山のリアル
山岳事情:遭難事故×携帯電話
淵から凍てつく氷瀑、昨年一月の三頭大滝です。
落差33メートル、標高1,098メートルにある東京都檜原村にある滝です。
三頭山は標高1,527.5メートル、二千メートル未満&都内だけど例年これくらい凍結します。
で、滝写真なのになんで滝ナンタラいう題名じゃないのかっていうと、↓昨日のニュースから。
【遭難電話の女性、自力で下山「捜していると思わなかった」】
北塩原村の西大巓(にしだいてん=1,982メートル)に登り、13日に近くのスキー場に「道に迷った」と電話をかけた女性が、同日昼までに自力下山し、帰宅していたことが16日、猪苗代署への取材で分かった。
同署によると、スキー場の通話記録から女性の電話番号を特定。16日朝までに連絡を取り、無事と分かった。
女性は東京の会社員(49)で、12日に同山で1泊、13日の下山中に道に迷って電話をかけた。
女性は県警ヘリの捜索を見たが「自分を捜しているとは思わなかった」と話しているという。
同署や喜多方地方消防本部などは遭難事故として15日まで捜索活動を続けていた。
同署は「登山届の提出と、道に迷った場合は110番に電話をかけてほしい」と呼び掛けている。
【出典:福島民友ニュースhttp://www.minyu-net.com/news/news/FM20160217-050607.php】
こうした遭難×携帯電話の安易な通報はホント大迷惑です、絶対にやめてください。
どんなにアホらしい話でも本人から救助要請があれば山岳救助隊は出動するしかありません、
そうした安易な通報で出動したために、本当に救助が必要な遭難事故が手遅れになることもあります。
その命のリスクを負いきれますか?
コウイウ遭難者がたいてい言うコトは「自分は大丈夫だと思った」過信&無知まるだし常套文句です。
なにより「道迷い」とスキー場に電話→無事下山の連絡をしない、は、山の初心者というより社会的常識に欠けます。
典型的「登山前から遭難している」タイプじゃないかと思います、コウイウ遭難者はとくに標高2,000メートル未満の山でめずらしくありません。
道迷い=ルートファインディング能力が低い、経験値も知識も低レベル+登山図とコンパスを持っていないと言うコトです。
とくに低山は仕事道&水源巡視路が交錯して迷いやすい+無名の谷や沢も多い=雪崩もおきるし転滑落も当然にあります。
ルートを見失ったら山頂へ登りかえして正規ルートに戻る、山であたりまえの対処法です。
なぜ正規ルートに戻るのか?=山は谷も崖もある+冬は積雪が危険だからです。
雪庇=雪が庇上にのびて下は空間→踏抜いて転落
凍結=凍りついた足元に滑って転んで転倒・転滑落→受傷で行動不能または即死
低温=雪で体温を奪われて低体温症→思考力低下による道迷い・転滑落、行動不能による凍死
なんて危険が積雪期の山にはあります。
イイカゲンな装備+イイカゲンな山行計画=アタリマエに道迷遭難→安易な電話連絡&身勝手な行動→救援隊の徒労
また今回は冬山&単独行かつレベル低、最も遭難死しやすい事例です。
単独=自分ひとりで技術・知識を補って的確な判断をすることは簡単ではありません、受傷しての自力下山は厳しいです。
しかも女性で49歳だと体力もあまりない→早急な救助が必要だと判断されて当り前です。
そうした危険な状況下だからこそ救助隊も「一報」で動いてくれます。
救助隊員は厳しい訓練を毎日いつも欠かしません、そして救助要請あれば危険地帯にも踏みこみます。
そうした危険地帯&危険な天候でも耐えて救助活動できるように訓練する=訓練もハイリスク、命懸けです。
どんな救助要請でも「一報」あれば出動せざるを得ない、ただ「山が好き」だけで務まる仕事じゃありません。
「公務員ナンダシ救助が仕事ナンダカラ文句言ウトカ資格ナイデショ」
なんてこの手の遭難者は言います、でも同じセリフを救助隊員が受傷or亡くなったとき言えますか?
コウイウコトを救助隊員の家族に言ってもビンタされない自信あるほど正しい意見だと思いますか?
