A 5 ou 6 heures du soir

第86話 建巳 act.13 another,side story「陽はまた昇る」
今日、退職届を出したこと。
その想いのせた食卓、香やわらかな湯気ごし母が訊いた。
「明日を考えるために、周は自分で退職届を出したかったの?」
「ん、自分に責任を持ちたくて、」
答えながら首すじ微かに熱くなる。
あらためて言葉にすると気恥ずかしい、けれど口ひらいた。
「警察官になったことも、退職することも、誰のせいでもなくて僕が選んだことだよ?明日もこれからも僕の責任だから、自分で出したんだ、」
誰かのせいじゃない、たとえ筋書きされた今日までだとしても。
父の死は他殺だった、祖父の死もそうかもしれない、それでも選択に微笑んだ。
「僕が警察官になったのは誰かが作ったレールだとしてもね、他の人の人生じゃなくて、僕が生きた時間でしょう?」
「…ええ、たしかに周太の時間ね、」
やわらかなアルト肯いて、母の瞳ゆっくり瞬く。
考えこんでいる仕草に周太はお盆さしだした。
「お味噌汁のおかわり、する?」
「あ…ええ、お願い、」
黒目がちの瞳が微笑んで、お椀さしだしてくれる手が白い。
もとから母は色白で、けれどこんなに白かったろうか?
―会社の健康診断はしてるだろうけど…気になる、ね、
考えこむ横顔、ゆるやかに波うつ黒髪きれいに艶めく。
変わらず豊かで、けれど髪かかる頬が細くなった。
気になりながら味噌汁よそい、お椀さしだした。
「ありがとう、お出汁ほんとにいい香ね、」
「ん、菫さんに頂いたの、」
微笑んでテーブルついて、黒目がちの瞳が見つめてくれる。
問いかけるような眼差しに口ひらいた。
「たくさんの人がね、僕に生きろって言ってくれたんだよ、」
生きろ、そう言ってもらえた。
死ぬ瞬間だけを見つめた場所ですら。
「岩田さんも言ってくれたんだ、」
この名前、きっと母には苦い。
それでも告げた真ん中で、黒目がちの瞳ゆっくり瞬いた。
「あのひとが?」
「あのひとだから、言ってくれたんだと思うよ、」
答えて、母の瞳ゆっくり伏せられる。
あの夜、そして十四年前を見つめているのだろう。
『雪崩の巣に送りこんで今度は拳銃ってどういうことよ!黙って死んだ馨さんを踏みにじってんじゃないよこの殺人鬼っ、』
あの夜、雪ふる病院の駐車場で母は叫んだ。
初めて聞いた怒鳴り声、そのまま白い手まっすぐ男の頬を叩いた。
あんなふうに怒りをぶつけた相手の名前に、アルトの声そっと言った。
「…そうね、あのひとだから言ったんだわ、」
やわらかな声、けれど微かにほろ苦い。
まだ赦せない想い燻る、そんな声に続けた。
「英二も生きろって言ってくれたんだ、雪崩に呑まれるときに、」
あの瞬間、あなたが叫んだ。
だから今日こうして決められる、想いそのまま言った。
「生きろって言ってくれたよ、だから英二にも遠慮しないで僕は僕自身で明日を選びたいんだ、」
遠慮、そう声にして鼓動ことんと響く。
こんな言葉にするほど歪だった、響いた自覚に母が訊いた。
「周は、英二くんに遠慮していたの?」
「ん、負い目って言うほうが正しいかもしれない、」
声にして、けれど呼吸おだやかに箸うごく。
ひとくち運んで、ほろ甘い醤油味ちゃんとわかる。
「どうして英二くんに負い目を感じるの?」
訊いてくれる母の声、かすかに低くなる。
どうして?問いかけるトーンに周太は微笑んだ。
「ほんとうに英二のこと想ってるのか、わからない僕だから、」
わからない、もう今は。
「わからないから、負い目を感じるの?」
「だって、ずるいでしょ?」
本音のまま答えながら箸運ぶ、さくり、天ぷら香ばしい。
油あまくほぐれて、ほろ苦い甘さに母が言った。
「周は逢いたくて、英二くんに逢いに行ったのでしょう?好きだから逢いに行ったんじゃないの?」
「逢いたいよ、今も、」
答えて、けれど変化そっと気付いている。
今も逢いたい、あなたに。
それは本音、けれど「明日」その先どうなるのだろう?
