著 者 姚文元
訳 者 片山智行
出版社 潮出版社
44年前に出版されたこの本を、一体どの位の人が知っているだろうか。
中国発の連続する驚天動地の出来事に、世界が耳目を奪われていたさなかの翻訳出版である。
雲霞の如き赤いスカーフの紅小兵が毛沢東語録掲げて此処彼処に押しかけ、大人を吊るしあげ、秩序を破壊し尽くした混乱の極み。
経済の打撃は? 大学の機能は? 劉少奇は? 革命と反革命、その勢力図は? 犠牲者数は? 権力の落ち着く先は? 連日、息を詰めるようにして新聞の報道記事を読んだものだった。
姚文元については、訳者によるあとがきに詳しい。マルクス主義文芸路線の忠実な実践者としている。
当時、これを「出版しないほうがよい」「すべきでない」「少なくとも暫く見合わせた方がよい」との声が一部にあったが、版元は密かに出した、そんな雰囲気だったように思う。
このほど転居に際して、かつて貪った竹内好の著作を大方手離したが、その中に紛れていた。この姚『魯迅』を読んだのも、もとはと言えば竹内魯迅に発している。
当時、出版へのブレーキはどの筋からあったのか、またそれは姚の行く末を予想してのことだったのか、出版は版元の不名誉にならないか、いやとっくに時効だろう、思いは巡る。
今、党大会を前にして ”核心" 習近平のおぞましい体制造りが表に出始めた。裏では凄まじい闘争が繰り広げられていることだろう、四人組時代それに続く林彪事件のように。