下町中通りの中央突き当りに銭湯「子宝湯」があります。

足立区千住元町に1929(昭和4)年に建てられたお風呂屋さんで、これぞ、お江戸の銭湯の「殿堂」という感じの堂々たるお風呂屋さんです。
入母屋造りの大屋根の下に唐破風の玄関が張り出し、たくさんの彫刻で飾られています。賑やかな装飾と寺社建築のような外観が、関東大震災後に建てられた東京の銭湯建築の特質をよく表わしています。

子宝湯は石川県七尾市出身の小林東右衛門という人が、東京に5軒の銭湯を経営した中の一軒で、気に入った大工を石川県から連れてきて、大金をかけて建てさせたものです。戦後に小林氏から平岡家が買い取り、1988年11月に廃業するまで営業を続けていました。

入口を入ると、中央に「高砂」の翁と嫗のタイル画があり、右が女湯、左が男湯に続くガラス戸です。

男女の脱衣場の真ん中に番台があります。番台の肘掛にまで彫刻がほどこされています。

昭和28年の入浴料金は大人15円です。

脱衣場には乱れ籠が置かれています。改修されてからはロッカー式になりましたが、それ以前のものを再現しています。

脱衣場の天井は高く、折り上げ格天井になっています。


女脱衣場と男脱衣場の間には企業の宣伝板が上げられています。

浴室正面の壁には男湯・女湯両方から見える大きな富士山のペンキ絵が描いて、富士山の絵の下に男女それぞれ3層づつ浴槽が並んでいます。
浴室の天井も二段の窓があり、とても高くなっています。

男湯の壁には「義経弁慶の五条大橋の風景」「那須与一」のタイル画、

女湯の壁には「猿蟹合戦」「雀のお宿」のタイル画があります。
いずれも九谷のタイル絵師、石田庄太郎の作品です。

脱衣場の外回りには、廊下がめぐらされ、ガラス戸と濡れ縁の外に庭園があります。
東京の銭湯の殿堂、今も営業していたら一風呂浴びに行きたかったものです。