「逢いたいよ、でもね…それが本当に好きなのか、恋愛感情なのかわからないんだ、」
自分でもわからない「明日」が。
あいまいで、けれど無視できないまま声にした。
「英二に言われたんだ、僕が警察を辞めるなら英二に守られる必要もない、傍にいる必要はないって、」
もう周太は警察を辞めるんだ、もう俺に守られる必要もないだろ?
俺の傍にいる必要はないんだ、同性愛なんかに巻きこんで悪かった。
そんなふうに奥多摩の雪の森、あなたは僕に言った。
あのブナの梢ひろがる雪の底、だからこそ忘れられない。
「そばにいる必要ないって、同性愛なんかに巻きこんで悪かったって言われたんだ…なんかに、って、」
あんなふうに言われたこと、そっと心臓つぶれてゆく。
あれは優しさか気遣いか、本音なのか、分からないままでも事実は変わらない。
「英二が僕を守ってくれて傍にいてくれたのは事実だよ、だから僕が英二を好きになったと言われたら反論できない、それに、」
声にして心臓つぶれていく、わからない、けれど痛む。
この痛みはどこから来る?探すしながら押し出した。
「警察官で明日がない僕が英二を好きになったのも事実だから、だから警察官を辞めた僕が、同じ気持ちのままでいられるか解らない、」
明日がない、だからその一瞬あなたの隣にいたかった。
その一瞬に続く時間を考えられなかった自分、そのまま言った。
「そういう無責任な僕に、英二が大事なこと話してくれないのも当り前なんだ。明日を考えない僕を信頼できるわけないもの、」
不誠実だったのは、嘘つきだったのは、僕だ。
そうして今あなたへの想いすら解らない。
『ダイスキな恋人に再会しましたって幸せオーラ、なーんも見えないんだよね周太。ただただシンドソウに見えるんだけど?』
幼馴染に言われた言葉、あの真直ぐな瞳の声。
なにひとつ反論はない。
「それに美代さんとは僕ずっと植物や大学の話で、いっぱい未来の話してるんだ、だから美代さんもきちんと話してくれるんだと思う、」
あの女の子とは話している、明日のこと。
あの友人も同じだ。
「賢弥もね、大学で仲良くなった友だちなんだけど、一緒に研究しようって約束してるんだ、大事な未来を相談してるから信頼しあえてる、」
共同研究のパートナー、それは大事な未来の共犯者。
そんなふう積みあげた時間と信頼と、あなたは違いすぎてしまう。
「だけど英二としてる明日の話は北岳草の話だけなんだ、これも僕の気管支喘息だと叶うかわからないでしょう?」
明日の話、それを出来ないままでいる。
そうして気づいた想い決めた今を微笑んだ。
「だから最初から始めたいんだ、全部、」
なにも解らない、それでも始められる。
見つめる今と明日のはざま、黒目がちの瞳が微笑んだ。
「全部、明日から始めるの?」
「ん、」
肯いて、ほろ甘く辛く醤油が香る。
なつかしい記憶の香くゆる食卓、願いごと口にした。
「明日、大学の臨時職員の契約をお願いしてみます。働きながら大学院の受験勉強させてください、」
自分が選んだ場所、そこから全て始めたい。
そうして踏み出す想いに母が笑った。
「はい、やってみなさいな?勉強と仕事の両立は大変だろうけど、」
笑って、箸そっと持ち直してくれる。
温かな食事の席、感謝に箸とりながらも尋ねた。
「お母さんは英二の進路のこと、おばあさまから聞いてる?」
あのひとが選ぶはずだった道、その理由。
そこから始めたい明日に母が肯いた。
「おばさまのご主人が検察官だったことは聞いたわ、英二くんの司法試験のことも、」
首席合格、それが本来あなたの矜持だった。
だからこそ気づいた理由に口ひらいた。
「検察の理念って、お母さんは聞いたことある?」
「どんなの?」
やわらかなアルトが尋ねてくれる。
その問いに今日、読んだ一文そのままなぞった。
「自己の名誉や評価を目的として行動することを潔しとせず、時としてこれが傷つくことをもおそれない胆力が必要である。」
“検察の理念”
そのタイトルに綴られる文章は、あなたと似ている。
そうして肚に落ちていく記憶と時間に微笑んだ。
「英二そのままでしょう?こういう譲らない正義感から、僕のことも見ないふり出来なかったと思う…恋愛感情よりも、ね、」
なぜ、あなたは長野あの場所にいたのか?
