<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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加茂駅から当尾への道はなんとなく整備されており少しレトロな町並みだ。
一方、大仏鉄道の遺構へ向かう道は大きめの用水路に蓋をした線路の横のでこぼこ道なのであった。
ハイキング限定のコースなのか。
駅周辺には大仏鉄道の遺構は残っていないためこういう路地のような道を通っていくことで、少しでも遺構っぽいムードを演出する作戦なのか。
よくわからない。
しかし天気は良くて早秋の暖かさと紺碧の空がほのぼのとした気分にさせてくれてなんともいえないリラックスした気分になるのだった。

右手に大和路線の線路。
左手に小学校の校庭を臨むこと暫しすると大和路線の踏切があった。
渡ろうとしたら警報が鳴った。
しばらくすると大阪行の大和路快速がゆっくりと西方向に向けて走り去った。
単線なのに結構な交通量だ。

踏切から向こうは田んぼの中を一直線の道が延びていた。
田舎だ。
久しぶりの田舎がここにある。
私の街も和泉山脈側の山手に行くと田舎っぽくなってくるのだが、しかし山が迫っている関係でほのぼの感はこことは異なる。
子供の頃、農繁期に過ごした岡山の片田舎の関係で平地に田んぼがあってその真中を道路が通っている光景のほうが私には懐かしさと親しみがあるのだ。
しばらく歩いていくと小さな川があり、今度はその土手を南西の方角に歩いていった。
道路幅も狭く、時折農作業の軽トラックが通過する。
空はあくまでも青く、雲もほとんどない。
周囲の田んぼは稲がたわわに実っている。
遠くになった線路を電車が走っている。

この大仏鉄道ハイキングコースでは我々だけではなく他のグループの人達の姿もちらほらと見られる。

やがて道は森の中へと進み始め上り坂になる。
道の両側には竹やぶがあり、葉の隙間から秋の陽光がキラキラと輝き、幅2メートルもないだろう路面にモノトーンのシルエットを映し出している。

「嵐山みたいですね」
「確かに」
「嵐山みたいに観光客がいない分、こっちのほうが静かでいいかも」

嵐山の竹林は京都観光の有名所の一つで私もカミさんと行ったことがある。
実際の姿は観光写真にあるような「静かな京都」ではなく、観光客がぞろぞろと歩き、スマホで写メをとっているような騒々しいところだ。
インバウンド華やかしきコロナ前なんぞ、ひどい場合は中国語が飛び交い京都というよりもパンダが笹食う四川省の山の中、というような感じだった。

それと比べると確かにここは静かで、かつ美しい。

つづく



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