今年4月に5度目の防衛を果たしたWBA世界フライ級王者の井岡一翔選手、試合後には他団体との統一戦、さらには階級をスーパーフライ級に上げ、日本人初の4階級制覇も視野にというような話も出ていた。
ところがである。報道によると、今月9日に父親でもあるジムの会長が記者会見を行い、井岡選手のベルトを返上したことを明らかにしたという。理由は、大晦日に計画していた6度目の防衛戦に向けて心身の準備が整わないためとし、引退の可能性についても触れたという。
ばりばりの現役世界チャンピオンのベルト返上など前代未聞である。
引退の理由については、結婚生活のことを始めとしてあれこれ憶測を呼んでいるようだが、実は、井岡選手がジムに顔を出していないとのジム関係者の話が8月末には一部マスコミで紹介されていた。その時、父親との関係悪化が原因ではとの声が上がっていたのだが、今回の引退発表に当人である井岡選手の姿がなかったのが気になる。
井岡選手他、先月22日に初防衛したWBC世界ライトフライ級王者の拳四郎選手、現WBO世界スーパーフライ級王者の井上尚弥選手、少し前の亀田興毅選手等々、親が我が子を指導して一流アスリートへと導く例がボクシング界だけではなく他のスポーツにおいても多く見られるようになってきている。
彼らのような成功例を見て、よし自分もとはなかなかならないだろうとは思うが、彼ら親子のようにそうそううまくいくとは限らない。むしろ稀なことだと思う。
私塾を営み、これまで多くの親子の関係を見てきて、しみじみと思うことがある。それは、親子の関係というのは極めて情的な関係であるということだ。親が我が子をある目的に向かって教え導こうなど始めた時、往々にして情的にこじれるように思う。
井岡選手親子がそうでないことを願うばかりだ。
いずれにしても、早く問題が解決されることを祈る。統一戦、4階級制覇へ向けての井岡選手の挑戦を見てみたい。