GW中の日帰り旅は天気のいい5日と決めていた。
半年前からの予定では、丹沢の仏果山に行くはずだったが、
「変形性膝関節症」になってしまって、膝を酷使する山はご法度。
なので、たかだか300mほどの小山で参道が整備されているなら問題なかろうと、
栃木の大平山に行く事にした。
好天が約束されているので、中腹の”謙信平”から関東平野を一望したい。
予報通りの青空で26℃の中、東武電車に乗り込み、「栃木」で下車。
ここ栃木市は、廃藩置県のごたごたで、県名に採用されたものの、
県庁の座を宇都宮に奪われ、近代的発展からとり残された。
その結果、無粋な再開発から逃れられたため、川沿いに古風な家並が残って、観光名所となった。
だが私はその町を素通りして、西に見える大平山に徒歩で向かう。
義妹の母校を通り過ぎて、いよいよ参道(あじさい坂)にとりかかる。
すでに駅から3km歩いてきたので、額には汗が落ちている。
登り口にある六角堂で、山用のキャップ(帽子)を外し、バンダナを頭に巻いた(汗をとるため)。
ここからは、ゆるいながらずっと石段で、1000段はあるという(段差は低いので膝の負担にはならない)。
ゆっくり登って、やっと山上の神社に着いた。
振り返ると、関東平野の残丘・筑波山が鋭角で平野の向うに聳えている。
息は乱れていないものの、汗はびっしょり。
これほどの登りを予想せず、LLBeanのカッターシャツ1枚だけでアンダーシャツ無しで来たので、
シャツに胸と背中の汗がにじんでみっともない。
同じLLBeanのワークパンツも夏用でないので、暑い。
日差しが強いのでキャップをかぶろうと思ったら、見当たらない。
そうか、下でバンダナにかえた時、いい加減にズボンのポケットに突込んだので、途中で落してきたな。
でも往路を帰るから、道脇にでも置いてあるだろうと楽観。
少し下って、謙信平に行く。
ここは車道が通って、車が多いが、木陰からの展望がいい。
目の前に日本一の関東平野が広がる。
そして地平線の果てには都心の高層ビル群(写真中央)と東京スカイツリーの影。
ここは上杉謙信が、小田原北条氏との同盟のために訪れ、関東平野の眺望に感嘆したという所。
関東管領の身での関東平定が思うように行かず、関東の実権を北条氏に認めた謙信にとって、
その広大な風景は、どう映ったろう(謙信は北陸道に矛先を変える)。
謙信ファンの私も、縁台で蕎麦とビールを口にしながら、謙信と同じ風景を見る。
周囲の木は楓なので、紅葉がすばらしかろう。
だが関東平野を望むなら冬枯れの日が一番だ。
茶店で土産と買おうと思ったが、食指の動いたタケノコの漬物や干したキノコは、
今年はまだ買わないでおこうと、手を引っ込めた。
さて、山を降りる。
往路の石段を、周囲に注意しながら降りる。
なにしろ、今日の装備で一番まともなのは、あのキャップなのだ。
あれはツバが広く、頭を覆う部分はメッシュで風通しが良く、
しかも水を含ませて冷却効果を出すことができる優れものなので、
あきらめるには惜しい。
しかも、他人の汗のついた帽子など失敬していく者はいないはず。
そして、登り口の六角堂に着かんとする頃、
期待通り、わがキャップが、道脇の杭にかぶせてあった。
道に落ちていたキャップをだれかが拾って、そうしてくれたのだ。
他の人たちが、その脇を素通りする中、
私一人がそのキャップに近づいて、堂々と頭にかぶる。
持ち主であることのアピールをこめて。
汗がにじんだシャツも、汗が乾くとその跡もでないので、
これなら人の中にも入れる。
というわけで、帰りは、バスで栃木市内まで行き、蔵の町を散策した。