1年中手に入れることができ、常備しやすいフルーツの一つ「バナナ」。
そのバナナは、身近な食品の中では、もっとも抗酸化力が高いという。
【解説】黄色、茶色…どの段階のバナナを食べる?熟度が違うと栄養価も異なる
東京慈恵会医科大学附属病院の栄養部が監修した『完全版 その調理、9割の栄養捨ててます!』(世界文化社)は、
最新の調理科学をもとに、丸ごと栄養を摂ることができるコツを紹介している。
今回は、生でも焼いても蒸してもおいしい、バナナについて一部抜粋・再編集して紹介する。
☆バナナは、にんにく以上の抗酸化力
食物繊維が豊富で、栄養補給にも役立つバナナですが、
ポリフェノールをはじめとした抗酸化成分も豊富。
にんにく以上に強い抗酸化力を持ち、身近な食品の中では、
もっとも活性酸素を除去する力が強いとする研究結果もあるほど。
また、取り除く人も多いバナナの皮や筋は、果肉より栄養が豊富で、
外の皮は、果肉の1.5倍のカリウムや2.6倍の鉄分があります。
バナナの筋は、栄養を送るための維管束という部分。
1gほどの量ですが、高い抗酸化力があることがわかっています。
スプーンで、こそげとるようにして、スムージーなどに入れてください。
冷凍することでビタミン類は減少しますが、
一方でポリフェノールなどの抗酸化力は、キープします。
ただ、食べ頃を過ぎるとビタミCをはじめ、栄養が減少してしまうので、
適度な熟度になったら、冷凍したほうがお得です。
急速に冷凍するために、薄く切るか潰しておくと◎。
☆筋にも栄養!取らずに食べよう
●4割の抗酸化物質が皮に
バナナの皮には、抗酸化物質であるポリフェノールやカリウムなどが豊富。
全体の4割が皮に含まれており、抗酸化力は実の10倍とするデータもあるほど。
普通のバナナは、皮ごと食べるのは難しいですが、
近年は、皮ごと食べられる品種も登場しています。
●栄養の通り道「維管束」バナナの筋の食べ方がカギ
バナナの筋は、葉から実へと栄養を送る通り道である「維管束」。
この維管束にも、実に負けずとも劣らない抗酸化力を持っていることが分かっています。
筋をキレイに取って食べるのは、抗酸化力のロスにつながります。
●食物繊維と難消化性でんぷんの整腸効果<中果皮(果肉)>
果肉には食物繊維やビタミンのほか、
大腸まで届いて働く難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)も豊富に含まれています。
腸の掃除をしつつ、善玉菌のエサになるため、腸活にはうってつけの食材です。
●全部皮!たんぱく質は中心に約1.5倍<内果皮>
バナナは外果皮・中果皮・内果皮の3層になっています。
食べる部分は、中果皮と内果皮、つまりすべてが皮なのです。
中心の内果皮にある小さな黒い点は、種の名残。
中心に近づくほど、たんぱく質量が増えていきます。
☆青バナナは整腸作用がある?
バナナは、両端が緑色のものから、しっかり熟した茶色っぽいものまで、
様々な熟度のものがあります。
バナナは、熟度で成分が変わるため、得られる栄養も変わります。
もっとも大きな変化があるのは、
熟成7日目の、茶色の斑点(シュガースポット)が出たバナナの免疫増強作用です。
マウスを用いた実験で調査したところ、
熟成1日目と比較すると、100倍にアップしたほど。
甘みも強くなるため、熟したバナナを食べるのが、お得なのです。
日本で消費されるバナナは、ほとんどが輸入ですが、輸入直後のバナナは、全体が緑色。
そこからエチレンガスによる熟成を経て、
黄色いバナナ、茶色っぽいバナナに変化していきます。
バナナは、皮の色の変化で、中身の成分がある程度わかるので、
欲しい成分のところで食べてください。
熟度が低く緑色が残る青バナナは、
レジスタントスターチが豊富で、整腸作用が高いのが特徴。
ただし黄色、茶色バナナも、それぞれに異なる成長作用を持っています。
比較的甘みの少ない青バナナは、野菜のように火を通すと、
ほくほくとして、芋類のような感覚で、食べることができます。
そして、加熱すると、フラクトオリゴ糖の効果が高まります。
焼き30分で1.8倍、蒸し調理だと10分で2.8倍に。
加熱により、消化も良くなり、胃の負担も軽減できます。
皮つきバナナをオーブントースターなどで、表面が黒くなるまで加熱し、皮をむいていただきます。
スムージーにバナナを入れる人もいるかと思いますが、
抗酸化力の高いベリー類などのスムージーにバナナを加えると、
ベリー類のポリフェノールである、フラボノールが84%も激減したという研究結果もあります。
バナナが加わると、抗酸化物質をバナナの酵素が「掃除」してしまい、
体内での働きを防ぐ可能性があるのです。
胃が弱い人は、大量摂取にはご注意を。
監修者: 濱裕宣 東京慈恵会医科大学附属病院栄養部部長。
日常生活で活かせる健康と栄養バランスをモットーに、
患者の立場に立った食生活に向上指導にあたる
赤石定典 東京慈恵会医科大学附属病院栄養部。
栄養食事指導によって、病態改善・治療・治癒への貢献を目指す
東京慈恵会医科大学附属病院栄養部 ・・》
注)記事の原文に、あえて改行など多くした。