風・感じるままに

身の回りの出来事と生いたちを綴っています。

地井武男の思い出

2012-06-30 | 日常
                    ※映画「あゝ野麦峠」の地井武男と大竹しのぶ

俳優の地井武男が亡くなった。70歳という若さで。
本職は俳優だが、最近ではスケッチ画家として、テレビタレントとして活躍していたのに…。
彼と初めて出会ったのは、1979年6月公開の映画「あゝ野麦峠」(製作新日本映画・配給東宝:監督山本薩夫)だった。

映画は、飛騨の農家の娘(多くは10代)たちが、諏訪、岡谷の製糸工場へ働きに出るために人買いブローカーの男に連れられ、吹雪の野麦峠を越える場面から始まる。この中に貧農の娘政井みね(大竹しのぶ)がいた。やっとたどり着いたみねたちを待っていたのは自由のない寄宿舎生活と劣悪な労働環境だった。

過酷な労働で体を壊し働けなくなったみねたちはモノのように捨てられた。みねもそのひとりになった。工場主から「引き取りに来い」との通知を受け、年老いた親に代わってみねを引き取りに行ったのが兄の辰次郎(地井武男)だった。
歩けないほど体を病んだ妹を背負っ子に乗せながら黙々と山道を帰る辰次郎。国境の野麦峠で故郷飛騨の村を見下ろしながら背中のみねに語りかけるシーンは今でも脳裏に焼き付いていて、思い出すだけでも涙が止まらない。

それ以外に印象に残るのは、五味川純平原作の『戦争と人間』(監督:山本薩夫)で、日本(関東)軍に侵略された中国東北部(満州)で日本軍や当地の軍閥に抵抗する朝鮮人匪賊の頭領徐在林を演じた地井武男。後に、監督の山本薩夫が、「実はあの時(日本人ブローカーの妻を連れ去る徐在林)の地井(の演技)には期待していなかったが…」と述べ、このシーンでの地井の演技を絶賛したことがあった。

そして、もう一つ忘れられないのは「北の国から 2002・遺言」(脚本・倉本聰)で、地井演じる「中畑和夫」が田中邦衛演じる「黒板五郎」に対し、妻がガンにより余命宣告を受けたことを打ち明けるシーン。涙と鼻水を垂しながら語る地井を見てびっくりした。
実はこの数ヶ月前に、地井は実際に妻をガンにより失っていた。シーンの撮影中、地井は亡くなった妻のことが脳裏から離れず、ほんまに泣してしまって演技ができなくなっていたのだ。

これらの作品の再放映を期待するとともに、多くの感動と、俺の生き方にも少なからぬ影響を与えてくれた俳優地井武男にありがとうを言おう。 合掌

まやかしの「肩車型」

2012-06-30 | 社会

政府は8億円以上の税金を使って消費税増税を含む社会保障「一体改革」を広報している。その広報では、将来の社会保障が、現在は3人で1人を支える「騎馬戦型」から2050年には1人を1人で支える「肩車型」になると不安をあおり、消費税増税を正当化しています。

正確な実態はどうでしょうか。働く人が支えるのは高齢者だけでなく、社会保障の対象者は子供から高齢者まで全年齢者(全人口)です。この労働力人口に対する全人口の割合の推移は、1965年は2・05、2012年は1・96、30年は1・89(予測)で、働く人が全人口を支える比率は、過去、現在、未来にわたってほとんど変わらないのです。(上図参照)

もう一つのまやかしとして、「みんなで支えます」といいながら、今回の「税制改革」では企業の税負担が出てこないのです。大企業は消費税分を価格に転嫁して1円も負担していないだけでなく、輸出大企業には消費税分が戻ってくる仕組みになっているのです。一方、中小零細企業は価格に転嫁できず負担(身腹を切を切る)を強いられるのが実態です。法人税も大企業ほどの負担割合が低くなっているのが実態で、税負担力のある大企業の負担を抜きにした社会保障財源論はおかしいといわなければなりません。

事実にもとづいた議論こそ必要です。政府の理屈は世代間の対立をあおる有害な議論で、こんなごまかしの説明で消費税増税を合理化するのは認められないのはもちろん、こんな国民をミスリードする宣伝に8億円も国民の血税を使うことも許せません。