最近、ソール・ライターという写真家を知って、写真集も購入してその世界をたんのうした。写真のおもしろさが少しわかってくると、こんどは世界には他にどんなすてきな写真家がいるのだろうかと興味がわいてきて調べてみた。そうしたら、20世紀を代表する写真家にアンリ・カルチエ-ブレッソンという人がいることがわかり、いろいろと物色した結果、Europeans(ヨーロッパ人)という写真集を丸善の洋書コーナーで見つけて購入したのである。ハードカバーがBulfinch社から、ペーパーバックがThames & Hudson Ltd社から出ているが、どちらも232ページで、縦約27cmなので、表紙のデザインは違うが内容はほぼ同じだと思われる。私が購入したのはペーパーバックのほうであるが、紙は上質で写真は鮮明であった。
第二次世界大戦前後(1932~1975年)のヨーロッパ人を被写体としたモノクロの写真集であるが、明らかな戦争の風景は入っていない。シュルレアリズムに影響を受けているということで、写真の構図には、ある種意図的で遠近感のある空間が構成されている。そこに登場する人物はなんらかの世界のあるいは人生の生き生きとしたドラマを表現している。別のところで読んだことだが、ブレッソンは登場人物にわざとポーズを取らせたのではなく、ずっと辛抱強く待ち続けてシャッターチャンスを狙って撮っていたのだという。
撮影された国を掲載順に並べ、それぞれの国の写真から受けた印象を記してみた。フランス(ゴダール映画のようにおしゃれな風景と、自然と人生を楽しむ人々)、ポルトガル(豊かな田舎)、スペイン(シュール)、イタリア(カトリック)、スイス(自然)、ユーゴスラビア(田舎)、ギリシャ(前近代)、トルコ(異国)、ルーマニア(美人、牧歌的)、ハンガリー(北国)、オーストリア(高地)、ドイツ(戦争の痕跡、東西分裂)、ベルギー(とぼけた男)、オランダ(水の土地)、ポーランド(カトリック)、ソビエト連邦(逞しく生きる男女たち)、スウェーデン(海)、イギリス(群衆、紳士淑女)、アイルランド(カトリック、荒野)。
フランスの人たちは、戦前のけっして平和ではなかったであろう時代でも、川べりにタープを張って、ワインやパンを持ち込んでピクニックをしていて、その表情のはつらつさに生きることの豊かさを感じさせる。その時代、その場所の、匂いや人々の息吹を感じるような写真たちであった。
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