処遊楽

人生は泣き笑い。山あり谷あり海もある。愛して憎んで会って別れて我が人生。
力一杯生きよう。
衆生所遊楽。

カーくんと森のなかまたち

2021-08-11 16:54:19 | 

絵   夢ら丘 実果(むらおかみか)

文   吉沢 誠(よしざわ まこと) 

発行所 ワイズ アウル 07年9月初版第1刷 1,500円+税

   

ホシガラスのカーくんは、森の仲間たちと比べて自分が一番ダメな生き物だと元気がない。スマートに飛べない、からだの色が奇麗ではない、声もガーガー、川の魚や虫が獲れない。ぼくなんかいてもいなくてもいいみたい、と。

心の想いを話したら眠ってしまい、夢の中で枯れた森の夢を見たのだった。森の仲間たちから、カーくんが食べた木の実が大地に落ちてやがて芽を出して、そして森になる。カーくんのお陰だと教えて貰って、「みんながいてよかった。ぼくもいてよかった。ぼくもぼくでよかった」

森にまた、新しい一日がはじまりました。

《 作者のコメント 》

夢ら丘 実果

人に生きる希望がなくなるのは、自分が必要とされていないと感じる時ではないでしょうか?(中略)「あなたがいるだけで嬉しい」と伝えることは、人に大きな勇気を与えることと思います。 

吉沢 誠

子供たちには、仲間と一緒に大いに遊んで生きる力を育み、生きることは素晴らしいことだと、身体と心の両方で理解できるようになってほしいと願っています。

#2 

 

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『フィールド新聞』

2021-08-07 11:24:55 | ちょっといい話

私の友人が運営する一般社団法人から活動の近況を伝える機関紙が届いた。『フィールド新聞』である。

   

法人名はその名の通りフィールド。心身のハンデなどのために通常の会社で働けない人たちに働く場や機会を提供し、働くために必要な知識・能力の向上や訓練のための支援事業を展開してる社団法人だ。

現在は利用者が40人。そのうち、半数は事業所の外で行う清掃活動などの仕事に従事、あとの半数は事業所の中で製品の清掃や点検、縫製関連作業、資料の封入作業等にあたっているという。この人たちを支え手伝う職員が11名という陣容になっている。

コロナ禍のため、会議や運動会、ボーリング大会忘年会などが中止となる。一方、在宅就労の開拓やヤフーオークション、メルカリへの積極出品などで目覚ましい成果を上げているという。利用者(=心身不自由者)のバロメーターとも言うべき一般就労は今年も達成し、これまでに一般企業7社に12名が就職したとこの記事が報じている。理事長以下職員諸兄のご努力の賜物であろう。賛辞をお送りさせて戴く。

”ひとりひとりを大切に”がこの事業所のモットー。
格差が広がり差別が進みヘイトが一向に止まない昨今の社会にあって、地域に点った共生の実証の灯りは素晴らしい。日々の営為の充実と成功、そして、何よりそれらの基である関係皆さんのご健勝を祈らずにはいられない。敬礼。

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流人道中記

2021-08-04 16:46:26 | 

著 者 浅田次 郎

出版社 中央公論新社

初 版 2020年3月10日 上巻371頁 下巻294頁

ロード・ムービーならぬロード・ノヴェル。

江戸から蝦夷地へ流される旗本三千石の姦通罪人青山玄蕃とその押送人に選ばれた十九歳の見習与力・石川乙次郎の奥州街道の道記中である。

旅の北上につれて、二人が行きかう人々とのやり取りを通して、当時の市井の生活や貧富、喜怒哀楽が伝わってくる。宿の女将、豪商の丁稚見習い、大泥棒、敵討ち、人情代官などだ。旗本三千石と見習い与力、二人の像も次第に明らかにされてゆく。

武士とは何か、武士道か、日本精神とはなにか、近年著者が問い続けるテーマに一直線であることに気付く。

本の最後、つまり物語の最後で玄蕃は、問わず語りに言う。
「俺はのう、乙次郎。われら武士はその存在自体が理不尽であり、罪ですらあろうと思うたのだ」
以下188頁11行目から290頁4行目までの玄蕃の述懐が、著者の言わんとするところであり、作品の肝と言えるのだろう。7月にアップした『五郎治殿御始末』に共通する。重い。

重い。重かった。久方ぶりのハードカヴァー2分冊。本の本来の手触りを味わった。
実は通販で文庫を注文した。ところが届いたのハード・カヴァー。間違えて頼んでしまったのだった。
現役勤め人を降りて以来、買う本は基本文庫と決めて来た。初版が2020年、最近はこんなに早く文庫化するのかと定価で選んで注文したのが誤りの因。上下巻とも新刊は1,870円。それが上巻320円下巻150円だったのだ。
新刊上下合本は3,740円。それを送料・手数料込みで上下1,147円で買ったという次第。これで商売が成り立っているとは・・・・。今の流通こうなってるんだ、学習しました。

 

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宿命と真実の炎

2021-08-02 19:12:27 | 

著者 貫井徳郎

出版 幻冬舎文庫

656頁

      

この著者の本は初めてになる。文庫の650頁は結構なヴォリュームで持ち歩きも覚悟が要る。

香山二三郎は、「松本清張が没したのが1992年、著者はその翌年に作家デビュー。清張が本格ミステリーにアンチを唱えることで社会派的手法を確立させたのに対し、貫井はデビュー作からして社会派ミステリー的な器に本格謎解き趣向を鮮やかに盛って見せたのである」と解説する。

いわゆる警察小説。シーンの転換が多いがスムーズに読み進められるのはプロットが丹念に練られているからか。

警視庁捜査一課九係の面々に味があるのがいい。物語を引っ張るのは所轄(野方署)の女性刑事と九係のベテラン刑事。方や背が低くがっちりした体格で凹凸の乏しい地味な32歳、方や相棒を理那ちゃん呼ばわりして喜ぶ中年刑事。二人の関係が捜査の進展につれて変化して行く姿が楽しい。

前作品で、警視庁を辞めた超刑事の西城が、脇から助っ人で絡んでくるのは、ファンにとっては嬉しく楽しみに違いない。解説の香山氏によれば、次回作でも登場するらしい。未読のブログ主も早速前作『後悔と真実の色』を読んでおこう。山本周五郎賞作品という。

連続警察官殺害事件が解決した夜、帰宅した理那に元警察官だった父が言う。
「警察がすべてを発表しないことを、お前はアンフェアだと考えるんだな。お前のその正義感は尊いと思う」
「お前はその正義感と組織の間の板挟みになって苦しんでいるんだろう。事情はよく分からないが、お前の苦しみは想像がつく。理不尽なことを理不尽と言えないのは、苦しいものだ。だが父親としてではなく先輩としてこれだけは言える。お前は恥じる必要はない」
「お前の仕事で救われている人は確実にいる。そのことをお前は誇りに思うべきなんだ。迷うのはいい。アンフェアなことに腹を立てる正義感は忘れるな。だが最後は必ず自分の仕事を誇れ。警察官が自分の仕事を誇らなければ、被害者は浮かばれない」

これは、警察組織に限らず、組織で働くすべての人の心をグリップするに違いない。

 

 

 

 

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