あの雪崩の底まで救いに来てくれた、その理由はただ感情だけじゃない。
「正義感が強くて、真直ぐで手段も選ばないんだ、だから…僕を一番近くで守るために、僕と恋愛してくれたのかもしれない、」
だから僕が言うことも聞かない、恋愛は手段だから。
それくらい正義感が至上の人、だからこそ惹かれて見つめてしまった。
そうして辿りついた想いとご明日に微笑んだ。
「だから英二と始まるのは、明日からって思うんだ…正義感とは関係ないところで、ただの僕で、」
父のこと、警察のこと、何もないなら?
ただ自分だけなら、ただここで生きる自分だけなら何を想うだろう?
『ダイスキな恋人に再会しましたって幸せオーラ、なーんも見えないんだよね周太。ただただシンドソウに見えるんだけど?』
ただの自分は「シンドソウ」に見えるだろうか、あなたに会えたなら。
あの女の子に、あの友人に、恩師に、どんな自分が見えるのだろう?
それは誰もに、なにもかも全てに、どんな自分を見るだろう?
「ただの周太なのね、明日から、それとも今もかしら?」
やわらかなアルトが微笑んで、母の瞳に自分が映る。
ランプやわらかなオレンジの燈、ゆれる温もりに笑いかけた。
「ん、もう今からだね、」
※校正中
(to be continued)
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kenshi―周太24歳3月末

第86話 建巳 act.13 another,side story「陽はまた昇る」
今日、退職届を出したこと。
その想いのせた食卓、香やわらかな湯気ごし母が訊いた。
「明日を考えるために、周は自分で退職届を出したかったの?」
「ん、自分に責任を持ちたくて、」
答えながら首すじ微かに熱くなる。
あらためて言葉にすると気恥ずかしい、けれど口ひらいた。
「警察官になったことも、退職することも、誰のせいでもなくて僕が選んだことだよ?明日もこれからも僕の責任だから、自分で出したんだ、」
誰かのせいじゃない、たとえ筋書きされた今日までだとしても。
父の死は他殺だった、祖父の死もそうかもしれない、それでも選択に微笑んだ。
「僕が警察官になったのは誰かが作ったレールだとしてもね、他の人の人生じゃなくて、僕が生きた時間でしょう?」
「…ええ、たしかに周太の時間ね、」
やわらかなアルト肯いて、母の瞳ゆっくり瞬く。
考えこんでいる仕草に周太はお盆さしだした。
「お味噌汁のおかわり、する?」
「あ…ええ、お願い、」
黒目がちの瞳が微笑んで、お椀さしだしてくれる手が白い。
もとから母は色白で、けれどこんなに白かったろうか?
