原題 「Une belle Course」
2022年フランス/91分
コンパクトでありながら人生の重さと心の通い合いとサプライズの結末で見事な感動を与えてくれた珠玉の作品である。
その立役者は、この日、余儀なく介護施設に入る94歳の婦人を演じるリーヌ・ルノーとその相方のタクシー運転手を演じるダニー・ブーン。二人の一日限りの道中記にハラハラドキドキ。
さらに言えば、この作品の好感度を上げたのはパリの風景・街並みの美しさか。というのは正確ではない。そこに監督の意図は無いだろう。普段のパリの日常の切り取り方が上手いというべきか。
若い夫婦と子供が暮らしている狭く暗いアパート、お針子をした劇場、小用で車を止めた路地とトイレを借りたレストラン、ナチスの残虐を印したビルの壁などのいわばさりげない日常生活シーンによってパリの陽の部分がさらに際立っている。
原題を和訳すると『ある美しき旅路』になると或るblg。なるほどこれではキャッチの力は弱い。訴求効果は『パリタクシー』に軍配は上がる。
余計なお世話だが、アメリカでの上映タイトルは何だろうか? 『ドライヴィング・ミス・デイジー』という作品があったと思うが。
昨年観た邦画『PLAN75』、今年の『すべてうまくいきますように』(仏)、『生きるLIVING』(英)とここのところ終活を描いた作品に力作が多い。まもなく全団塊世代の後期高齢化入りが来る。むべなるかな。
追加。挿入歌でダイナ・ワシントンが歌う "On The Sunny Side of The Street"が聴ける。選曲・シーン・都会・音源などウディ・アレンを髣髴とさせ思わずニンマリ。あちらはニューヨーク、こちらはパリ。勝負したのかな。
映画『パリタクシー』公式サイト|2023年4月7日(金)公開 (shochiku.co.jp)