著者 最上重夫
出版 PHPエディターズグループ
非売品
現役の建設会社社長が自ら綴った半生記。書名の『発気揚々』は、相撲の取り組みで行司が発する掛け声「ハッケヨイ!」が由来だという。
文字通り著者は、本業=(株)湘南営繕協会代表取締役=のかたわら、というより本業に勝るとも劣らない情熱でボランティアや地域貢献の活動に取り組んできた。大相撲藤沢場所=勧進元=の30年をはじめ献血キャンペーン=神奈川県日赤紺綬有功会会長=16年、商店街連合会=湘南台商店連合会会長=13年などである。
いずれも長い歴史の中での紆余曲折や失地回復、はたまた狂喜乱舞等々のヤマ・タニを当の本人がサラっと述懐する、これが実に味がある。
実は、著者との邂逅は約50年前の学生時代に遡る。ともに学び世を憂い夢を同じくしたが、卒業後はそれぞれの道を歩んだ。馬齢を重ね来たり、5年前の転居に伴って偶々氏の生活圏に居住と相成った次第である。
半世紀ぶりの再会の第一印象は相貌の変わり様であった。白皙の青年は半禿頭の渋めの実業家に変身していた。この本にはその50年間の私が知り得なかった氏の戦い・歴史が詰まっている。その一つ一つに思いを寄せながら読んだのだった。
青雲の志を今に遂げてきた意思と判断力と実行力に敬服する。そしてそれらが上手く維持できたのは、氏の人柄ではなかろうかと思う。氏と交流して来た各界の人士が寄せているコメントがそれを物語る。
加えて特筆したいのが夫人の力。”内助の功”という言い方は今どき受けは悪いが、夫妻の共同戦線。氏は多くを語っていないが、行間からその姿が伝わってくる。実に麗しい。
残念ながら、この本は市場に出回ってはいない。考えがあってそうされたのだとは思うが、内容は一人でも多く読んで貰いたいもの。このブログへのアップはそれを補う思いからでもある。
最上重夫
『タウンニュース』から