処遊楽

人生は泣き笑い。山あり谷あり海もある。愛して憎んで会って別れて我が人生。
力一杯生きよう。
衆生所遊楽。

奇縁まんだら

2008-07-28 23:42:32 | 

瀬戸内 寂聴著、日本経済新聞社

とにかく面白い。文壇の大御所21人との交遊のエッセイ集である。彼らの息遣いが、奇人変人才人ぶりが、日常の生態が、著者の愛情と情熱と技によって伝わってくる。彼女は実に見事に、彼女しかにできないことをやってのけた。文壇史に残る仕事になったのではなかろうか。

どの作家の、どのエピソードも等しく捨てがたい。大作家たちがここまで無防備なのは、著者が女性だからだろう。男ならこうは行かない。彼女の気質や性格、会話、愛らしさ、作家としての技量は、勿論この作品の成功と無縁ではない。35年にわたる仏門生活も大いに影響していよう。

それにしても、現代の文壇にもこうした世界があるのかしら?              村上龍は? 宮本輝は? 伊集院静は?                         さしずめ寂聴にあたるのは、現代なら小川洋子? 川上弘子? 山田詠美?  もっとぐっと若くなって綿矢りさとか金原ひとみか?

横尾忠則の挿画、これまたいい。デジカメで撮って、B4で印刷して、我が家に飾ろう。全52枚。月1枚で4年4ヶ月で一巡。本に閉じ込めておくのは惜しい。

ちなみに、21人の大御所は、次の皆さん。                        島崎藤村、正宗白鳥、川端康成、三島由紀夫、谷崎潤一郎、佐藤春夫、舟橋聖一、丹羽文雄、稲垣足穂、宇野千代、今東光、松本清張、河盛好蔵、里見、荒畑寒村、岡本太郎、檀一雄、平林たい子、平野謙、遠藤周作、水上勉

続刊が待ち遠しい。

 

 

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告発のとき

2008-07-19 22:51:00 | 映画

原題:IN THE VALLEY OF ELAH

    

 

好きな俳優トミー・リー・ジョーンズの映画となれば見逃すわけにはいかない。ベテラン女優スーザン・サランドンとの夫婦役。以前『依頼人』で共演した二人。ともに抑制した演技で息もぴったり。

イラクから帰還し、行方不明になった息子を探す退役軍人の父。捜査の進展につれて、息子の素顔や戦争の狂気が明らかになってくる。

監督はアカデミー賞受賞の「ミリオンダラー・ベイビー」や「父親達の星条旗」のシナリオのポール・ハギス。声高に反戦を発しはしない。戦争の正当性をフォーカスするのではなく、その戦争によって引き起こされる現実に目を向ける。

当初、このハンク・ディアフィールド役はクリント・イーストウッドだったが、クリント自身が適役はT.L.ジョ-ンズといったと言う。文字通り彼のための映画だ。

     

 初老のおじさん俳優は、日本でコーヒーのCMで親しまれている。ケビン・コスナーやブラッド・ピッドならともかく、よく起用したものだと思ったが、大成功だ。BOSSのスタッフの炯眼と判断に脱帽である。ファンとしては気分がいい。

もっとも『ノーカントリー』『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』など近年の話題作に出ずっぱり。アメリカでもファンが多いコンスタンスに稼げる役者なのだろう。

シャリーズ・セロン気に入った。役どころもあるが、控えめだが芯があって知的でスレンダー。

          

差別の職場にありながら、世間の追い風を受けてその差別を声高に叫んでもいいのに、やらない。耐えながら少しづつ状況を変えるしたたかさも持つ。日本的なんだ。いいねえ。

最後に、このタイトルは戴けない。これでは、一兵士がつかんだ軍の秘密を告発するストーリーと誰もが思うでしょ。

ブログ主ならこうつける。『父、 ハンク・ディアフィールド』

トミー・リーとスーザンとブログ主は同じ齢だった。今回初めて知った。参ったあ!!

