次々と新作が制作されるMARVEL社コミックの映画化作品だが,本作も日本で絶大な人気を誇るベネディクト・カンバーバッチの主演ということもあってか,公開初週から若者の人気を集めていたようだ。札幌での公開最終日となる10日の最終回も,観客席は6割程度埋まっていた。音楽界と同様に関心がどんどんドメスティックなものに集中する傾向にある興行界において,同シリーズの作品が常に一定の人気を保っているというのは,数字以上に相当に凄いことだと感じる。
あいにく当方は,MARVELとの相性は決して良いとは言えず,劇場で観た本数といえば全部合わせても両手で足りるという,ほとんどアメコミ≒マーヴェル素人だ。だが本作に関してはクリストファー・ノーランの「インセプション」の映像を更に進化させたような,都会のビル群が機械仕掛けで動き出すシークエンスが何度もテレビ・スポットで流されているのを観るうちに,ひょっとすると単なる未来派アクションを越えた映像革命が繰り広げられているのかもしれないという懸念に駆られ,公開終了ぎりぎりで劇場に駆け込んだ。
しかし結果は残念ながら,これまでの相性を覆すような「悩めるヒーローの対決もの」を越える新機軸を打ち出した作品とはなっていなかった。
スキンヘッドになったティルダ・スウィントンがヒーローのサポート役として出演しているだけに,ドラマとしての深みもあるのかもしれないと若干期待したのだが,相変わらずの年齢・国籍不詳キャラクター(男性版だとベン・キングズレーか)は活きているものの,物語を進める駆動力にはなっていない。
それよりも致命的だったのは,CMで目にした偏差値高めの背景映像が,物語を語る上でも,新しいアクションを生み出す原動力としても,機能せず,単なる虚仮威しの書き割りにしかなっていない点だった。
MARVEL作品が歴史物からSFまであらゆる設定のコミックの実写化の経験を積み重ねてきたことによって,アニメーション・スタジオのCG技術の発展が促されてきたのは事実だろう。だがいつのまにかその最新の成果は,それを必要とした物語自体を追い越してしまったようで,本作でも印象に残るのは,高いレヴェルに到達した映像技術をドラマとして活かすことが出来ない貧弱なプロダクションの方だ。
エンド・クレジットの後の映像で,観客に続編の告知がなされるのだが,どう見ても好評による各方面からの手術のオファーというよりも,失敗したオペの再手術としか思えなかった。カンバーバッチさん,どうか医療過誤で訴えられないようにね。
★★
(★★★★★が最高)
あいにく当方は,MARVELとの相性は決して良いとは言えず,劇場で観た本数といえば全部合わせても両手で足りるという,ほとんどアメコミ≒マーヴェル素人だ。だが本作に関してはクリストファー・ノーランの「インセプション」の映像を更に進化させたような,都会のビル群が機械仕掛けで動き出すシークエンスが何度もテレビ・スポットで流されているのを観るうちに,ひょっとすると単なる未来派アクションを越えた映像革命が繰り広げられているのかもしれないという懸念に駆られ,公開終了ぎりぎりで劇場に駆け込んだ。
しかし結果は残念ながら,これまでの相性を覆すような「悩めるヒーローの対決もの」を越える新機軸を打ち出した作品とはなっていなかった。
スキンヘッドになったティルダ・スウィントンがヒーローのサポート役として出演しているだけに,ドラマとしての深みもあるのかもしれないと若干期待したのだが,相変わらずの年齢・国籍不詳キャラクター(男性版だとベン・キングズレーか)は活きているものの,物語を進める駆動力にはなっていない。
それよりも致命的だったのは,CMで目にした偏差値高めの背景映像が,物語を語る上でも,新しいアクションを生み出す原動力としても,機能せず,単なる虚仮威しの書き割りにしかなっていない点だった。
MARVEL作品が歴史物からSFまであらゆる設定のコミックの実写化の経験を積み重ねてきたことによって,アニメーション・スタジオのCG技術の発展が促されてきたのは事実だろう。だがいつのまにかその最新の成果は,それを必要とした物語自体を追い越してしまったようで,本作でも印象に残るのは,高いレヴェルに到達した映像技術をドラマとして活かすことが出来ない貧弱なプロダクションの方だ。
エンド・クレジットの後の映像で,観客に続編の告知がなされるのだが,どう見ても好評による各方面からの手術のオファーというよりも,失敗したオペの再手術としか思えなかった。カンバーバッチさん,どうか医療過誤で訴えられないようにね。
★★
(★★★★★が最高)