かつて藤田俊哉がホーム・グラウンドとしていたユトレヒトで日本代表は,サッカーがボールのポゼッションを争う競技ではなく,ゴールの数を競うゲームだということを思い出させてくれた。
ゴールに向かって飛び出す選手と,スペースを探しては縦に繰り出されるパス,そして枠を目掛けて文字通りボールを「蹴飛ばす」ようなシュート。そのどれもが,4日前のオランダ戦では全く感じることが出来なかった「前へ」そして「ゴールへ」という強い意志が伝わってくるようなスピードに溢れていた。さぞかし高かったであろう遠征費用に見合う意識改革を,選手に促すターニングポイントになった可能性があるかもしれない試合だった。
マラソン競技を得意としてきた日本だからと言って,どう贔屓目に見ても90分持つ訳がないと思われる「カミカゼ・プレス」に対する疑問,機能しなかった本田に対するバッシング,そしてフィニッシュに入るべきエリアでシュートを打とうとしない攻撃意識への批判。オランダ戦後にマスコミを席巻した日本代表に対する意見・提言は,主にこの3つに分類されると思う。
多かれ少なかれ,私もこれらの見方には与せざるを得なかったし,それがこの4日間でどの程度改善されるのかが,一敗した後の2戦目という,W杯本番を見据えたシミュレーションとして位置付けられたガーナ戦の意義だと思っていた。
そして日本代表はそんな試練に対して,いとも簡単に,本当にあっさりと回答を出してしまった。
最初の課題,プレスの持久力については,ガーナのプレッシング・ゾーンが極端に高い上に,身体能力も遙かに上回っていたことから,オランダ戦のように相手ボールを囲んで奪取するという攻撃的プレスが全く効かず,自然と一歩下がったやや守備的なプレスしかかけられなかったから,という消極的理由によって,結果的に後半まで保った,という印象を受けた。予想通り,3点目のアシストとなったムンタリのプレーのように,中盤で相手を自由にさせたことに拠る怪我もあったが,後半30分以降に一気呵成に攻め込むだけの体力を温存できたのは大きな収穫だろう。
三番目の課題,シュートの意識という点については,随所で大幅な改善が見られた。中村俊輔のミドルを筆頭に,サイドからのクロスと同じくらい相手CBの裏を突くパスが通り,前半の中村憲剛の凡ミスに代表される(あれはないだろう!)そこからのシュートも数多く見られた。特にオランダ戦と異なり,交替で入った稲本と玉田の明らかに前掛かりのプレーは,2点のビハインドをもろともしない「勇気」を,ピッチにいる選手達に与えたように見えた。左サイドで繰り返された長友,玉田,中村憲剛らによるパス交換は,洗練されたガーナの中盤に決してひけを取らなかったと言って良いだろう。
対して,このゲームで明らかになった心配は,巷では磐石と言われている2人のCBだ。2点目のハイボールに対して,あっさりとギヤンに身体を入れ替えられた中澤の鈍い反応,都築にファインプレーにどうにか救われた闘莉王の軽いマークは,共に大きな心配事だ。怪我の状態は分からないが,岩政を使ってみて欲しかった。
おっと,忘れていた。2番目の課題のキング本田はどうだったか。結論から言うと,けなげに岡田ジャパンの一員として機能すべく努力しているようだった。守備もやろうという姿勢は窺えたし,数的優位を作れなかった右サイドに位置したこともあり,無理な突破は控えて繋ぐことに徹した甲斐あって,終盤には徐々にボールも集まるようになってきていたように感じた。俊輔との対決を過度に煽るマスコミに踊らされず,ゆっくり馴染んで,徐々に胸の角度を上げていけば良いのだ。
それにしても代表の試合でこんなに叫んだのはいつ以来か。エシアンの驚異的な能力と技術。ドイツ大会ブラジル戦でも見せた玉田ゾーンからのサイドネットを抉るシュート。ジョホールバルの中田=城のコンビを彷彿とさせた,稲本=岡崎によるピンポイントクロスからのヘディング。そして稲本の見事な決勝ゴール。人間は4日あれば変われるのだ。
開会まであと275日。この感触を忘れずに抱いて,いざ南アフリカへ!って締めはまだちょっと早いか?
