処遊楽

人生は泣き笑い。山あり谷あり海もある。愛して憎んで会って別れて我が人生。
力一杯生きよう。
衆生所遊楽。

77年の興亡

2022-01-30 19:00:28 | 

著 者 赤松 正雄

出版社 出雲出版

定 価 2200円 264頁

 

大いに勉強になった。近年、身の周りのニュースやメディアの報道ぶり、はたまた政治家や財界人などの言説などについて、違和感を持つことが多くなった。

SNSの長足の進歩と自己主張の自由な発信、メディア世界の構造変化、総合雑誌の衰退、分断と格差の増大、政治の劣化等々、その要因を探せばきりが無かろう。

この本は、明治から令和までの時代の流れを昭和20年の敗戦を区切りとして、前半の77年と後半の77年とに分け、前半を《西洋対日本》後半を《保守対革新》、座標軸を変えて前半を《軍事力優先》後半を《経済力優先》と図式化する。これが本のタイトル『77年の興亡』となり、前後半合わせての154年の時代の中身すなわち質の変化をとらえて、サブタイトル”価値観の対立を追って”としているようだ。こうした時代の図式が、本のカヴァー裏に印刷されており、読者への配慮と言えなくもない。事実、初めて手に取った時、〈77年〉?〈興亡〉?の私自身?だった。

この時代区分けは著者のオリジナルなのかしら。でなければ不明を恥じるしかないが、実にいい。さまざまな事象にあてがうことが出来そうだ。時代や歴史、経過などの整理に役立ちそうだ。

著者は、公明党の野党時代から6期20年間にわたり衆議院議員を務め、党の外交安保調査会長、憲法調査会座長、さらには厚生労働大臣などの要職を歴任した。我が国の現代政治が大きく変わりゆく只中で政策と戦った回顧録である。
とはいえ、知力体力ともに余力を残してのバトンタッチだったわけで、後継への贈り物=未来への課題が実に盛りだくさんである。政策の視野と掘り下げ、その転換の心情と経緯、他党とのやり取り、学識者やメディアとの間合いなどだ。

行間からは著者の党の行く末を思う心情が素直に伝わってくる。党にとっては得難く有難いOBである。いわく、
「今のような自公政権が永遠に続いていけば、民主主義本来の政権交代が叶わない。中道主義はジレンマに陥ってしまう」

「公明党こそ自民党に代わる政権党たろうと、かつての先輩たちは目標に置いたものだが、今となっては、遠い”砲声”という他ない」

「自民党の公明化を狙っていながら、気が付いたら公明党の自民党化が進んでいたと言われては居ないか。"安定"を望むあまり"改革"が疎かになっていないか」

現代日本の政治を俯瞰する上で、最上のテキストであることは間違いなかろう。机上に置くことにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

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