最初にこの作品をブログで取り上げたのが、2014年の12月。1年3ヵ月あまり待たされて、ようやく見ることができた。 ロボットもの+最近話題のシンギュラリティを取り上げた作品である。 |
オートマタは、アシモフの「ロボット工学三原則」とも異なる前提(protocol)に依拠するロボット。ウイル・スミス主演の『I, ROBOT』のようなスリラー+アクションものでもない。『CHAPPiE』ほど楽しげでも、脳天気でもない。全体的なトーンとして、なにやら薄暗い未来を描いた作品なのかなと思い、映画館に出向いた。
舞台は2044年である。コンピュータの『知性』が、人類のそれを超えるのではと予測されるころだ。
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ものがたり世界のロボットには以下の二つの「制御機能」が施されている。
【制御機能1】生命体への危害の禁止
【制御機能2】自他のロボットの修正(改造)の禁止
それが損なわれ、ロボット自身が自分で修理・改造をしている?
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日本版公式サイトにも出ているが、本作の舞台は『2044年、太陽風の増加により、地球は砂漠化が進み、人口は99.7%減少し、わずか2100万人になってしまった。大気の乱れが地上の通信システムを妨害し、人類は技術的な後退を余儀なくされた』社会である。
そんな社会に『ハイテク技術の大企業ROC社は、ピルグリム7000型という人型ロボット〈オートマタ〉を開発、投入している。オートマタは、人類存続のため砂漠化を防ぐ巨大防御壁の建設や、機械式の雲を造るほかにも、人間社会に密に入り込んでいた。建設現場のみならず、家事、セックスなど、様々な人間の生活を幇助していた。』なのだ。(下線部、公式サイトより引用、一部要約)
上記二つの制御機能が組み込まれているはずのオートマタ。しかし、異変が発見される。所有者不明の機能異常を見せたオートマタ。第2プロトコル喪失。。。
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ストーリーに関してはネタバレ禁止なので書かない。よくもわるくも、難解な1本だ。
ラストシーン、地球が荒廃する前は大河だった大峡谷を、主人公が妻と共に渡るシーンがある。それを見送るイヌ型(?)と女性型オートマタ。妙に印象に残った。
川は人類と彼らとのギャップ。ラストシーンのオートマタはまさかアダムとイブと言うこともないだろうが、象徴的に描いているように見えなくはない。
なお、シンギュラリティは2045年と考えられている。ものがたり世界はその1年前と見ることもできる。
以前取り上げたこともあるが、川又千秋さんの小説に『宇宙船∞号の冒険』というものがある。「人類が滅びた後、人類により誕生したロボットたちはどうなるのか」と、「地球文明、究極的には『知』を嗣ぐのは誰か」を描く作品なのだが、シネコンの帰りにふと思いだした。
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【制御機能】
1ST PROTOCOL
A ROBOT CANNOT HARM ANY FORM OF LIFE
「人間」ではなく「いかなる形態の生命体」である。
2ND PROTOCOL
A ROBOT CANNT ALTER ITSSELF OR OTHERS
修正(改造)はalterである。
有名なアイザックアシモフのロボット工学三原則は以下のものである。
Isaac Asimov's "Three Laws of Robotics"
FIRST LAW
A robot may not injure a human being or, through inaction, allow a human being to come to harm.
SECOND LAW
A robot must obey the orders given it by human beings except where such orders would conflict with the First Law.
THIRD LAW
A robot must protect its own existence as long as such protection does not conflict with the First or Second Law.
日本語訳
第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
出典:『われはロボット』アイザック・アシモフ著、小尾芙佐訳(1983年)
後に第零条が書き加えられた。
A robot may not harm humanity, or, by inaction, allow humanity to come to harm.
第零条 ロボットは人類に対して危害を加えてはならない。またその危機を看過してはならない。
出典:『ロボットと帝国』アイザック・アシモフ著、小尾芙佐訳(1988年)