7月12日未明に松山市内で起きた土砂災害(行方不明3名)は、松山城のある城山からの土砂が山麓の民家を直撃したもの。
そこの土砂災害警戒区域マップを見ると、平野の中にある残丘状の城山に沿った麓が急傾斜地崩壊警戒区域(黄色)と同特別警戒区域(赤色)に覆われている(下図)。
なんと城山の南麓には愛媛県庁の敷地がこれら区域内にある。
ということは、愛媛県庁は土砂災害に襲われても不思議でない立地だということ※。
※:土砂災害の危険箇所に建物がある場合に限り、警戒区域として指定される。洪水・津波被害想定区域内に建物、いや都市があるのも同じ。あらゆる災害から安全が保証された場所は日本にはほとんどない。だからみんなに”防災”が必要なのだ。
さて今回の土砂は、山頂三角点(131.4m)の右側にある2本点線状の道路から、東(右)に伸びる谷(標高数値〜東雲神社という文字の上)を通って麓の「緑町」に達した。
土砂が谷に沿って落下したのだから、土砂災害の中の「土石流」に該当する(他は、崖崩れと地滑り)。
そして皮肉にも不幸なことに、発生した土石流は、急傾斜地崩壊警戒区域(黄色)が切れた部分、すなわちそこだけ土砂災害が想定されない隙間の狭い場所に達して、そこにあった民家を破壊した。
おおざっぱには、城山は周囲360°が急傾斜地崩壊警戒区域なのだが、なぜここ(谷の出口)が警戒区域から除外されているのか。
それは谷になってるため傾斜が緩く、急傾斜地の基準である30°に達してないからであろう。
また山地ではないので「土石流」の警戒区域でもなかった。
すなわち、土砂災害が発生するほどの傾斜も土石流が発生するほどの比高もないと判断されていたのだ。
ところが、山頂部の道路すなわちこの谷の源頭部分では亀裂が発生しており、その補修工事に取り掛かっていた(当時ブルーシートが掛かっていた)。
すなわち、土砂災害の前兆としての”地割れ”が発生していたのだ。
地面の内部で崩壊が進行していた折に大雨が見舞い、大量の水分が地層内部の崩壊を促進したのだ。
その場所は、皮肉にも土砂災害の危険性が最も低い傾斜の緩い谷地だった。
谷地は、急傾斜地崩壊の視点だと緩斜面なので危険がないが、土石流の視点だと谷地こそ危険。
かように、災害は人の判断の虚を突く。