演劇部で三年過ごすと、どうやら凄いことになるって話し。何が凄いかって言うと、①自信がついて、②自分で考えて行動できるようになって、③社会性が身に付いて、④開かれた感性が自分のものになり、⑤健康な身体と逞しい精神を手に入れられる?おいおい、ほんとかい?まっ、過大広告の部分はおおいにあるけど、しっかりやった奴は、たしかにこう言って褒めてやってもいいくらいの成長をとげた。

 じゃあ、それはどうしてなの?って話しだ。

 まず、演劇の持つ教育的効果が大きい。例えばコミュニケーション能力とか、他者との関係の築き方とか、協力の大切さとか、自分の持ち場を作る、なんて側面は、間違いなく演劇の効用だ。それはそれ、以前僕なりにまとめているので、またいつかしっかりと考えをまとめてみたいって思っている、今日は、置農演劇部だからできたこと、について考えよう。

 置農演劇部が他校と違うところはいくつかある。その中で、まあ、これはぜったい負けないね、っていうのが、忙しい!ってことだろう。だって、年間制作本数5本、年間公演回数20回以上だから。ざっと計算して一ヶ月に2回公演してるってことだ。子どもミュージカルの連続公演が大きいけど、2009年度は新しく始めた演歌ショーも入ってきた。今年はさらに演歌ショーの評判が広まるだろうから、公演回数はもっと多くなると思う。もっとも、ボランティア・スピリット賞で一緒に全国賞をとった大阪の芥川高校和太鼓部なんて年間50公演だか、まだまだ上はあるよ。

 で、どうしてこうも部員たちを追い込むのってことだ。ゆとりの中で得られるものも確かに大切かも知れない。でも、無我夢中で突っ走ることで得られることも決して小さくないってことだ。まず、常に目一杯の部分で努力しているから自ずと能力を高めることができる。できない!とか無理!!とか言ってられないからね、次から次と新しい公演が追いかけて来る。新しい役や物作りが迫って来る。こうなると、人間思ってもみない力を発揮するもんなんだ。特に置農に来る子たちには、自分はだめって初めから極小自己評価してる奴結構いるからね、どしどし追い込んでやると、苦し紛れに自分をどんどん突破して行ってしまうんだ。これが一つ。

 それと、忙しいってことは時間がないってことだから、限られた時間の中でなんとかしなくちゃならない。つまり集中することを学ぶってことなんだ。今の高校生、家の手伝いするわけじゃなし、勉強に熱中するでなし、暇もてあまして結局メールでしょ。そんな彼らの時間感覚を打ち砕かれるのが置農演劇部ってことなんだ。こんなに公欠ばかりで、成績落ちたらどうすんの?なんて心配してくれる保護者や担任もいるけど、これが逆でね、一年では赤点ばかりだった奴らが、着実にクラス順位を上げていっている。クラストップも毎年演劇部から出てるしね。

 役者やスタッフとしての技量なんか、間違いなく回数だから。やればやっただけ上達するんだ、高校生の場合は。要するに、超えていく山が多ければ、それを踏み越えて生まれる自信も大きいってことだ。そして、山の頂を踏みしめれば達成感がある。20数回も踏み越えれば、それだけの達成感ってことだ。疲れたって辛くたって、山頂の気持ちよさを知ってるから、努力できる。歩いている時は、走っている時はどんなに辛くっともね。

 次に置農演劇部が力を入れているのが、自分で考えて仕事しろ!ってことかな。置農の舞台見た人はわかるよね、装置やたら作るんだ。衣装とことん凝るんだ。小道具ぜったい手を抜かないんだ。これはもちろん一つ一つの作品を大切にするってポリシーなんだけど、たくさん仕事を作るって意味も少なくない。そう、わざわざ、部員たちにもの作らせる。いろんなこと、経験してほしいんだよ。大工仕事も裁縫も針金細工も、いろんな作業を学ばせたいっ思っている。

 その理由。もの作りって頭の体操でしょ。自分の頭で考えなくちゃものつくれないもの。それから、働き方を覚えてほしいってことも大きい。与えられた仕事をいかに手際よく高い水準でこなすか。全体を取り仕切っていかに効率的にチームを動かすか。これらは上級生の課題。一年生なんかだと、まず働くことを厭わぬ気持ちを作ってやることから始めなくちゃなんない。仲良し同士、おしゃべりしながら仕事するって言うより、口は動くけど手は動かない、なんてざらだから。だから、僕の雷は、いつも、「一人でできる仕事を二人でするな!」だったり、「仕事は探してするもんだ!」って落ちる。

 たくさんのもの作りを通して、部員たちは、働くってどういうことか、世間で要求される働き方って何か、いいや、それ以前に働くこと、動くことが当たり前って意識を身につけて行けるんだと思っている。

 そんな働き方の訓練が、大会なんかでは大いに役に立つ。そして、置農の立込みは凄い!置農の舞台監督はかっこいい!なんて言われるようになった。それって、芝居が素晴らしいって言われるのと同じくらいに嬉しい褒め言葉なんだ、僕にとって。

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