被害の甚大さの点ではもっともな事だが、災害の頻度としてはどうだろう。
私としては、毎年死者が出ない年がない”気象”災害への注意をもっと促したい。
なにしろ、気象(大気現象)は地震と違って、実況も予測もともに可能だからだ。
日本を襲う気象災害、すなわち大雨(大雪)・強風・雷・降雹などは、ある1つの大気現象が原因である。
言い換えれば、干ばつ・霜害以外の気象災害は、たった一つの大気現象に注目していれば防御が可能だ。
その大気現象とは、タイトルで分かる通り、”積乱雲”。
積乱雲というと、雷がまず連想されるが、
台風も「ゲリラ豪雨」も竜巻もダウンバーストもみな積乱雲によるもの。
積乱雲とは”空の暴れん坊”なのだ。
積乱雲は、地上と上空(5000m以上)の温度差が大きいときに綿状の積雲からぐんぐん発達する。
しかも30分ほどで高さ10000mにも巨大化するので油断ならない。
といってもたった1つの積乱雲だけなら、夏の夕立程度でたいした被害にならない。
問題なのは、まずは積乱雲が群れの状態となった、マルチセル。
「ゲリラ豪雨」は密集したマルチセルによるもので、それが更に大規模になったのが台風の雲。
寒冷前線のように積乱雲が一列に並んで押し寄せて来る場合もある。
中でも怖いのは、衛星画像で積乱雲の塊が先の尖った”ニンジン状”になって変化がない場合で、
これは積乱雲が同じ場所(ニンジンの先端部分)で次々に発生して、
強い雨がずっと止まないことを意味し、台風以外の豪雨災害はたいていこの雲の下で起きる。
あと、1つながらそれが巨大化したスーパーセルも怖い。
これはアメリカの大平原でトルネードを起こす巨大積乱雲で、
気象衛星から円形の白い雲として確認できる。
円形になるのは、全体が回転しているためと思われる。
今日、茨城のつくば周辺で暴れ回った竜巻も、VTRによると、竜巻の上が巨大な円形のスーパーセルになっていた
(6日13時の気象衛星画像で房総半島の北にある白い円がそれ)。
そしてそのスーパーセルを生んだのは、一昨日8人を遭難死させた上空の寒気
(これは高層天気図で確認できる)。
さて、積乱雲に対する防災の心得だが、
空を覆うような巨大な円形の積乱雲が接近してくるようであったら、
気象庁のサイトの気象衛星画像を確認しよう。
その画像で接近する積乱雲がスーパーセルらしきものだと思ったら、単なる夕立で収まらず、
落雷・降雹、そして竜巻やダウンバーストなどの激烈な突風に注意した方がいい。
また、強い雨にあって、衛星画像での積乱雲がニンジン状で動きがなければ、豪雨災害に対処した方がいい。