で、雪山は標高に関わらずドレダケ遭難死しやすいか?ってことを書こうかなと標高1,000アタリの冬記事です、笑
低温化で見られる現象が↓氷の花です、冬山らしい風物で三頭大滝へむかう登山道にもよくあります。
シモバシラというシソ科の植物が冬、外気の低温→植物内の水分が凍って膨張→茎が破裂して飛びだすまま凍る現象です。
植物の水分が凍って破裂なんてドンダケ低温かっていうと落差33メートルの滝も凍る状況です。
その滝の上部、沢水も流れの軌跡のこしたまま凍りつきます。
東京都内=南関東で標高2,000メートル未満、そんな条件下でも冬山は平地と異世界です。
今シーズンは暖冬、それでも三頭大滝は↓こんなカンジに凍結しています。
東京都の山岳地域、奥多摩の冬は標高1,000メートル付近でもこれだけ厳しいです。
で、ちょっと北上した栃木県の標高2,000メートル未満はどうかっていうと↓こんなカンジになります。
中禅寺湖@栃木県、標高1,269メートルの湖畔はわずかな水も凍ります。
湖面の風にとんだ飛沫そのまま木に凍てついて、雨氷と同じ現象が起きるワケです。
湖から少し離れてもコンナカンジ↓大気にふくまれる水分が冷たい樹皮にふれると氷化します。
ここまでの写真すべて標高1,000~1,200メートル付近で撮りました。
標高2,000メートルないと「タイシタコトナイジャン」なんて言う方もいますけど、これが冬山のリアルな姿です。
足場も氷化していてアタリマエ=転倒→怪我で動けなくなれば凍死もアタリマエ、
そのためどこの山域も冬はアイゼン(登山靴に装着する滑り止めの刃)推奨しています、
が、低山にアイゼンとかイラネーなんてヤツが転倒→怪我して行動不能→救助要請なんてことも多いのが冬と春の山です。
雪山は無雪期の山と別世界、難易度もコースタイムもまったく変わります。
たとえば富士山の積雪期はエベレスト登頂者でも遭難死するレベルで、白魔と呼ばれるほど高難度です。
冬富士=冬型気圧配置による豪風(一瞬でシャッター破壊する威力)+低温+コンクリート級に硬く氷化した雪はアイゼンが利きません。
条例で冬期入山規制を設ける谷川岳@群馬県なども同様です、積雪期のレベル変化はどの山でもあり低山も例外ではありません。
そのため積雪期は単独行を避けるよう各警察署の山岳警備隊・山岳救助隊は呼びかけています。
積雪期の剱岳単独行VSプロ集団に囲まれエベレストに登る、どっちが高難度かといえば剱岳単独です。
専門家と登る=安全管理+ルートファインディング+荷物の振分、体調管理や撤退のタイミングも面倒みてもらえる=「自助」レベルが低くて済みます。
また遭難は下山時に起こりやすいです、それは体調管理と撤退タイミングを間違えた→思考能力の低下がミスを惹きおこすという現実もあります。
それらを単独行では全て担えるだけの経験・技術・判断力が自身に要求されます、怪我しても自力下山する覚悟と根性もアタリマエです。
プロに守られた某テレビ登山企画で「カンタンジャン」と思ったら大間違い、体力適性や山名だけで登山レベルを量るのは危険です。
こうした勘違い、季節天候による変化や登山技術を量りまちがえて遭難するケースが多いです。
今回の猪苗代西大嶺もスキー場に電話+無事下山の連絡もしないことから初心者か自己過信タイプだと思います。
49歳で女性だと山ガール流行にデビューした初心者かもしれませんが、中高年に多い「経験年数で傲慢」自己過信のどちらかだと。
体力低下=判断能力も鈍るのが山です、若いころと同レベルを保つのは毎日訓練を積んでも難しい現実があります。
四月は平地で桜満開の春、でも山は真冬の別世界。
どれくらい違うかって例えば↓三頭山の四月はこんなカンジ、標高1,500級の山@都内ですら春山は雪の季です。
撮影地:三頭山@東京都檜原村、芦ヶ久保の雨氷@埼玉県秩父、雨氷と中禅寺湖畔@栃木県
真実が大事なんだよ、キミ・・・ 2ブログトーナメント
もし山に行ってみたいなー思われたら専門誌をちゃんと読みましょう。
る●ぶ・●Zなど旅行誌やライフスタイル雑誌にも特集組まれていますが、不十分すぎます。
