太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

インターミッション

2020-07-28 08:44:25 | 日記
コロナウィルス騒ぎが何であれ、どこかの国の、誰かの話ではなく
地球に住む全員が、同じことに直面しているということは、今までに起きたどんなこととも違っている。
誰も経験したことがないことが起きているのだから、
その先に広がっている景色もまた、誰も見たことがないものなのだろう。

ロックダウンになり、毎日家にいて何か月も過ぎたとき、
私はもう以前の生活には戻らないような気がした。
職場に戻ることはなく、どんなものかわからないが、まったく違う世界が始まるのじゃないかと思っていた。

だからひと月前に職場が再開したとき、少し戸惑った。
なんだ、あの日々に戻るのか。
あの日々が嫌いだったわけじゃなく、ただ私は、何が始まるのか期待していたのだ。

けれど、蓋を開けてみれば、前と同じなんかじゃなかった。
その場所は確かに3月まで私が働いていた場所で、そこにいる人達も同じ顔触れだけれど、何かが違う。
私自身、3月の私とはまったく違っている。
このひと月、まったく顔を合わせていない同僚たちがたくさんいる。
会うのはいつも同じ人ばかりで、
他の人たちはスケジュール表に名前だけがあって、まるで別の次元にいるような感じ。

1日に何万人という人たちがハワイに訪れ、
私は週末を指折り数えながら仕事をし、毎週海に行き、細々と作品を創り、
月に1度、ギャラリーを回って作品を補充していた日常という舞台に、
突然、緞帳が下ろされ、そのまま今に至っている。

私は観客席にいて、次のシーンを待っている。
再び、舞台が現れたとき、私は何を観たいだろうか。
また同じストーリーを観たいだろうか。
私は観客でもあり、俳優の一人でもあり、監督でもあるのだから
どんな第2章にするのかは私次第。

ハワイシアターの舞台の合間のインターミッションは、ロビーの2階に用意されたバーで
ワインを飲みながらおしゃべりをしたりする。
私は今、そのインターミッションにいる。
休憩を楽しみながら、次の展開のシナリオを描き、幕が開くのをワクワクして待とう。









それたハリケーン

2020-07-27 11:39:32 | 日記
ハワイの真上にやってくるはずのハリケーン「ダグラス」が
東にそれて、ハワイ諸島をかすかにかすめていった。
もし真上に来れば、かなり被害が出るのではと言われていたから
窓に板を打ち付ける家や、オフィスでは雨漏りに備えてパソコンにカバーをしたり
即席の避難所になったコンベンションセンターには、避難したい人々が並んだ。
海抜0mじゃないかというところに住んでいる人も多いのだ。

太平洋の真ん中にあって、ハワイはハリケーンの被害にあうことが滅多にない。
最後にあったのは30年前だという。
日曜日の夜の8時頃には暴風雨のはずが、台風ぽい風が吹いただけで
雨はそれほどでもなかった。
驚くべきは、停電しなかったこと。
日本と違って、ハワイはすぐに停電する。
ハリケーンじゃなくても、する。
強風で電線が切れれば、半日以上は電気が止まるので、
土曜日のうちに、出かけることは全部やって(海に行くとか、チャイナマンズハットまで泳ぐとか、買い物とか)
日曜日は、停電してもいいように二日分の夕食を用意し、
観たかったDVDを観て、氷をたくさん作ったりしたのに。
でも、どこにも被害がなくて何より。


パールハーバーで働く友人から、テキストが来た。
私の職場と同じ時期に再オープンしたのだけれど、暇で暇で、
とうとう月曜と火曜はcloseすることになったらしい。
正社員は労働時間が3分の2、パートの人は半分になったが、解雇されないのが不思議だといった。

どこも同じだなあ。
3月のロックダウン時の新規感染者が30人ぐらいで、
その後、1日に1人とかゼロの日がずっと続いていたのが、今は連日60~70人。
ハワイに旅行者が戻る日はいつのことやら。