―会社の健康診断はしてるだろうけど…気になる、ね、
考えこむ横顔、ゆるやかに波うつ黒髪きれいに艶めく。
変わらず豊かで、けれど髪かかる頬が細くなった。
気になりながら味噌汁よそい、お椀さしだした。
「ありがとう、お出汁ほんとにいい香ね、」
「ん、菫さんに頂いたの、」
微笑んでテーブルついて、黒目がちの瞳が見つめてくれる。
問いかけるような眼差しに口ひらいた。
「たくさんの人がね、僕に生きろって言ってくれたんだよ、」
生きろ、そう言ってもらえた。
死ぬ瞬間だけを見つめた場所ですら。
「岩田さんも言ってくれたんだ、」
この名前、きっと母には苦い。
それでも告げた真ん中で、黒目がちの瞳ゆっくり瞬いた。
「あのひとが?」
「あのひとだから、言ってくれたんだと思うよ、」
答えて、母の瞳ゆっくり伏せられる。
あの夜、そして十四年前を見つめているのだろう。
『雪崩の巣に送りこんで今度は拳銃ってどういうことよ!黙って死んだ馨さんを踏みにじってんじゃないよこの殺人鬼っ、』
あの夜、雪ふる病院の駐車場で母は叫んだ。
初めて聞いた怒鳴り声、そのまま白い手まっすぐ男の頬を叩いた。
あんなふうに怒りをぶつけた相手の名前に、アルトの声そっと言った。
「…そうね、あのひとだから言ったんだわ、」
やわらかな声、けれど微かにほろ苦い。
まだ赦せない想い燻る、そんな声に続けた。
「英二も生きろって言ってくれたんだ、雪崩に呑まれるときに、」
あの瞬間、あなたが叫んだ。
だから今日こうして決められる、想いそのまま言った。
「生きろって言ってくれたよ、だから英二にも遠慮しないで僕は僕自身で明日を選びたいんだ、」
遠慮、そう声にして鼓動ことんと響く。
こんな言葉にするほど歪だった、響いた自覚に母が訊いた。
「周は、英二くんに遠慮していたの?」
「ん、負い目って言うほうが正しいかもしれない、」
声にして、けれど呼吸おだやかに箸うごく。
ひとくち運んで、ほろ甘い醤油味ちゃんとわかる。
「どうして英二くんに負い目を感じるの?」
訊いてくれる母の声、かすかに低くなる。
どうして?問いかけるトーンに周太は微笑んだ。
「ほんとうに英二のこと想ってるのか、わからない僕だから、」
わからない、もう今は。
「わからないから、負い目を感じるの?」
「だって、ずるいでしょ?」
本音のまま答えながら箸運ぶ、さくり、天ぷら香ばしい。
油あまくほぐれて、ほろ苦い甘さに母が言った。
「周は逢いたくて、英二くんに逢いに行ったのでしょう?好きだから逢いに行ったんじゃないの?」
「逢いたいよ、今も、」
答えて、けれど変化そっと気付いている。
今も逢いたい、あなたに。
それは本音、けれど「明日」その先どうなるのだろう?
「逢いたいよ、でもね…それが本当に好きなのか、恋愛感情なのかわからないんだ、」
自分でもわからない「明日」が。
あいまいで、けれど無視できないまま声にした。
「英二に言われたんだ、僕が警察を辞めるなら英二に守られる必要もない、傍にいる必要はないって、」
もう周太は警察を辞めるんだ、もう俺に守られる必要もないだろ?
