<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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文化庁が熊本市を行政指導したのは先週のこと。
なんでも、
「熊本城をイベント会場ばかりに使うのなら、文化財の助成金はカットします」
というもの。
熊本市がお城を使ってイベント企画ばかり打つものだから、史跡なのか展示会場なのかわからなくなっているのだという。
加藤清正公もビックリというか、感心するというか、九州熊本県はただ者ではない、地方都市なのであった。
もっとも、領民の生活に重点を置いた行政手腕を発揮し、肥後の人々に今もって絶大な支持のある清政公のこと。
領民の子孫である熊本県民が関西も関東もビックリするように変革にいそしんでいる姿を、きっと満足して天空より見つめているに違いない。

この熊本の活気力のシンボルがゆるキャラ「くまモン」。
その経済効果は彦根のひこニャンを遥かに凌駕し、もしかすると千葉浦安に住んでいるネズミのキャラクターに匹敵するかも知れない人気者となっているのだ。
我が家では、すでにくまモン人気が中学生の娘をして「きゃりーぱみゅぱみゅ」を凌駕しており、おっつけ熊本旅行に連れて行かなければならないという、リスクが生じそうで出費が空恐ろしいものがある。

そのくまモンの誕生から今日に到るまでのプロモーション秘話を収めているのが幻冬舎新書「くまモンの秘密 地方公務員集団がおこしたサプライズ」。
実際に、くまモンを使った熊本県の関西でのプロモーション活動をどのように展開し、どのように話題作りをし、成功に導いていったのか、というサクセスストーリーが記されており、キャラクタービジネスだけではなく、物事のプロモーションを含めたデザイイングの重要なヒントになることが満載の一冊なのであった。

それにしても昔は神戸のことを「株式会社神戸市」などと言ったが、やっぱり神戸は大都市として地の利があり、地方とは一概に言い難いものがあった。
その大都市神戸が商売上手なのは、他の自治体があまりにも下手くそすぎたからでもあり、特別なものは、今思い起こせばあまりない。
そこへいくと、今回の普通ではないくまモン人気により熊本の活性化は、神戸のそれと比べ物にならないインパクトがある。
そう、サプライズというよりも、インパクトなのだ。

くまモンは「かわいい」という存在だけではなく、「オモロイ」という存在にまで高まっており、他のゆるキャラと一線を画している。
「オモロイ」と関西人を唸らせるその魅力はキャラクターのデザインだけではなく、動き、身体で見せる「生きた」キャラクター化しているのだ。
その手本はやはり浦安のネズミさんなのであった。

最もユニークなのは、この仕掛を仕掛けて運営しているのが地方公務員の人たちであることだ。

実際、地方自治体のマーケティングなんてものは、かなりいい加減なのものだ。
例えば、観光客数のカウントでちゃんとした統計資料を持っているのは、信じられないかも知れないが京都府だけである。
自治体によっては目分量でカウントしているところもあり、「観光立国」の名が廃る前に、すでに京都以外が腐っているといっても過言ではない。
首都東京はビジネス客と観光客の区別ができず、事実上の第二都市大阪は出たり入ったりしている人をダブル、トリプルカウントしている始末なのであった。
そこへ大阪府は橋下府政ならびに市政が起こり、今大規模に変化を遂げているところで、全国の注目を集めているところだ。
東京は相変わらずオリンピック誘致で浮かれ気分だが、何が悲しくってオリンピックを再び東京でやろうという、その企画力の無さに都政の実力が現れている。

大阪府はトップダウンでの改革だが、熊本が面白いのは地元出身のコンサルタントを起用した活動であるということ。
コンサルタントは映画「おくりびと」で脚本を書いた小山薫堂であり、そのやりかは東京や大阪よりも洗練されていように感じられ、熊本の活力が感じられる。

ともかく、実は熊本県にはクマは生息していないということで、くまモン誕生には反対する人もいたという。
細かなところに物言いを付ける「なんでも反対派」はどこにでもいるようで、計画のプロモーションには負の要素の交わし方ヒントも含まれていて、これは今現在必読の新書ということができるのではないか、と思った。

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