ゴールに向かって飛び出す選手と,スペースを探しては縦に繰り出されるパス,そして枠を目掛けて文字通りボールを「蹴飛ばす」ようなシュート。そのどれもが,4日前のオランダ戦では全く感じることが出来なかった「前へ」そして「ゴールへ」という強い意志が伝わってくるようなスピードに溢れていた。さぞかし高かったであろう遠征費用に見合う意識改革を,選手に促すターニングポイントになった可能性があるかもしれない試合だった。
マラソン競技を得意としてきた日本だからと言って,どう贔屓目に見ても90分持つ訳がないと思われる「カミカゼ・プレス」に対する疑問,機能しなかった本田に対するバッシング,そしてフィニッシュに入るべきエリアでシュートを打とうとしない攻撃意識への批判。オランダ戦後にマスコミを席巻した日本代表に対する意見・提言は,主にこの3つに分類されると思う。
多かれ少なかれ,私もこれらの見方には与せざるを得なかったし,それがこの4日間でどの程度改善されるのかが,一敗した後の2戦目という,W杯本番を見据えたシミュレーションとして位置付けられたガーナ戦の意義だと思っていた。
そして日本代表はそんな試練に対して,いとも簡単に,本当にあっさりと回答を出してしまった。
最初の課題,プレスの持久力については,ガーナのプレッシング・ゾーンが極端に高い上に,身体能力も遙かに上回っていたことから,オランダ戦のように相手ボールを囲んで奪取するという攻撃的プレスが全く効かず,自然と一歩下がったやや守備的なプレスしかかけられなかったから,という消極的理由によって,結果的に後半まで保った,という印象を受けた。予想通り,3点目のアシストとなったムンタリのプレーのように,中盤で相手を自由にさせたことに拠る怪我もあったが,後半30分以降に一気呵成に攻め込むだけの体力を温存できたのは大きな収穫だろう。
三番目の課題,シュートの意識という点については,随所で大幅な改善が見られた。中村俊輔のミドルを筆頭に,サイドからのクロスと同じくらい相手CBの裏を突くパスが通り,前半の中村憲剛の凡ミスに代表される(あれはないだろう!)そこからのシュートも数多く見られた。特にオランダ戦と異なり,交替で入った稲本と玉田の明らかに前掛かりのプレーは,2点のビハインドをもろともしない「勇気」を,ピッチにいる選手達に与えたように見えた。左サイドで繰り返された長友,玉田,中村憲剛らによるパス交換は,洗練されたガーナの中盤に決してひけを取らなかったと言って良いだろう。
対して,このゲームで明らかになった心配は,巷では磐石と言われている2人のCBだ。2点目のハイボールに対して,あっさりとギヤンに身体を入れ替えられた中澤の鈍い反応,都築にファインプレーにどうにか救われた闘莉王の軽いマークは,共に大きな心配事だ。怪我の状態は分からないが,岩政を使ってみて欲しかった。
おっと,忘れていた。2番目の課題のキング本田はどうだったか。結論から言うと,けなげに岡田ジャパンの一員として機能すべく努力しているようだった。守備もやろうという姿勢は窺えたし,数的優位を作れなかった右サイドに位置したこともあり,無理な突破は控えて繋ぐことに徹した甲斐あって,終盤には徐々にボールも集まるようになってきていたように感じた。俊輔との対決を過度に煽るマスコミに踊らされず,ゆっくり馴染んで,徐々に胸の角度を上げていけば良いのだ。
それにしても代表の試合でこんなに叫んだのはいつ以来か。エシアンの驚異的な能力と技術。ドイツ大会ブラジル戦でも見せた玉田ゾーンからのサイドネットを抉るシュート。ジョホールバルの中田=城のコンビを彷彿とさせた,稲本=岡崎によるピンポイントクロスからのヘディング。そして稲本の見事な決勝ゴール。人間は4日あれば変われるのだ。
開会まであと275日。この感触を忘れずに抱いて,いざ南アフリカへ!って締めはまだちょっと早いか?