はじめに
平成十九年度に共学校に移行して、初めての男女あわせての卒業生を送り出すことになりました。感無量の思いであります。
このよき日に、来賓ならびに保護者の皆様をお迎えし、ここに千葉県立銚子高等学校第五十六回卒業証書授与式を挙行することができ大変喜ばしく感じております。またその喜びを一九三名の卒業生の皆さんと共に分かち合いたいと思います。
来賓ならびに保護者の皆様にはご多忙な中にもかかわらずご臨席をたまわりありがとうございます。壇上からではありますが、厚く御礼申し上げます。
保護者への挨拶
保護者の皆様、本日はお子様のご卒業まことにおめでとうございます。この三カ年の間、成長していく姿を楽しみに、こころあたたかく育まれ、本日の卒業式を迎えられたこと、お喜びは如何ばかりかと拝察申し上げます。そして、今日までの本校教育へのご理解とご協力に対しまして重ね重ね御礼申し上げます。
学校の思い出
さて、卒業生の皆さん、今日までの努力、精進、頑張りに心から拍手を送ります。ここに集う一九三名の一人一人がしっかりと積み上げてきた集大成が今日の卒業式であります。
本校は、明治四十四年(1911)四月十日に、海上郡立銚子実科高等女学校として誕生いたしました。明治と大正時代の境目であった時代でもありました。また、この数年前から現在の有力私立大学が、続々と大学に昇格していった時代でもあります。
以来百年の歴史を刻み総計で二万七千人を超える幾多の俊秀を輩出して参りました。この同窓生の力は、まことに大きなものであります。どうか、県立銚子同窓の誇りと絆を大事にしていただきたいと思います。
そして、これまで見守っていただいた保護者、指導してくださった先生方、同窓会、PTA等関係するすべての方々に、感謝の気持ちを忘れることなく、これからの人生を雄々しく生きていってください。
我と汝の思想
さて、今まで卒業生の皆さんには、多くの機会をとらえて、講話をしてまいりました。原稿も印刷してお配りしました。これが最後となりますが、はじめに我と汝の思想ということから入ります。ブーバーというドイツの哲学者の著作にも「我と汝」という著書があります。相当難解な文章ですけれども、一言で言って、対話の精神ということでもあると理解しています。
なぜこれを言いたいのかといいますと、あまりにも寂しい現実があると感じるからであります。対話が、自分と相手だけになっているからです。自分と自分との対話も十分重ねていただきたい。内面性をもっと重視していただきたい。
いわゆるキレるとか、思いという言葉が流行したり、思いつきの瞬間瞬間でご都合主義で生きているのではないかと感じるからであります。
きちんとした、まともな議論ができるように、美しい言葉を使い、考えることです。それが対話を可能とします。対話は論理的思考の基礎にもなります。どうか、瞬間の激情におぼれることなく、一貫して論理的思考を求めていってください。それが、いい人生の基礎ともなります。
社会的役割について
また、皆さんは、学校という時間・空間の世界の中で「役割」を学習してきたわけです。
発達教育学で言うと、人間は誰しも、「役割」を背負って生きて参ります。幼いときには、「重要な他者」である保護者の方から愛を受け、人として生きるための役割を学び、幼少年時代には共に時代を過ごしたギャングエイジと言われる仲間たちから役割を学び、育ってきたわけであります。役割を獲得し、役割を学習し、役割の実現を図ってきたわけです。
社会的役割を果たしていくことが、発達するということであり、成長するということであります。どうかこのことを肝に銘じてください。
まだ考えられないと思いますが、高齢になっても、人間は役割の中で生き、社会的発達をしていかなくてはなりません。社会的発達が完了したのではありません。まだまだ伸びるのです。可能性を追求していかなくてはなりません。わたくしも皆さんもです。家族を持ったから、成人したからといって、完全な人になったのではありません。周囲の方々に学び、謙虚に学習をしていってください。自己満足の世界に浸っていてはなりません。
まだまだです。まだまだこれからです。十八歳ですべてが決まったわけではありません。これからも成長していけるのです。自分の役割を自覚して、おおいに世の中のために活躍してください。