そういう雑誌の地図は簡略すぎてアテになりません、ちゃんとした登山図+コンパスが道迷いを防ぎます。
たとえば羽根田治『ドキュメント気象遭難』『ドキュメント道迷い遭難』読みやすくてイイかなと。
金邦夫『金副隊長の山岳救助隊日誌』はかなりおススメですが、版が少ないため入手が難しいと思います。
いずれも気象変化や山の危険性・注意すべき点を描かれています、入門としての基礎知識&心構えに一読してみてください。
すこし知ったら登山雑誌『岳人』『山と渓谷』や山の専門書、モンベルなど登山専門の会社が開く登山教室もイイと思います。
山岳会に所属すれば知識も技術も教えてもらえる+同行する山仲間もできます。
ただし講習会も無く集まって登るだけ会はあまり安全と言えません、山のプロフェッショナルが在籍する会を選んで無難です。
で↓先日の記事から転載します。
山の鉄則ざっくり書くと、
低山でも装備きちんとする
○アイゼンの携行:低山でも秋から春先は凍結の可能性アリ、一度でも転んで墜ちたら遭難するのが山です。
○ヘッドライト携行:谷間や樹林は翳りやすく暗い、急な降雪や濃霧で見通し悪化、など照明器具が必要になることも。
○水は必須:適切な水分補給は高山病も防ぎます、怪我をしたとき傷を洗うためにも必要です。
○塩分糖分ミネラルの補給:行動食に飴やゼリーなど便利です、汗をかいて塩分やミネラル他を失うと脱水症状や疲労を起こすので早めの補給を。
○登山靴:登山前に履きならしておく+防水・滑り止めなど機能性よいもの+専用靴下。靴紐もエイトノットなど解けないよう結ぶ。
○温度調整できる+濡れない服装:雪と風と日蔭で気温低い×歩くと体温上昇→汗が冷えて低体温症なんてことも。
○熊鈴必携:クマは意表を突かれると襲ってきます、鈴の音で「いるよ」と知らせることで遭遇を防ぐってワケです。
遅くても14時には下山完了※ヘッドライト携行
日が傾く→斜面で影になる→15時には真っ暗なんてことも。
特に冬山は午後になると気温が下がります、登山道が帰りは凍結している可能性も。
沢は雪崩の巣になる
低山でも沢=斜面がおちこむ集中点は雪崩の直撃を受ける可能性が大きくなります。
ちいさな雪崩でも足をとられたら滑落&転落→遭難事故につながり危険です。
もし迷ったら山頂に戻る
山頂は必ず正規ルートにあります、正規ルート=危険地帯を避けていける道です。
登山道から逸れると危険地帯=崖や滝につっこんで転落死の可能性大、疲れていても来た道を戻ることは鉄則です。
とくに冬は積雪で道が埋まるため迷いやすくもあります、雪で崖に気づかず踏抜いて滑落…なんて事故も多いです。
ビバークは北斜面ではなく南斜面
北斜面と南斜面の温度差はカナリ違います、どうしてもビバーク(緊急露営)することになったら北斜面は避けましょう。
南斜面で風が避けられる+雪崩のトレースが無いポイント+沢から離れたところで、手足など末端を冷やさない工夫をしてください。
凍傷すれば行動不能に陥ります、特に冬期は濡らすとそこから凍るため沢の渡渉はホントに危険です。
ホント↑ざっくりなので専門書&山慣れている人に教えてもらってくださいね?笑
カメラ使う場合の注意点
○肩に架けたダケで歩くとカメラの重みが振れる→バランス崩しやすくなり危険です。
○遣うときだけ安全な場所でザックから出すorザックのチェストハーネスで固定する、など気を付けてください。
○山での三脚利用はぶっちゃけキケンです。
・背負った三脚をひっかけor風に煽られ転滑落、据えた三脚の重心を崩して転滑落…なんて事故も。
・三脚で根や芽を潰してしまう=貴重な植生を失ったケースが頻発しています、アナタの一枚より環境保全のほうが大事です、笑
丹沢や奥多摩は「低山だし」っていう油断=無知識から起きる遭難事故がほとんどです。
ニュースでも見ないよなんて想うかもしれませんが、頻発すぎて載らないって実情もあります。
山は「自助」が当りまえ、安全管理きちんとして楽しんでくださいね、笑
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