瀬戸内 寂聴著、日本経済新聞社
とにかく面白い。文壇の大御所21人との交遊のエッセイ集である。彼らの息遣いが、奇人変人才人ぶりが、日常の生態が、著者の愛情と情熱と技によって伝わってくる。彼女は実に見事に、彼女しかにできないことをやってのけた。文壇史に残る仕事になったのではなかろうか。
どの作家の、どのエピソードも等しく捨てがたい。大作家たちがここまで無防備なのは、著者が女性だからだろう。男ならこうは行かない。彼女の気質や性格、会話、愛らしさ、作家としての技量は、勿論この作品の成功と無縁ではない。35年にわたる仏門生活も大いに影響していよう。
それにしても、現代の文壇にもこうした世界があるのかしら? 村上龍は? 宮本輝は? 伊集院静は? さしずめ寂聴にあたるのは、現代なら小川洋子? 川上弘子? 山田詠美? もっとぐっと若くなって綿矢りさとか金原ひとみか?
横尾忠則の挿画、これまたいい。デジカメで撮って、B4で印刷して、我が家に飾ろう。全52枚。月1枚で4年4ヶ月で一巡。本に閉じ込めておくのは惜しい。
ちなみに、21人の大御所は、次の皆さん。 島崎藤村、正宗白鳥、川端康成、三島由紀夫、谷崎潤一郎、佐藤春夫、舟橋聖一、丹羽文雄、稲垣足穂、宇野千代、今東光、松本清張、河盛好蔵、里見、荒畑寒村、岡本太郎、檀一雄、平林たい子、平野謙、遠藤周作、水上勉
続刊が待ち遠しい。