折節の移り変わるこそ

季節の移ろいの中に、感じたままを一日一日。

五月に・・・・

2006年05月13日 22時14分48秒 | 立夏
                    (Eglantyne) 

五月、この季節はまた、モーツァルトの最晩年の曲を思うのです。
言わば、彼の「白鳥の歌」と結びついているような感じ・・・・透き通った彼の心。

     
                    (Eglantyne)

◇◇◇

まず1曲目は、歌曲「春へのあこがれ」
誰もが知っている(?)、少なくとも音楽の教科書に載っている曲。

中学生の頃からのあこがれの地、オーストリアの五月の澄み切った空。
すみれの花の咲きにおう小川のほとり。
まさに春へのあこがれを清らかに歌い上げたこの曲が、殊のほか好きでした。

    心も軽し  そぞろ歩き ♪

ドイツ語の言葉よりも、もしかしたら、作者の心を表しているのでは・・・・
そう思ってしまうほど、日本語訳詞も大好きです。

          
               (Eglantye)



(una poesia di oggi)

       春へのあこがれ  

     楽しや五月  草木は萌え
     小川の岸に  すみれ匂う
     やさしき花を  見つつ行けば
     心も軽し  そぞろ歩き


      Sehnsucht nach dem Fruhlinge   K596   W.A.Mozart 

   Komm, lieber Mai, und mache die Baume wieder grun,
   und las mir an dem Bache die kleinen Veilchen bluh'n!
   Wie mocht' ich doch so gerne ein Veilchen wieder seh'n!
   Ach, lieber Mai, wie gerne einmal spazieren geh'n!


                   (Eglantyne)

◇◇◇

モーツァルトのお好きな方は、ご存知と思いますが、ここでのもう一つの「白鳥の歌」。

モーツァルトのピアノ協奏曲第27番変ロ長調K595(1791年1月)です。
彼の最晩年のピアノ協奏曲です。

               

あれほどの絶頂期があって、一気に登りつめるだけ駆け上がったモーツァルトも、
最晩年は、貧困と病苦という絶望の底に突き落とされたような生活だったそうです。

そうした中で、次々とこの世のものとも思えないような珠玉の名曲を作り出して行きました。
私は、好きでモーツァルトを聴くのですが、どう考えても神がモーツァルトを通して曲を奏でられたのではないかと思えるような曲ばかりです。
つまり、モーツァルトの曲は、何というか、作られたという感じがしないのです。
モーツァルトが歌った曲・・・・・そうではないでしょうか。

    
            (Heritage)           (Jubilee Celebration)

ですから、彼の最晩年の曲は、貧困と病苦のとは逆に、希望への輝きを増していったのです。

私の大好きなクラリネット協奏曲(K622 1791年10月)、これは彼の死のたった2か月前ですが・・・・。

このクラリネット協奏曲は、何度聴いても、こう語りかけているように思えます。

    何も心配することはない、自分の信じた道を涙をこらえて歩きなさい

   
             (Charlotte)           (Jubilee Celebration)

一方、ピアノ協奏曲第27番は、敢然と真冬の烈風に立ち向かっていった、彼のあくまでも強い意思といったものを感じます。
それでいて、あのような澄みわたった美しさ・・・・。

このピアノ協奏曲に流れているもの、一言でいうと、「無限」です。
たいへんな透明感に包まれているという人もいます。
清らかさと言いますか、どこまでも透き通った冷気のようなものかもしれません。

しかし聴き終わった感じは、どこも寒々としたものはありません。
むしろ明日への希望とか、そういう生命感を強く感じてしまいます。
何か遠くへのあこがれと言っていいのかもしれません。

この曲の第3楽章、冒頭にピアノソロがテーマを独奏します。
このテーマが、実は最初にご紹介した歌曲「春へのあこがれ」モチーフなのです。

  Komm, lieber Mai   五月よ早くおいで

     
                    (第3楽章)

五月を待ちわびる、希望の五月、五月になればきっと願いが叶う・・・・。
そんな夢やあこがれが、この曲にも脈々と流れているのでしょう。
だからこそ、このピアノ協奏曲は、こう語りかけているように思います。

   あなたの夢やあこがれ、それを決して忘れることないで
   その手につかむまで、希望を強く抱いて、あきらめずに進みなさい

そして、この曲はいまの季節、5月のそよ風がまたよく似合うのです。

毎年5月になると思いを寄せてしまってた、モーツァルトのピアノ協奏曲の話を
そして「春へのあこがれ」の話をしてみたかったのです・・・・。

     
 
          
コメント (4)
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