俺の傍にいる必要はないんだ、同性愛なんかに巻きこんで悪かった。
そんなふうに奥多摩の雪の森、あなたは僕に言った。
あのブナの梢ひろがる雪の底、だからこそ忘れられない。
「そばにいる必要ないって、同性愛なんかに巻きこんで悪かったって言われたんだ…なんかに、って、」
あんなふうに言われたこと、そっと心臓つぶれてゆく。
あれは優しさか気遣いか、本音なのか、分からないままでも事実は変わらない。
「英二が僕を守ってくれて傍にいてくれたのは事実だよ、だから僕が英二を好きになったと言われたら反論できない、それに、」
声にして心臓つぶれていく、わからない、けれど痛む。
この痛みはどこから来る?探すしながら押し出した。
「警察官で明日がない僕が英二を好きになったのも事実だから、だから警察官を辞めた僕が、同じ気持ちのままでいられるか解らない、」
明日がない、だからその一瞬あなたの隣にいたかった。
その一瞬に続く時間を考えられなかった自分、そのまま言った。
「そういう無責任な僕に、英二が大事なこと話してくれないのも当り前なんだ。明日を考えない僕を信頼できるわけないもの、」
不誠実だったのは、嘘つきだったのは、僕だ。
そうして今あなたへの想いすら解らない。
『ダイスキな恋人に再会しましたって幸せオーラ、なーんも見えないんだよね周太。ただただシンドソウに見えるんだけど?』
幼馴染に言われた言葉、あの真直ぐな瞳の声。
なにひとつ反論はない。
「それに美代さんとは僕ずっと植物や大学の話で、いっぱい未来の話してるんだ、だから美代さんもきちんと話してくれるんだと思う、」
あの女の子とは話している、明日のこと。
あの友人も同じだ。
「賢弥もね、大学で仲良くなった友だちなんだけど、一緒に研究しようって約束してるんだ、大事な未来を相談してるから信頼しあえてる、」
共同研究のパートナー、それは大事な未来の共犯者。
そんなふう積みあげた時間と信頼と、あなたは違いすぎてしまう。
「だけど英二としてる明日の話は北岳草の話だけなんだ、これも僕の気管支喘息だと叶うかわからないでしょう?」
明日の話、それを出来ないままでいる。
そうして気づいた想い決めた今を微笑んだ。
「だから最初から始めたいんだ、全部、」
なにも解らない、それでも始められる。
見つめる今と明日のはざま、黒目がちの瞳が微笑んだ。
「全部、明日から始めるの?」
「ん、」
肯いて、ほろ甘く辛く醤油が香る。
なつかしい記憶の香くゆる食卓、願いごと口にした。
「明日、大学の臨時職員の契約をお願いしてみます。働きながら大学院の受験勉強させてください、」
自分が選んだ場所、そこから全て始めたい。
そうして踏み出す想いに母が笑った。
「はい、やってみなさいな?勉強と仕事の両立は大変だろうけど、」
笑って、箸そっと持ち直してくれる。
温かな食事の席、感謝に箸とりながらも尋ねた。
「お母さんは英二の進路のこと、おばあさまから聞いてる?」
あのひとが選ぶはずだった道、その理由。
そこから始めたい明日に母が肯いた。
「おばさまのご主人が検察官だったことは聞いたわ、英二くんの司法試験のことも、」
首席合格、それが本来あなたの矜持だった。
だからこそ気づいた理由に口ひらいた。
「検察の理念って、お母さんは聞いたことある?」
「どんなの?」
やわらかなアルトが尋ねてくれる。
その問いに今日、読んだ一文そのままなぞった。
「自己の名誉や評価を目的として行動することを潔しとせず、時としてこれが傷つくことをもおそれない胆力が必要である。」
“検察の理念”
そのタイトルに綴られる文章は、あなたと似ている。
そうして肚に落ちていく記憶と時間に微笑んだ。
「英二そのままでしょう?こういう譲らない正義感から、僕のことも見ないふり出来なかったと思う…恋愛感情よりも、ね、」
なぜ、あなたは長野あの場所にいたのか?
あの雪崩の底まで救いに来てくれた、その理由はただ感情だけじゃない。
「正義感が強くて、真直ぐで手段も選ばないんだ、だから…僕を一番近くで守るために、僕と恋愛してくれたのかもしれない、」
だから僕が言うことも聞かない、恋愛は手段だから。
それくらい正義感が至上の人、だからこそ惹かれて見つめてしまった。
そうして辿りついた想いとご明日に微笑んだ。
「だから英二と始まるのは、明日からって思うんだ…正義感とは関係ないところで、ただの僕で、」
父のこと、警察のこと、何もないなら?
