ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

久しぶりの映画はしご!まずは『人生の特等席』

2012-12-02 10:30:34 | 映画
久しぶりだ、映画のはしご。以前は結構やったけど、さすがにこの歳となるとねぇ、って言うより時間がない。そう、まるでない。映画一本だって時間が取れない。そんな生活がずーっと続いてきたから。シニア演劇公演もなんとか終わり、農業クラブプロジェクト発表県大会も最優秀で締め、ようやっと、目の前から仕事の山が消え去った。で、待ちに待って出掛けた山形フォーラム。昼に入って5時半まで二本の秀作を存分に堪能した。

 
 
 『ソハに地下水道』、『人生の特等席』の二本だ。どちらか一本が不作でも、残りが納得できれば気持ち良く帰ってこれる、これがはしごの最大の利点なんたけど、今回はどちらも満足することができた。とは言っても、事前の予想とは正反対で、『人生の特等席』はかなり減点の合格点すれすれってところかな。

 クリントイーストウッドが老いの醜さから老人の格好良さに走り抜けるって内容のもので、同輩の身としてかなり期待していた。冒頭、出にくいおしっこに業を煮やす主人公ガス、たるんでしみだらけの二の腕、嗄れた声、ああ、クリントイーストウッドも歳を取ったんだ、わかるよわかるって身につまされた。車庫から車を出すにもあっちにぶつけこっちを壊し、自分の過ちを棚上げして車庫に八つ当たりする苛立ちなんかも、ついこの間の僕の姿だ。車庫出しでサイドミラーぶっ壊して、自分の不注意だってわかっていても、車庫を狭くしていた唐箕に当たり散らしたからね。

 でも、映画全体としては、以前の『グラントリノ』に数段及ばない凡作だったな。まず、ガスと対決する若手のスカウトやそれが押す注目の高校生新人が、人間としてあまりにちゃちだってこと。善玉・悪玉対決にもならないお粗末さ。次にストーリーのあまりのご都合主義。6歳で妻を亡くし、その後娘は親戚や全寮制の学校にやって仕事一途、電話一本かけなかったってことなのに、その娘が過去のプロ野球データを知り尽くしてるって不思議。さらに、その娘が偶然発見するプロ並みの剛球投手の玉をキャッチする、ありえねぇ感。どこでそんな技術身に付けたっていうんだ?さらに、その剛球投手が球場のピーナッツ売りで、期待の新人から小馬鹿にされていた存在で、なんと公開対決で期待の新人をきりきり舞いさせる、って、おいおい、そりゃ夢物語で楽しいけどさ、・・・・・。ばりばりの一級弁護士の娘が、心の病を感じていて大学時代はカウンセリングに通ってたとか、これなんか米国映画によくある話し。一番ダメなのが、メインストーリーの野球の描かれ方がまるで魅力がないってことと、ガスの、ってことはつまり老人の底力が鍛え抜かれた耳=五感だってことも、あっそう、って感じで迫ってはこないってことだろう。

 『グラントリノ』には、社会の現状にとけ込めず苛立つ孤独な魂があった。社会の理不尽と戦う老人がいた。身をもって移民の隣人を守ろうとする孤高の愛と正義感があった。そして、大切にされたグラントリノはその未来のアメリカ人・移民の若者に引き継がれるという高いメッセージ性があった。だが、今回作品にはなんだかんだあったとしても『人生の特等席』にすわり続ける恵まれた年寄りがいるに過ぎない。なんてずいぶん酷評してまった。でも、おとぎ話としては、老いてもなお格好いいクリントイーストウッドを見る映画としては、そう悪くはないってことで、及第点ってことにしておこう。

 二本一緒に評を書くつもりだったけど、ここまでで結構長くなってしまったから、『ソハの地下水道』については次回書くことにしよう。こっちは相当気持ち引き締めて書かなくちゃならない作品なのでね。ということで、今日はお終い。

 

コメント
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