処遊楽

人生は泣き笑い。山あり谷あり海もある。愛して憎んで会って別れて我が人生。
力一杯生きよう。
衆生所遊楽。

任侠学園

2019-04-10 10:15:25 | 

著者 今野 敏

出版 中公文庫

     

シリーズの第2巻。357頁を二日で読む。この上ない気分転換。構成員5人、極小のヤクザの組が高校経営をするドタバタ物語。暴力団ではなくヤクザ。ここが肝。彼らの生態を筆者は実に巧みに描写する。実に笑える。今の時代を浮かび上がらせる。実に怖い。その部分を集中的に拾ってみよう。

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・理事というのは曖昧な言葉だと思っている。なんだか偉そうに聞こえるし、公務員の天下り先としても便利な役職だ。

・「最近の子供は脆い。俺にはそう思えてならねえ。簡単に人を殺したり、自殺したりしちまう。親を殺すバカもいる。心にバネがねえ。こらえ性がねえんだ。我慢てものを知らねえ。この先、この国はどうなっちまうんだろうって、不安になること、ねえかい?」

・だが、教頭は勘違いしている。ヤクザは時間を無駄にしない。二度手間になることはしないのだ。

・我慢が足りなくてはヤクザはつとまらない。ヤクザは簡単には手を出さない。実は、しきたりやら約束事やら義理やらでがんじがらめなのだ。その上、最近は暴対法ときている。そのかわり、やるときは徹底的にやる。本気でやる。相手を完膚無きまでにやっつける。

・ヤクザの仕事というのは、調停や交渉事が多い。人と人の間に入って揉め事を収めたり、金の話をつけたりする。当然、信用がものを言う。信用というのは、日々の地味な仕事の積み重ねでしか得られない。戦後の混乱期のように、一発当ててのし上がるというわけにはいかない。真面目じゃなければ、ヤクザもつとまらないのだ。

・命じられたらすぐに実行する。それがヤクザだ。やらねばならない仕事をだらだらと明日に延ばしたりしない。明日は何が起きるかわからないからだ。そして、すぐにやらなかったがためにチャンスを逃すこともある。ヤクザにとってチャンスを掴むか掴まないかは、それこそ死活問題なのだ。だから、何かを命じられた時、何かを思い立った時、何か問題が起きた時などは躊躇したり面倒くさがらずに行動するように習慣づける。

・それにしても(教師が)、ノイローゼになったり、職場のストレスで病気になって死んでしまうというのも凄い話だ。ヤクザが驚いてしまった。登校拒否だの学校崩壊だのとマスコミは騒いでいるが、そんなのは今始まったことじゃないと思っていた。だが、現実は想像をはるかに超えているようだ。

・ガーデニングをするヤクザなど、普段はそう見かけることもないだろう。

・「今はそういう時代じゃないんです。生徒に掃除など無理強いしたら、それこそ虐待だと言われてしまいます。理由もなく労働を強いた、とね。学校は勉強するところであって、強制労働の場ではない。それが今の親ごさんたちの言い分です」

・ならば、子供たちは一体どういう育ち方をしてしまうのだろう。学校は何もしていないのに等しい。これなら、ヤクザの行儀見習いのほうがよっぽど世の中の役に立つ。

・教師たちもどうしたらいいかわからないのだ。彼らも学校の掃除などしたことがないのかもしれない。

・「ここが学校で、生徒が預かりものだと思うからいけねえんだよ」「ここの教師たちもそうだ。三年間何事も無く学校に居させて、卒業証書を渡して出て行ってくれればそれでいい。そんな風に考えているのかもしれねえ。それじゃ、子供だって舐めてかかる」「いいかい、預かりものなんて思わず、生徒全員が自分の舎弟だとおもってみな」

・親(分)に命じられたことは、無理だとは言えない。無理難題はヤクザの常だ。知恵を使わなければならない。そのためには、この学校のことをもっとよく知らなければならない。

・素人を手にかけたヤクザが組にいられるはずがない。たいていは元組員だったり準構成員だったりするはずだ。

・本物のヤクザというのは、姿勢がシャンとしているものだ。猫背でがに股、肩で風を切って歩くようなやつはチンピラだ。

・ちゃんと返事をするようになってきた。躾をすれば多少ましになるということだ。今のガキどもの問題は、躾をされていないということなのだ。

・若い衆が茶を運んでくる。客が来てから茶が出て来るまでの時間で、その組の教育の程度がわかる。

・「私は二つの大きな時代的な要因があると思います。一つは戦後の民主教育、一つは七十年安保闘争や学園紛争です。双方とも旧秩序を破壊したのです」「新たな価値観を獲得したのかも知れませんが、同時に重要なもの失くしてしまった」

・「いつの頃からか、日本人は恥を知らなくなりました。昔はよく言われたものです。恥を知れってね。人間として恥ずかしくない行いというものがあった。だが、今の日本人かあらはそれが欠落している」

・善悪の区別を教わってこなかっただけかもしれない、そして今の世の中、誰もが善悪の基準を見失っているのだ。

・ヤクザは、相手を説得する時に、考える暇をあたえない。

・彼は気が気ではなかった。敵のアジトに連れ込まれたというだけで、勝負はあらかた決まっているものだ。交渉事は自分の縄張りでやるというのが鉄則だ。

・確かに美人でスタイルがいい。だがそれだけだ。可愛げはないし品性も下劣だ。ヤクザに品性を疑われたら終わりだ。

・ヤクザは、憎まれたり嫌われたりすることには慣れている。逆境に強いのだ。だが、感謝されることには慣れていない。

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手練れの運びに乗って筆者とともに、腹を立てたりほろりとしたり、納得したり憂いたり。最後は大甘の

センチメンタルなジ・エンド。カタルシスになりました。

 

 


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1 コメント

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ふむふむ・・・(笑) (たにやん)
2019-05-08 18:30:38
記事を読んで同感と感じた自分に老いを感じました。
若者はこの内容が理解できるのかなあと
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