新藤兼人監督99歳にしてこの作品。
『キャタピラー』(若松孝二監督)の動と『父と暮らせば』(山田洋次監督)の静の間に位置するか。
声高の反戦映画ではないが、テーマは重い。戦死の夫の後にその弟を夫に迎える寡婦の話や出征の間に女房が舅と出来てしまうなどという話は、我らが洟垂れ小僧の時代には、普通にあった話。だが、平和ぼけの現代日本ではかなり奇異。その意味では、往時の社会や家庭の姿を今に表すのは貴重。
文字通り一枚のハガキで招集され、配属の部隊も向かう戦地も上官の籤で決まるという不条理が、監督の意図の一つでもあろうか。
大竹しのぶの熱演が鼻につくとの評もあるが、宿命に翻弄されながらもしたたかに生き抜く女の生命力の強さには、勇気を貰える。
監督は自身の最後の作品と言うが、最後の最後に『ヒロシマ』を撮って貰いたい、観てみたいと思うがどうだろうか。