バンコクのドンムアン空港での乗り継ぎ待ち時間は2時間半だった。
「本日、バンコク国際空港は大変混雑しております。皆さまには大変ご迷惑をお掛けしますが当機はターミナル2に到着いたします。入国手続きおよび荷物のお受け取りはターミナル一にお越しください。なお、国内線でチェンマイ、チェンライ、プーケット、ハジャイへ乗り継ぎのお客様は........。」
ふつう、タイ国際航空はターミナル一に接続することになっている。
東南アジア屈指の空港であるドンムアン空港はいつも混雑しているが、今日はとりわけ忙しいらしい。
私の乗った飛行機はターミナル2の一番端に到着した。
ターミナル1まではかなりの距離があるが、その長い通路をのろのろと歩いた。なんせ2時間半も時間潰しをしなくてはならない。のろのろと歩くのもその時間潰しの一環である。
ムービングウォークもベルトを持ち、立ち止まって流れのままに任せた。
ムービングウォークに立ち止まって乗る、ということはイラチの関西人である私にとって、とても苦痛なことである。
関西人にとってムービングウォークの上は歩くかまたは小走りするものであって、決して立ち止まり機械の成せるままにゆだねるものではないからなのだ。
阪急電車の梅田駅コンコースもしかり、地下鉄心斎橋駅クリスタ長堀の通路もしかり、羽田空港や東京駅京葉線コンコースなど関東へ行ってもその習慣は変わらない。
通路を歩いてロビーへ出ると、出発予定を示すモニターを見た。
ヤンゴン行きが何番ゲートから出発するのか確認したかったのだ。
しかし出発2時間半も前なので、まだ私の便はまだ表示されていない。
関空よりも、もしかすると成田よりも忙しそうなドンムアン空港の国際線出発の表示は5分から10分置きに出発する数多くの出発便で占められていた。
この乗り継ぎ待ちの間に、私は昨日までの仕事の疲れを癒そうと、空港内でタイマッサージを受けることを考えていた。
1時間程度マッサージを受けていると2時間半の待ち時間などあっという間に過ぎ去るだろうと思っていたからだ。
これまで私はドンムアン空港内のマッサージ料金がいったいいくらなのか調べたことがなかった。だからバンコク市内と比較して、ちょっと高いくらいだろうと考えていたのだ。
しかし、これは甘かった。ものすごく安易な考えだったのだ。
空港内のマッサージの価格はちょっとぐらい高い、ではなく、消費者金融の延滞金利のように猛烈に高いのであった。
私の見た店は1時間800バーツ。
私がいつも通っているバンコク市内のスクウィンビット・ソイ・エマカイというところにある視覚障害者がマッサージ師を務める店は2時間300バーツ。
ということは、ここは市内の4~5倍も高いということになる。
よくよく考えてみると日本でもJRの駅の立ち食いキツネうどんは250円だが、関空や羽田のそれは600円以上する。
つまり同じボッタクリなのだ。
で、あまりにアホらしいのでマッサージを受けることは諦めて、素直にいつものように読書をして時間を潰すことにした。
つづく
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