処遊楽

人生は泣き笑い。山あり谷あり海もある。愛して憎んで会って別れて我が人生。
力一杯生きよう。
衆生所遊楽。

明治大学マンドリンOB倶楽部

2021-10-26 16:44:45 | 音楽

コロナ規制明けの前日、川口市の総合文化センター・リリアで公演された「明治大学マンドリンOB倶楽部」の定期演奏会に行ってきた。3年ぶりの演奏会とか。

川口駅頭を降りたつと異様な人出、それも高齢者ばかり。この爺さん婆さんの群れは何だろうと訝る。選挙の支援者の集まりか、はたまた講習会の類か。人流はみな私が目指している”リリア”に吸い込まれていくではないか。なんと全部がマンドリン演奏会の観客だった。驚いた。

    

椅子席は2000、満席に近い。隣席密着の観客席。このコンサートの企画段階ではコロナは無かったのだろうか、有っても無視したのか、さらには鎮静を見込んでいたのか。いずれにしても見事な集客振りに感心したのだった。

今日、マンドリンは殆ど聴かない。昭和歌謡でさえ身の周りから消えてしまっている。自分の歌える歌が無い。しかしここにはある。あの古賀メロディーが、哀切極まりない音色と旋律が思い出を引き出してくれる。爺さん婆さんたちの思いだろう。
コロナでカラオケも遠ざけて来た日々。後部座席からは近江俊郎や美空ひばり、都はるみなど親しんできた歌手の歌の演奏に合わせて歌っている声が少なからず聞こえて来た。

 

第2部にはゲストとして川中美幸が登場。飾らない人となりと馴染んだ節回しで上手い語りも加えて場内は大拍手。「日本の歌はいいなあ!」と心底心和んだ午後の2時間となった。

    

チケット料金は4500円、3500円、2500円の3種類。約2000席で2回の公演。営業規模はなかなかのものではなかろうか。というのも、比べてしまうのは今話題の日大の存在である。年間90億円の補助金(税金)を受けながら一部経営側の不明朗な経費処理で法の追及を受けている。

大学にはそれぞれの文化と歴史と使命があろう。マンドリンといえば明治と歌われ愛され親しまれてきた最高学府。是非、この先も庶民とともに庶民の中で庶民を楽しませる大学であってもらいたいと思う。

さて、当方。この日は山手線渋谷駅工事のため安い小田急での新宿経由が利用できず、藤沢から高運賃のJR上野東京ライン。1年半に及ぶリモワークのため遠出は久しぶり。混雑が怖ろしくてグリーン車と相成った。夫婦往復で7800円。「久しぶりのリフレッシュ、安いもんだ」と見栄を張ったのだった。

 

 

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納棺夫日記

2021-10-01 18:47:38 | 

著者 青木 新門

出版 文春文庫

増補改訂版 '09.3.20 第24刷 227頁

   

人に薦められた本は、原則読むことにしてる。新鮮で意外性に溢れ学ぶこと多し。この本もそうした一冊である。

映画「おくりびと」の原作で主役の本木雅弘が感動したと紹介され、映画も本も感銘した御仁から薦められたという次第。映画は私も観ている。果たして原作との差異がいかなるものか。  

自身の納棺士としての日常を本にすることを勧めたのが作家の吉村昭氏だ、と冒頭で述懐している通り、著者の文才と博識にまず敬意を表したい。

第一章はこの異色の職業に就いた経緯やそこに至る自身の半生記。心の葛藤や家族との交錯なども。第二章は、仕事として関わった様々な死を中心に遺族や関係の人々の姿を著者の想いも交え紹介。第三章は、この本の最も肝と思える部分。著者の死生観、仏教論、宇宙物理学、科学と宗教、哲学など自在に自論の展開をする。著者の仏教論の根幹を為すのは浄土真宗であり親鸞の『教行信証』である。実によく勉強されている。よく思索をする人である。低頭するしかない。

終章の"『納棺夫日記』を著して"で思うのは、かの映画後には講演の機会が多く、仏教宗派や僧侶を相手に話すことも多いようだ。彼らは輪廻転生や十王思想、成仏不成仏についてはいわばプロだ。プロに請われて講演や研究会に臨まれている。成り行きで生きるために止むを得ず就いた職業であったが、経験と勉強とでプロに人生哲学・死生観を説いている。見事という他ない。

死は忌み嫌うものではない。『生も歓喜、死も歓喜』を私は共有する。

最後に、著者の思考の一部分となった二枚の画像を紹介しておこう。

▲ジョー・オダネル『焼き場に立つ少年』

▲ケビン・カーター『ハゲワシと少女』

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