ただ自分だけなら、ただここで生きる自分だけなら何を想うだろう?
『ダイスキな恋人に再会しましたって幸せオーラ、なーんも見えないんだよね周太。ただただシンドソウに見えるんだけど?』
ただの自分は「シンドソウ」に見えるだろうか、あなたに会えたなら。
あの女の子に、あの友人に、恩師に、どんな自分が見えるのだろう?
それは誰もに、なにもかも全てに、どんな自分を見るだろう?
「ただの周太なのね、明日から、それとも今もかしら?」
やわらかなアルトが微笑んで、母の瞳に自分が映る。
ランプやわらかなオレンジの燈、ゆれる温もりに笑いかけた。
「ん、もう今からだね、」
※校正中
(to be continued)
【引用詩文:Jean Cocteau「Cannes」】
第86話 建巳act.12← →第86話 建巳act.14
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著作権法より無断利用転載ほか禁じます
それでも現実の場所で、

追憶原野×William Wordsworth
Against the blowing wind. It was in truth
An ordinary sight, but I should need
Colours and words that are unknown to man
To paint the visionary dreariness
風に抗って。ほんとうに
ふつうの光景で、でも僕には必要だった
人が知らない絵具と言葉たちが
儚い寂寥感を描くのに

山行きたいなあ、っていう気分でコンナカンジの写真×ワーズワースを、笑
丹沢の夏秋はヤマビルひどいので登るのちょっとなー・で・近場の里山ちょっと歩く程度なココントコ週末。
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ウィリアム・ワーズワース『Spots of Time』×森

追憶原野×William Wordsworth
Against the blowing wind. It was in truth
An ordinary sight, but I should need
Colours and words that are unknown to man
To paint the visionary dreariness
風に抗って。ほんとうに
ふつうの光景で、でも僕には必要だった
人が知らない絵具と言葉たちが
儚い寂寥感を描くのに
【引用詩文:William Wordsworth『The Prelude Books XI,257-388 [Spots of Time]』より抜粋自訳】

撮影地:長野県霧ヶ峰2018.8
山行きたいなあ、っていう気分でコンナカンジの写真×ワーズワースを、笑
丹沢の夏秋はヤマビルひどいので登るのちょっとなー・で・近場の里山ちょっと歩く程度なココントコ週末。


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すすき、雲、銀色光芒、富士めぐる嶺の秋

ススキ=薄・芒って書きますが、光芒ってススキの穂波が光るカンジだなあと、笑
ここはススキ原がきれいな山なんですけど、一昨年あたりから富士山ねらいの迷惑カメラ愛好家が増えています。
山野の三脚使用=植生を痛める・撮影スポットの長時間占拠・迷惑駐車などなど、環境破壊や事故につながる状態です。
そういうこと自律しながら撮影する謙虚さが、山野の花も風も雨も凛ときれいに写し撮れるのではないでしょうか?
リアル山ずーーーーーっと登れていない→ナマりそうでマズイです。
緊急事態宣言出てないとは言っても×県境越えての外出自粛で近場の里山散歩・のち午後はおうち時間なココントコ週末、笑
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山岳点景:明神岳2017.9

ススキ=薄・芒って書きますが、光芒ってススキの穂波が光るカンジだなあと、笑
ここはススキ原がきれいな山なんですけど、一昨年あたりから富士山ねらいの迷惑カメラ愛好家が増えています。
山野の三脚使用=植生を痛める・撮影スポットの長時間占拠・迷惑駐車などなど、環境破壊や事故につながる状態です。
そういうこと自律しながら撮影する謙虚さが、山野の花も風も雨も凛ときれいに写し撮れるのではないでしょうか?
【撮影地:山梨県2017.9】
リアル山ずーーーーーっと登れていない→ナマりそうでマズイです。
緊急事態宣言出てないとは言っても×県境越えての外出自粛で近場の里山散歩・のち午後はおうち時間なココントコ週末、笑


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