出版社 方丈社
解 説 武田砂鉄
2018.8.14第一版第一冊
とても価値ある本である。1941年12月8日、我が国が太平洋戦争に突入した日、我が同胞はそれをどうとらえていたか。その印象、感想、想いを集めたもの。と言っても対象は当時の作家・知識人・文化人など55名。頁の間には当日の展開を報じるラジオ・ニュースが時間を追って8本が挿入されている。
一人につき2頁を割き、人によりポイント・フォント・レイアウトが異なる贅沢な作り。
これらの発言は、それぞれの齢により仕事により思想によるところの本人の真実である。しかも元原は、その日に書かれたものから、後年の著作あとがきや全集などで初めて加えられたものまでさまざまだ。それらを一堂に集め横並びに置いた。価値ある所以である。賛成したのは誰で反対したのは誰か、それは読んでからのお楽しみ。
どうだろうか? 同様に、この開戦を報じる当時の新聞の見出しや社説を、同列に並べて見ることは出来ないものだろうか。それを、毎年8月15日に私たち日本人が確認する。ブックレット形態でいい。
朝日、毎日、読売等の中央紙、各県紙、会社・団体・組合などの機関誌の開戦の記事をを毎年8月15日敗戦の日に紹介するのだ。水に流す資質に富むわが民族。この10年、いつか来た道をひた走る昨今、歯止めの手立てにならないか。フッと考えに及んだ。