そんな中でも、私のオリジナルの作品が、2か所のギャラリーで3点も売れた。
いまだ閉まっているワイキキのギャラリーから、急遽、私のほかのオリジナルを
開いている店に移すことになった。
ありがたい、ありがたい。
家でボンヤリしてられないぞ。
と言いつつ、ぼやぼやしているうちにお昼になってる・・・・・



チャイナマンズハットまで泳ぐ

2020-07-25 16:38:30 | ハワイの自然
ハリケーンのダグラスが明日あたりからハワイにやってくる。
というのに、今朝も6時に起きて、コーヒーだけ淹れるとカイルアビーチでボディボードをやった。
家に戻り、サーフボードを車に積んで、チャイナマンズハットに向かう。

チャイナマンズハット

名前の通り、帽子を浮かべたような形のチャイナマンズハットが、なぜだか私はとても大好きで、
近所にこんな場所があることが嬉しい。
夫は子供のころから、この島には何度も行っているが、私は行ったことがないので
今日は島まで行こうということになったのだ。

島までは、普通はカヤックで行く。
カヤックを出すのが面倒なので、サーフボードに乗って、手で漕いでゆく、という。
泳げなくて、深い水が怖くてビビリの私は、及び腰になる。
「ダイジョウブ、ダイジョウブ」
こともなげに言う夫に引っ張られるようにして、出かけた。

ライフジャケットは必須!
笑顔が引きつっている。
私が前のほうに腹ばいになり、夫がその後ろに腹ばいになって、両手で漕ぐ。
穏やかな海でも、波がときどき押し寄せる。
その波に逆らって漕ぐのだから、疲れるだろう。
すごく近くに見えるのに、なかなか近づかない。
富士山もそうだ。
富士山の8合目まで行くと、山頂が、ささっと駆け上がれば届きそうな距離に見える。
私はただ乗っているだけなのに、気が疲れて
「もう戻ろうか」と何度も言うので、
「頼むから黙っててくれる?僕は楽しんでるんだから」と言われてしまう。

漕ぐこと20分。

チャイナマンズハットに到着

あのビーチから漕いできた

近くで見ても、帽子だ

サーフボードを岩に立てかけて、岩をよじ登るようにして裏側にむかって歩く。

海鳥の巣がたくさんあって、卵をあたためている。
ここには滅多に人が来ないので、彼らにとってはパラダイス。
人が来ても逃げないでのんびりしている。


裏側には、素敵なちいさいビーチがあった。
角がとれた溶岩や(ハワイ語でアホイホイ)、鋭利な溶岩(ハワイ語でア、アー)が
混在している。
長年をかけて水に侵食されてできた穴から、クジラの潮吹きみたいに海水が噴き上げる。
プライベートビーチでしばらく遊ぶ。




ようやく笑顔。

20分漕ぎ続けた人

夫の帽子の中に、ジップロックに入れた携帯電話と車のカギを入れていった。
いまに落ちるんじゃないかと私は気が気じゃなかった。

そろそろ戻ろう。


帰りは波に押されて、15分もかからなかったと思う。
途中で、海亀が横を通り過ぎた。

もうすぐ。

到着。



この写真でいうと、左側に見える部分がビーチになっている。
陸からだと、この部分は見えない。

無人島探検、楽しかった!





毛深いコンプレックス

2020-07-24 14:46:55 | 日記
自分が毛深いと気づいたのは、小学6年生のときだ。

母には、こういう話は言いにくい雰囲気があったので祖母に言うと、
「毛深いのは情が深い証拠だよ」とか
「シロは色が白いから目立つんだよ」と言う。
確かに私はよく「白いねー」と言われていた。(ハワイに住むまでは)
毛が薄くなるなら、薄情と言われたっていいと思ったし、色白だから目立つのではなく、実際に毛深いのだと知っていた。

以来、体毛は私のコンプレックスになっていたが、
中学・高校は気にしながらも、特に何か手立てをするわけでもなかった。
女子校というのもあったし、学校にプールがなかったので水着になることもなかった。
高2の時、友人が当時走りだったレーザー脱毛で、脇を脱毛した。
東京まで行き、痛い施術に何十万もかけたのに、1年後にまた生えてきてガッカリしていた。