 オフィシャル・サイト

 有楽座。             

 95点。 

 

 

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GEORGE GIRARD'S BAND with Rosemary Clooney

2008-07-17 22:10:07 | ジャズ

                       

 

ニューオリーンズのGHB本社にメールで発注し、一週間後に届いた。オムニバス16曲のサービスCDが一枚付いて8.5ドル。

ローズマリーの絶頂の50年代前半の熱唱。年配の方なら江利チエミの「お家へおいでよ」を知るかしら。その本家歌手。ポップスで知られてきたがジャズもなかなかのもの。デューク・エリントンと最初にレコーディングした大物歌手であり、ベニー・グッドマン、ハリー・ジェームス、ネルソン・リドルなどの巨匠と共演している。

90年代にコンコード・レコードで見事な復活をとげて以降、バラードを中心に、スタンダード・ジャズを歌い続けて、新たなファンが増え続けている。

ジョージ・クルーニーの叔母である。

18曲中、ローズマリーは最初の4曲しか登場しないのが残念だが、52年録音が聴けるのだから、もう満足満足。

 

                   

    録音時のローズマリー       90年代のローズマリー 

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人は何のために「祈る」のか

2008-07-15 23:38:29 | 

村上和雄・棚次正和著、祥伝社刊

             

 

ノーベル賞に最も近いといわれている世界的科学者と第一線の宗教学者による「祈りと遺伝子」を巡るコラボレーション。村上和雄著『生命の暗号』(サンマーク出版)がベースになっているようだ。

目に見えない心の作用を、果たして科学は解明できるのか。アメリカを中心に近年の医学界では祈りの治療効果の研究が進んでおり、多くの実験や検証結果も紹介されている。

人間の60兆個の細胞は、その一つ一つが担っている役割は、本来持つ全能性のほんのわずかでしかない。この細胞の働きのカギが遺伝子であり、人の才能や個性の違いは、遺伝子の働き方のちょっとの差でしかない。

全遺伝子情報(ゲノム)は32億の塩基から成り立つが、生存に使われているのは、わずか2~3%に過ぎない。この遺伝子をどう働かせるかは最大の課題。働かせることを遺伝子オン、眠らせておくことを遺伝子オフと呼ぶ。

「祈り」は、好ましい遺伝子をオンにし、好ましくない遺伝子をオフする効果がある、というのがこの本の出発点。この「祈り」とは狭義の祈りを含め、夢、期待、希望、思い、一念、勇気、感謝などのポジティブ・マインドのことである。

そして結語には「祈りは、生命をその根源から生きることであり、生き生きと生きることである。(中略)祈ることによって、どの遺伝子がスイッチオンになるのか。反対にどの遺伝子がスイッチオフになるのか。これを科学的に解明するには、大変な手間と労力と必要なことは素人でもわかることです」

「科学は物体や身体を研究対象とし、宗教は心や魂を重視する。遺伝子が肉体の設計図であるのに対し、祈りは全人的な行為・状態である。この科学と宗教の認識上の分裂は、人間観にそのまま反映されている。ところが、人間存在全体を問う場合、統一態でなければならない。そこを根底的に成り立たせているもの=サムシング・グレート=についての認識が欠落しているではないか」

つまり人間を超越する存在、ありていに言えば神や仏、あるいは畏敬の念を抱かせるものについての論議が必要であると、結んでいるのである。 

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ベランダ・トマト

2008-07-11 23:43:59 | 身辺雑記
我が家に週2回、八百屋さんがホロ付き2トン車で、野菜・果物を売り来る。

お新香やパンやお米に至るまで、種類は豊富。

決まったコース、ポイントで売り走り、我が家の前は一日の最後で薄暮時。

だから、いいものは乏しい。

それだけ、八百屋の店主が何かとサービスに気を遣ってくれている。



鉢植えのトマトの苗を戴いた。

ベランダで半信半疑で水をやったり、肥料をやったり。

なんと普通のちゃんとしたトマトが成り、日に日に赤くなる。

そして美味しく戴きました。

不意に思いつき、記念に、絵にしました。

今年から始めた興に任せてのスケッチング。

どうやらトマトに見えるかな。




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1978年、冬

2008-07-08 10:25:55 | 映画

原題:西幹道  英題:THE WESTERN TRUNK LINE

 

’07年東京国際映画祭審査員特別賞作。

 

 

 

文革後の地方都市・西幹道が舞台。

 

大都会・北京から隣へ越してきた眩しいほどの少女と彼女への思慕と憧憬の思いを募らせる齢の離れた兄弟を巡る物語。

 

荒廃から復興しはじめた工場の様子、貨物列車で通う通勤・通学の人々、唯一の娯楽の演芸舞台を見入る老若男女、壊れたトランジスタ・ラジオから聴こえるモスクワ放送。62年生まれのリー・チーシアンが描いた彼が16歳の時の中国の姿である。

