太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

変化を愉しむ

2023-08-17 09:12:20 | 日記
夫が、転職をした。

2年余り前に始めたコンストラクションの仕事がとても好きで、同僚たちもボスもみんないい人たちで、今までで1番好きな仕事だ、と夫はいつも言っていた。
夏前に、ボス(44歳)がいきなり自宅を4億円で売り、豪華なキャンピングカーで家族でアメリカ本土をロードトリップの旅に出た。期間は未定。
ビジネスパートナーがそのあとをみていたのだけれど、夏にほぼ契約確定だった超大型物件が、まさかの契約流れになった。

建築の仕事は申請許可がおりないと手がつけられない。予定の仕事はいくつかあるのだけれど、許可待ちで、今週は仕事がないから休みだとかいったことが続いて、人が辞めていき、3人が残った。
ビジネスパートナーは、失業保険を申請すれば引き受けると言ってくれていたが、説明もなしにいなくなってしまったボスにも不信が残るし、先のことを思うとここらが潮時だと夫は判断し、職探しをすることにしたのだ。


ハワイに移住してから12年、夫の転職にようやく慣れ、何年か前までのようにジタバタはしなくなった。
最初の転職のときは私はうろたえたが、夫の持病のウツが出て、初めてみるウツ状態に怖くなった。
その次からは、辞めたい、という夫に、ほとんどの人は嫌だけど我慢しているんだから、などともっともらしいことを言って説得したつもりになっていたけれど、そういう理屈は夫には通用しないことを私は学ぶ。
常識だと思い込んでいたことも、実は真っ赤なウソなのだ。
それを私が信じたとき、初めてそれが現実になるだけのことなのに。



夫はけして怠け者ではないどころか働き者で、私よりもずっと良い人間だ。
その人が、もうこれ以上ここにはいられない、というのだ。だったらそれでいいじゃないか。



という気持ちになるのに、何年かかったか。

前々回の転職のときは、職場の中で逆・人種差別にあって(夫だけが白人)、挨拶しても返されないし、「汗臭くてかなわない、とみんなが言っている」とマネージャーに言われて、デオドラントを変えたりしたのだが、オフィスで働く人たちは汗をかかないが、肉体労働をする人が汗をかくのは当たり前。
人に向かって「臭い」と平気で言う人たちの中で、2年も仕事をしていたのだ。
変化を恐れるあまり、臭い事件のとき、そんなとこはもう辞めな、と言ってあげられなかった自分がつくづく情けない。


自分に正直に、自分の気持ちを大切にして、変化を恐れない夫を私は今、尊敬すらする。
はたから見れば、どんでん返しの変化をしながら生きてきたようにみえる私だけれど、実はとても変化を恐れていて、何が待っているかわからない場所に飛び込むぐらいなら、目の前の不満に慣れて見て見ぬふりしていたいタイプ。
だから、変化すべきときには、背中を飛び蹴りされてようやく飛び降りることになる。


夫の何回目かの転職のとき、私はまだジタバタしていて、ぽろりと韓国人に愚痴を言ったら、
「(職を転々とするのは)評価が落ちるんじゃ・・」
と言われて、「そんなこたぁ百も承知じゃ!!」と頭に来たが、なんのことはない、私自身が思っていることをそのまま人に言わせただけ。
人から言われることは、自分が思っていること。
人からされることは、自分が自分にしていること。


だから、転職しそうになるときには、

「最善のことだけが起きてる」
「なんだか知らないけど、これでますますうまくいっちゃう」

と思うことに努め、私は私のことを淡々とやるようにしてきた。
私も仕事をしているし、絵もまあまあ売れているし、しばらく夫が働かなくても困らないのも確か。

すると韓国人が、言った。
「〇〇(夫)は上手に仕事を見つけて来てスゴイよね。誰でもあの人に会えば、すごくいい人間だってわかるから、採用したくなるんだよ」



仕事を探し始めたのが先週のこと。
最初に応募したところの面接が昨日で、その場で採用で、今日から仕事に行っている。
同じコンストラクションの仕事だが、ちゃんとした組織で、1年勤務すれば年に2週間の有給休暇や、リタイア後の投資なども用意されており、さらには前の会社と同じ時給で採用してくれた。
日本では考えにくいけれど、有給休暇のない職場は多い。私の職場も、ようやく今年から年に5日の有給休暇が認められるようになったばかり。


先ほど、昼休みの夫から電話があった。

「初日の感想はどう?」

「うん、うまくいってるよ」

明るい夫の声を聞いてほっとする。
変化を愉しむということは、自分の人生を、相手を信じる、ということでもある。
今までだって大丈夫だったように、これからだって大丈夫なんだ。
変化したい!とは思わないまでも、少しは変化を恐れなくなっている。それは、開き直りでも腹を括ったのでもなく、信じる力がついてきたのだといいなと思う。