BOOK SHOPで仕事を始めて3週間がたつ。
といっても週に3日ぐらいだから、正味1週間も働いたかどうか、というところ。
毎日、日課のように来店する人たちもいるし、
覚えた日本語をやたら使いたがる人とか、いろんな人が来ておもしろい。
その中に、いつも見えない誰かと話している人がいる。
その女性の年齢はわからない。見たところ、ホームレスだと思うのだが、ちゃんとお金は持っていて、たまに買い物をする。
私は密かにその人のことを「イタコさん」と呼んでいる。
イタコさん、今日は両手を宙に浮かせて、笑みを浮かべながらご来店。
「(英語で)違う違う、そうじゃないのよ。え?いや、それはわかるけど、責任感という点においてはそれはどうかと思う」
と誰もいない宙に向かって話している。
まずはCDのコーナーを歩き、
ハードカバーの本の棚で何かと交信している。
目を閉じて、両手はてのひらを上にして、だんだんと高く上がってゆき、まるで心地よい音楽を聞いているかのように
うっとりとした顔になる。
イタコさんは来ると、けっこう長く滞在するのだけれど、とにかくすごい匂いを振りまくので、
他のお客様から苦情が出ることもある。
私たちは謝りながら、消臭スプレーをイタコさんに見えないように、残り香を追いつつ吹きまくる。
イタコさんが、ずっしりした本を持ってカウンターにやって来た。
いよいよお買い上げかと思い、それを受け取ろうとすると、イタコさんはスッと人差し指を立てて、
「なに?いやいや、これでいいのよ。コレがほしかったんだから。わかってるって」
と私のほうを見ながら言うのだ。
でも見ているのは私ではなく、私を通り抜けた後ろのほう。
私は思わず後ろを振り返るが、もちろん誰もいやしない。
見えない存在を説得できたのか、イタコさんはそれを5ドルで買って店を出て行った。
同僚と、「今日は買って行ったね」などと話していると、数分前に出て行ったイタコさんが戻ってきた。
そしてツカツカとカウンターまで来ると、さっき買った本を差し出した。
「返品するんですか?」
と聞くと、イタコさんは不思議な笑みを浮かべながら片手を顔の前でひらひらと泳がせて、そのまま帰ってしまうではないか。
同僚があわてて本を持って追いかけたけれど、
「いらないんだって。返金しますよと言っても、お金もいらないっていうの。おおいなる無駄遣いだと思わない?」
「誰かと話してた?」
「うん、誰かと喧嘩してた・・・・」
昨日、出勤する時、スターバックスの横のベンチにイタコさんがいて、
両手を広げて何かと交信していた。
イタコさんは、ちゃんとした格好をすれば、それなりに知的でキレイな部類に入ると思う。
世の中には自分しかいないかのように生きているイタコさんを遠くから見ていると、
身なりの貧しい乞食に親切に施すと、突如その乞食がお釈迦様に変わってしまうという、子供の頃に読んだ絵本を思い出す。
イタコさんは実はスゴイ人なんじゃないかと思えてくるのである。
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といっても週に3日ぐらいだから、正味1週間も働いたかどうか、というところ。
毎日、日課のように来店する人たちもいるし、
覚えた日本語をやたら使いたがる人とか、いろんな人が来ておもしろい。
その中に、いつも見えない誰かと話している人がいる。
その女性の年齢はわからない。見たところ、ホームレスだと思うのだが、ちゃんとお金は持っていて、たまに買い物をする。
私は密かにその人のことを「イタコさん」と呼んでいる。
イタコさん、今日は両手を宙に浮かせて、笑みを浮かべながらご来店。
「(英語で)違う違う、そうじゃないのよ。え?いや、それはわかるけど、責任感という点においてはそれはどうかと思う」
と誰もいない宙に向かって話している。
まずはCDのコーナーを歩き、
ハードカバーの本の棚で何かと交信している。
目を閉じて、両手はてのひらを上にして、だんだんと高く上がってゆき、まるで心地よい音楽を聞いているかのように
うっとりとした顔になる。
イタコさんは来ると、けっこう長く滞在するのだけれど、とにかくすごい匂いを振りまくので、
他のお客様から苦情が出ることもある。
私たちは謝りながら、消臭スプレーをイタコさんに見えないように、残り香を追いつつ吹きまくる。
イタコさんが、ずっしりした本を持ってカウンターにやって来た。
いよいよお買い上げかと思い、それを受け取ろうとすると、イタコさんはスッと人差し指を立てて、
「なに?いやいや、これでいいのよ。コレがほしかったんだから。わかってるって」
と私のほうを見ながら言うのだ。
でも見ているのは私ではなく、私を通り抜けた後ろのほう。
私は思わず後ろを振り返るが、もちろん誰もいやしない。
見えない存在を説得できたのか、イタコさんはそれを5ドルで買って店を出て行った。
同僚と、「今日は買って行ったね」などと話していると、数分前に出て行ったイタコさんが戻ってきた。
そしてツカツカとカウンターまで来ると、さっき買った本を差し出した。
「返品するんですか?」
と聞くと、イタコさんは不思議な笑みを浮かべながら片手を顔の前でひらひらと泳がせて、そのまま帰ってしまうではないか。
同僚があわてて本を持って追いかけたけれど、
「いらないんだって。返金しますよと言っても、お金もいらないっていうの。おおいなる無駄遣いだと思わない?」
「誰かと話してた?」
「うん、誰かと喧嘩してた・・・・」
昨日、出勤する時、スターバックスの横のベンチにイタコさんがいて、
両手を広げて何かと交信していた。
イタコさんは、ちゃんとした格好をすれば、それなりに知的でキレイな部類に入ると思う。
世の中には自分しかいないかのように生きているイタコさんを遠くから見ていると、
身なりの貧しい乞食に親切に施すと、突如その乞食がお釈迦様に変わってしまうという、子供の頃に読んだ絵本を思い出す。
イタコさんは実はスゴイ人なんじゃないかと思えてくるのである。
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