子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2012年TVドラマ春シーズン・レビューNO.2:「ATARU」「鍵のかかった部屋」

2012年05月09日 23時24分03秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
SMAPと言えば,嵐や関ジャニ∞,キスマイと言った新旧の人気グループを多く抱えるジャニーズ事務所にあって,現在も中核グループとして君臨している存在であることは間違いない。だが40代にさしかかろうとしているメンバー一人一人を見ると,いずれも難しい場所に立っていることもまた疑いのない事実だろう。
途切れなくTVドラマへの出演が続いてはいるが,最早その「顔」だけで確実に数字が取れるメンバーがいなくなりつあることは,木村拓哉の「南極大陸」の結果を見るまでもなく明らかだ。

それに関しては,SMAPとしての活動歴やそのメンバーとして培って来たキャラクターが強くなり過ぎたが故に,視聴者にとっては,個人の資質や演技力以前の問題として,「SMAP」のメンバーであるという先入観が負の「くびき」として機能してしまっていることが大きいように思う。
皮肉なことだが,ここ数年の彼らの個人活動の中で最も評価が高かったのは,稲垣吾郎が既に確立された彼のキャラクターを逆手に取って極悪人を演じた「十三人の刺客」である,という意見に異を唱える人は少ない筈だ。

今年40歳になる中居正広が「20代後半から30代前半」のサヴァン症候群患者に扮したTBS「ATARU」もまた,「SMAPメンバー活用作戦」として見るならば,残念ながら失敗例のひとつとして数えられることは間違いないだろう。

主人公「(自称)チョコザイ」の生い立ちの謎がこれみよがしにひけらかされる幕開けもわざとらしかったが,何より主人公と中居のキャラクターとの(年齢も含めた)親和性のなさは,痛々しい程だ。チョコザイが途中で呟く「アップデート」や「ミッション アクセプテッド」だのといった,必然性のない英語の台詞が空しく響くさまは,ご都合主義の安直な展開や特殊効果の安っぽさ,行き当たりばったりにしか見えない画面処理と共に,観る気を失わせるパワーに満ち満ちている。
「ドラマのTBS」よ,何処に行く?状態に陥っている,と言わざるを得ない出来だ。

そんな厳しい言葉を書き連ねたくなるのは,同じジャニーズ所属タレントの大野智が月9に初挑戦した「鍵のかかった部屋」が,大野のキャラクターを巧みに活かして,エキセントリックな主人公の普遍化という難しい作業に成功しているからだ。

大手警備会社に勤める鍵=密室トリックマニアの社員,というどこにも存在しそうにないキャラクターを立体化し,血肉を与えた大野の仏頂面は,佐藤浩市扮するエリート弁護士のオーバーアクションと,見事なボケVS突っ込みコンビを形成している。
大野が詰めている研究室らしき地下室の美術,国仲涼子化しつつある戸田恵梨香の天然キャラ,そしてハタと膝を打つ程ではないにしろ,物語に決着を付けられるくらいにはそこそこ「なるほど」と唸らせる謎解きと,視聴者が月9に求める様々な要素のうち,恋愛を除くものは潤沢に揃っているという印象だ。

ドラマとしての評価では既に大差が付いてしまったようだが,視聴率だけを見ればこれまでのところ平均で「ATARU」15.76%,「鍵のかかった部屋」16.31%と,数字的にはかなり拮抗した,ハイレヴェルの戦いになっている。しかもどちらも傑作「リーガル・ハイ」の11.97%を大きく上回っているところが,視聴率と言う魔物の面白いところだ。負けるな,古美門研介=堺雅人!


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