独自性を発揮
特に、皆さんの学年は共学化の初年度の学年でもありました。この厳しい現実の中で、実に工夫された高校生活を送られました。
すべてが新しく、学びのシステムを構築して、非常に優れた学校生活の送り方を考え、三年生の先生方を中心として、実践・実践・また実践で過ごされました。
三年生の先生方に、心から感謝申し上げます。これほどの教育的な営みをなされたこと、まことにそれは教育的叡智というべきものであります。誇るべきことであります。次年度以降も継続して実践させていただきます。ほんとうにありがとうございました。
近隣にない大きな特色を持った高校になったと自負しております。
皆さんは、先生方の姿を通して、工夫すること、改善をすることというのがどういうことであったのかを身をもって知ることができたのではないでしょうか。
更に学べ
これからの皆さんは、高校という世界から、大学や短大、専門学校、あるいは会社・自営等の職業生活の中で、社会的な役割を持って、活躍しなければなりません。それは「広くて複雑」な世界です。高校までの単線型世界ではありません。
ですから、これまでの知・徳・体の活動で得た財産をさらに伸ばすことであります。卒業というのは、これからも学ぶことのスタートでもあります。
世の中には何があるかわかりません。いつもいつも順調にいくとも限りません。分析も必要ですし、対応を考えることもしばしば出てきます。
世の中に出てからが、むしろ長い長い勉強生活のはじまりであります。
傲慢であってはなりません。これでいいという自己満足はありません。
あらゆる世界が勉強の連続であります。トライしてください。あくなき挑戦をしていってください。
最後に
本当に皆よく頑張りました。
よい生徒ばかりでした。
大きな大きな財産を残してくださいました。
ありがとう。
本当にありがとう。
立派に成長したあなた方をこのようにして立派に送り出すことができました。誇りに思います。皆さん、健康に気をつけて頑張ってください。
名残は尽きませんが、以上をもちまして卒業式の式辞といたします。
平成二十二年三月五日
千葉県立銚子高等学校長
外 山 日出男
平成十九年度に共学校に移行して、初めての男女あわせての卒業生を送り出すことになりました。感無量の思いであります。
このよき日に、来賓ならびに保護者の皆様をお迎えし、ここに千葉県立銚子高等学校第五十六回卒業証書授与式を挙行することができ大変喜ばしく感じております。またその喜びを一九三名の卒業生の皆さんと共に分かち合いたいと思います。
来賓ならびに保護者の皆様にはご多忙な中にもかかわらずご臨席をたまわりありがとうございます。壇上からではありますが、厚く御礼申し上げます。
保護者への挨拶
保護者の皆様、本日はお子様のご卒業まことにおめでとうございます。この三カ年の間、成長していく姿を楽しみに、こころあたたかく育まれ、本日の卒業式を迎えられたこと、お喜びは如何ばかりかと拝察申し上げます。そして、今日までの本校教育へのご理解とご協力に対しまして重ね重ね御礼申し上げます。
学校の思い出
さて、卒業生の皆さん、今日までの努力、精進、頑張りに心から拍手を送ります。ここに集う一九三名の一人一人がしっかりと積み上げてきた集大成が今日の卒業式であります。
本校は、明治四十四年(1911)四月十日に、海上郡立銚子実科高等女学校として誕生いたしました。明治と大正時代の境目であった時代でもありました。また、この数年前から現在の有力私立大学が、続々と大学に昇格していった時代でもあります。
以来百年の歴史を刻み総計で二万七千人を超える幾多の俊秀を輩出して参りました。この同窓生の力は、まことに大きなものであります。どうか、県立銚子同窓の誇りと絆を大事にしていただきたいと思います。
そして、これまで見守っていただいた保護者、指導してくださった先生方、同窓会、PTA等関係するすべての方々に、感謝の気持ちを忘れることなく、これからの人生を雄々しく生きていってください。
我と汝の思想
さて、今まで卒業生の皆さんには、多くの機会をとらえて、講話をしてまいりました。原稿も印刷してお配りしました。これが最後となりますが、はじめに我と汝の思想ということから入ります。ブーバーというドイツの哲学者の著作にも「我と汝」という著書があります。相当難解な文章ですけれども、一言で言って、対話の精神ということでもあると理解しています。
