子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2012年TVドラマ秋シーズン・レビューNO.1:「ゴーイング マイ ホーム」

2012年11月13日 23時47分33秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
是枝裕和が演出を手掛けることで話題を呼んでいるドラマ「ゴーイング マイ ホーム」だが,数字を見る限り本当に「話題」になっていたのかどうか,どうにも覚束ない展開になってきた。「山口智子の復帰」というもうひとつのフックもあってか,第1回は13.0%という正に「話題のドラマ」レヴェルの数字を叩き出したが,その後がいけない。第2回で早くも一桁に突入したと思ったら,その後も数字は回復せず,最新の第4回は7.7%というところまで来てしまった。
だが心配は要らない。本作は,テレビ東京の「鈴木先生」を筆頭格として最近頻発している「低視聴率なのに内容は良質」ドラマ群の仲間入りをする資格は充分に持ち得ている。さすが「テレビマン・ユニオン」出身のシネアスト是枝監督の仕事だ。

何よりもフォーカスがピタリと決まった撮影がもたらす,深みのある画面が素晴らしい。前クール日本テレビ「トッカン」の,焦点を絞って深度を自在に操った画面づくりも実に魅力的だったが,デジタル時代の最高度の技術を駆使したと思しき画面は,ロングショットを多用した新鮮な構図と相まって,「絵で話を語る」というレヴェルに達している。
主役の阿部寛は,そんな画面の空気をしっかりと咀嚼して,いつも以上に「動き過ぎない」演技を心懸けているように見える。その辺の勘の良さはさすがだ。

連続テレビ・ドラマの特徴を活かしているのは,物語のペースの方だろう。登場人物たちが探し続ける小人の「クーナ」は,決して何らかのテーマになり得るものではなく,あくまで物語を動かすための小道具(≒マクガフィン)に留まるものと思われるが,知らぬうちに彼らに引っ張られて行く登場人物の心模様をゆっくりと描く贅沢を,是枝監督は楽しんでいるに違いない。

唯一残念なのは「歩いても 歩いても」での樹木希林を凌ぐ面白さを醸し出している,阿部の母親役吉行和子の出番がやや少ないことか。同作でも阿部寛の姉役で出演していたYOUを含めた3人の掛け合いが「ホームドラマの新しい形を開く」などという論陣を張る気は毛頭ないが,ゴンチチの浮遊感溢れるギターの調べに乗って好き勝手言い合う家族の姿は,家族内猟奇殺人事件が大々的に報じられている今こそ,観られるべきものかもしれない。今クールの収穫だ。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。