太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

「味はバターで決まります」

2023-08-09 11:35:57 | 食べ物とか
昔の、雪印バターのテレビコマーシャルのコピーが好きだ。
プロのコックがフライパンでオムレツを作る過程が、手元だけの映像で流れる。
ジュー、という良い音がする。
魔法のような手際の良さで、ふっくらとしたオムレツがフライパンの片側に集まり、見事なアーモンド型にできあがっていく。そしてコピーが流れる。

味はバターで決まります

私の記憶に残る秀逸なコマーシャルだ。
個人的には、北海道のよつ葉バターが好きだけどね。


バターはダイエットの敵だと思われている。
確かにそうかもしれないが、そして私もバターを我慢したり、ほんの少しだけ使ったりしていたこともあったが、数年前にその考えを改めた。
それは、美味しいものは美味しく食べたい、というシンプルな欲求から。

とっくに人生を折り返して、食べるものを目の前にして思うことは、あと何回これが食べられるかということだ。
図々しく長生きして、何百回も食べる機会がありそうでもあるが、うっかりサイナラしてしまうかもしれない。それは明日かもしれないのだ。
そう思ったら、どんなものも100%好きな食べ方で食べたい。

トーストやパンケーキに、カロリーを気にして、ぽっちりのバターを乗せるのはやめた。
カリっと焼けたトーストに、たっぷりのバターが溶けたのをほうばる。
香ばしい外側と、ふんわりとした真ん中の部分にしみたバターのちょうどいい塩気が口の中に甘く広がっていく。
端っこのほうに蜂蜜を垂らすと、これまた蜂蜜とバターがよく合う。

パンケーキの上にたっぷりとバターを塗り、2枚目のパンケーキにも塗る。ナイフで四つに切ったところにメイプルシロップをかける。バターをけちっていたときには、ぽそぽそ感があったパンケーキが、しっとりとする。

むろん、毎日これを食べていたら、そりゃブクブク肥えるだろう。
だからたまーに、ほんとにたまーにしか食べないようにしている。
ただ、食べるときには、美味しく食べたい。

昨年、フランスに行った時、私は1日に2個ずつクロワッサンを食べた。
クロワッサンを作ったことがあるが、あれはバターの薄い板状のものを生地に練りこんであり、まさにバターを食べているようなもの。
でも、フランスのクロワッサンは特別に美味しかったから、旅行の間だけ、それを自分に許して、心ゆくまで堪能した。
そして、そうしてよかったと思う。

食べたいものを、食べたいときに食べられるのは、それができる健康と環境があるからこそ。
年をとると、当たり前に思っていたことに謙虚になり、残りの時間を思って貪欲になるものである。