なぜこれを言いたいのかといいますと、あまりにも寂しい現実があると感じるからであります。対話が、自分と相手だけになっているからです。自分と自分との対話も十分重ねていただきたい。内面性をもっと重視していただきたい。
いわゆるキレるとか、思いという言葉が流行したり、思いつきの瞬間瞬間でご都合主義で生きているのではないかと感じるからであります。
きちんとした、まともな議論ができるように、美しい言葉を使い、考えることです。それが対話を可能とします。対話は論理的思考の基礎にもなります。どうか、瞬間の激情におぼれることなく、一貫して論理的思考を求めていってください。それが、いい人生の基礎ともなります。
社会的役割について
また、皆さんは、学校という時間・空間の世界の中で「役割」を学習してきたわけです。
発達教育学で言うと、人間は誰しも、「役割」を背負って生きて参ります。幼いときには、「重要な他者」である保護者の方から愛を受け、人として生きるための役割を学び、幼少年時代には共に時代を過ごしたギャングエイジと言われる仲間たちから役割を学び、育ってきたわけであります。役割を獲得し、役割を学習し、役割の実現を図ってきたわけです。
社会的役割を果たしていくことが、発達するということであり、成長するということであります。どうかこのことを肝に銘じてください。
まだ考えられないと思いますが、高齢になっても、人間は役割の中で生き、社会的発達をしていかなくてはなりません。社会的発達が完了したのではありません。まだまだ伸びるのです。可能性を追求していかなくてはなりません。わたくしも皆さんもです。家族を持ったから、成人したからといって、完全な人になったのではありません。周囲の方々に学び、謙虚に学習をしていってください。自己満足の世界に浸っていてはなりません。
まだまだです。まだまだこれからです。十八歳ですべてが決まったわけではありません。これからも成長していけるのです。自分の役割を自覚して、おおいに世の中のために活躍してください。
独自性を発揮
特に、皆さんの学年は共学化の初年度の学年でもありました。この厳しい現実の中で、実に工夫された高校生活を送られました。
すべてが新しく、学びのシステムを構築して、非常に優れた学校生活の送り方を考え、三年生の先生方を中心として、実践・実践・また実践で過ごされました。
三年生の先生方に、心から感謝申し上げます。これほどの教育的な営みをなされたこと、まことにそれは教育的叡智というべきものであります。誇るべきことであります。次年度以降も継続して実践させていただきます。ほんとうにありがとうございました。
近隣にない大きな特色を持った高校になったと自負しております。
皆さんは、先生方の姿を通して、工夫すること、改善をすることというのがどういうことであったのかを身をもって知ることができたのではないでしょうか。
更に学べ
これからの皆さんは、高校という世界から、大学や短大、専門学校、あるいは会社・自営等の職業生活の中で、社会的な役割を持って、活躍しなければなりません。それは「広くて複雑」な世界です。高校までの単線型世界ではありません。
ですから、これまでの知・徳・体の活動で得た財産をさらに伸ばすことであります。卒業というのは、これからも学ぶことのスタートでもあります。
世の中には何があるかわかりません。いつもいつも順調にいくとも限りません。分析も必要ですし、対応を考えることもしばしば出てきます。
世の中に出てからが、むしろ長い長い勉強生活のはじまりであります。
傲慢であってはなりません。これでいいという自己満足はありません。
あらゆる世界が勉強の連続であります。トライしてください。あくなき挑戦をしていってください。
最後に
本当に皆よく頑張りました。
よい生徒ばかりでした。
大きな大きな財産を残してくださいました。
ありがとう。
本当にありがとう。
立派に成長したあなた方をこのようにして立派に送り出すことができました。誇りに思います。皆さん、健康に気をつけて頑張ってください。
名残は尽きませんが、以上をもちまして卒業式の式辞といたします。
平成二十二年三月五日
千葉県立銚子高等学校長
外 山 日出男