 

煙突から出る灰色の煙、乾いた大地、枯れ木の並木。冬の映像が美しい。

この撮影は、監督とは北京電映大学時代の同級生ワン・ユー。

ともに相談し「人物を捉えるには、客観的に風景を見て、ロングショットがいいだろうという話になった。美しいシーンを撮ろうと思って撮ったわけではない」という。

 

 

母親が激しい小言とともに息子の頭を掌で叩くシーンが出てくる。昔の日本でもそうだった。実に懐かしい思いがするが、今の日本で、観る人はどう受け取るだろうか。

兄弟の兄が、少女の後を追うシーンが幾度となくある。胸の慕いを表しているのだろうが、いまでは殆どストーカー。工場から銅線を盗むシーンも戴けない。これらは観る人に違和感を覚えさせることだろう。

 

ちなみに1978年は文革で破壊された教育制度が、小平によって再開された年で、駐日本国大使からこのほど台湾弁公室主任に転出した王毅氏は、この年北京第二外語学院に入学している。復興1期性だ。

 

オフィシャルサイト

 

          

ユーロスペース2  80点

 

 

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2008-07-05 22:46:15 | 舌鼓
前を通る度に、なかなか店構えもよく、見るからに旨い蕎麦が出てきそうで、いつか入ってみようと思っていたが、その時が来た。




注文したのは、一品料理で、岩がき、鯨刺身、ほや入りさつま揚げ、山芋とおくらとめかぶ、焼きそらまめ、茄子の揚げだし。

どれも行き届いた味だが、なかでも秀逸は鯨。なにかと話題の鯨だが、これほど色よく味よく柔らかな鯨は正直言って初めてだった。





仕上げは手振りへぎそば。あげたてアツアツの魚介のかき揚げで食す。申し分ない。

さらに嬉しいのは、宮城の酒 一の蔵の「すず音」が呑めたこと。都内で置いてる店はそう多くは無い。

二人で1万円。大満足。いい店見つけた。

渋谷・東急本店前



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ラジオの時代のうた

2008-07-03 22:16:05 | 音楽
CDCLUB




戦後、テレビが登場するまで日本の家庭を席捲したラジオ。
貧しいけれども明日への夢とおもいやりと活力に溢れた時代。

暗くなるまで外でチャンバラごっこ。家に帰ってラジオから流れる「紅孔雀」にかじりついた日々。

当時のヒット曲がオリジナルの音源で聴ける懐かしさ一杯のCD。

 1みかんの花咲く丘(「空の劇場」より) 芹 洋子
 2とんがり帽子(鐘の鳴る丘」より)   高橋恵子
 3僕は特急の機関紙で(日曜娯楽版」より)榎本健一・楠トシエ
 4笛吹童子(「新諸国物語」より)    上高田少年合唱団
 5紅孔雀の歌(「新諸国物語」より)   井口小夜子
 6ヤン坊・ニン坊・トン坊(「ヤン坊ニン坊トン坊」より ひばり児童合唱団
 7少年ケニヤの歌(「少年ケニヤ」より) キング児童合唱団
 8オテナの塔(「新諸国物語」より)   淀かおる
 9七つの誓い(「新諸国物語」より)   友竹正則
10少年探偵団(「少年探偵団」より)   ひばり児童合唱団
11赤胴鈴之助(「赤胴鈴之助」より)   岩瀬 寛
12一丁目一番地(「一丁目一番地」より  ひばり児童合唱団
13少年猿飛佐助(「少年猿飛佐助」より  北野修治
14鉄人28号の歌(「鉄人28号」より  岩瀬 寛
15風はそよ風              ボニー・ジャックス
15朝はどこから             芹 洋子
16山小屋の灯              ボニー・ジャックス
17緑の牧場               北見和夫
18アカシアの花             ボニー・ジャックス       
19夏の思い出              ペギー葉山
20さくら貝の唄             倍賞千恵子
21あざみの歌              倍賞千恵子
22白い花の咲く頃            ボニー・ジャックス
23リラの花咲く頃            コール・セレステ
24森の水車               島田祐子
25雪の降る街を(「えり子とともに」より 高 英男

このジャケットが何とも言えなくいい。
卓袱台を囲んで家族で聴いたラジオ。

「三つの歌」、「私は誰でしょう」、落語や浪曲、ドラマと番組内容も
豊富だった。

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