二十歳を過ぎ、ますますコンプレックスは強くなる。
けれど、レーザー脱毛の話を覚えていたから、自己処理をするようになった。
剃刀で剃って、見違えるようにツルツルになった脛を見て狂喜したが
翌日の昼間には、ツンツンした毛先が表面に出てきた。
それをまた剃る。翌日にはツンツン出てくる。
剃るたびに、次から生えてくる毛がたくましくなってゆくような気がし、恐ろしくなった。


剃るのはダメだと思い、毛抜きで抜いてみた。
手間はかかるけど、毛が生えてくるまでに時間がかかるようになって喜んでいたら、
皮膚の表面下で毛が伸びてゆく、ということが起きた。
こうなると、皮膚を破ってそれを出さねばならず、毛穴は赤みがかって痛痒く、肌自体が荒れてくる。


変遷を経て落ち着いたのが、脱毛ワックス。
付属の小鍋でワックスを溶かして、肌に乗せて一気にはがす。
台所でワックスを溶かしていると、
「そんなこと気にするなんて」とでも言いたげに、母が眉をひそめたものだ。

ストッキングの表面から、毛がつくつくと出ているのを見たときの情けなさ。
準備なしに生足になれない悲しさ。
体毛のことなど気にしたこともないであろう、つるつるの脚や腕の人たちが羨ましくて仕方がなかった。


ところが、私のコンプレックスは突然終止符を打つ。

今の夫を紹介してもらうことになり、夫がハワイ出身だと聞いた私は、すぐにエステを予約した。
『ハワイは年中夏だからね』
ということなのだろうが、まだ相手に会ってもおらず、結婚するかどうかもわからないのに、
どうしてそういう行動に出たのかは謎。
4年通って、私は30年越しの夢であったツルツルの脚と腕と脇を手に入れたのである。

なぜもっと早くにやらなかったのかと思うけど、
痛くて高くて永久じゃない、昔のレーザーの頃よりもテクノロジーは発達し、
それほど高くもなく、痛くもなく、1年後に生えてもこない脱毛ができるようになっていたのだから、そのタイミングでよかったのだろう。




夫は、背中にまで体毛が生えている。
放っておくと、全部の体毛がクルンクルンにカールしながら伸びてゆくので
暑くてたまらず、アタッチメントのついたシェーバーで、定期的に全身の体毛を処理する。
「こんなにたくさん毛があるのに、なんで頭にはナイんだろう」
と言う夫に返す言葉もない。
「あの時、僕も一緒に永久脱毛すればよかった」
確かに、私が行っていたエステにはメンズセクションがあったっけなあ。


体毛のことを気にせず、年中、素足生足で過ごせることが夢のようであるが
脚を触るとジョリっとしたときの、あの悲しさを私は忘れてはいない。
永久脱毛は、私が自分にした1番の投資だと信じている。







美容院の指名制

2020-07-24 09:29:42 | 日記
ようやく予約が取れて、5か月ぶりに美容院に行った。
そろそろ予約しようと思っていたときにロックダウンし、髪の毛は伸び放題。
前髪は素人芸で切るのでいいとしても、髪の毛のボリュームはどうにもならない。
私は髪の毛が多くて、1本1本がしっかりしている。
昔はポニーテールがポニーではなく馬で、
一つに編み込むと、しめ縄みたいになったものだ。
今はそれほどではないにしても、放っておくと重たい感じになってくる。

私が行く美容院は、全員日本人のスタッフで、フリーでもいいが、指名することもできる。
日本人以外のヘアスタイリストを私は信用していないので、日本人であることが必須だ。

私が何年も指名してきた人がいる。
ものすごく気に入っている、というわけでもない。
でも人柄がいいし、正直、たまには別の人にやってもらいたいと思うこともあるが
突然指名をしなくなったら、その人は傷つくんじゃないかと思うとできない。

たとえば、指名なしで行くとする。
いつも指名していた美容師さんは当然私に気づく。
今回は指名してくれなかったんだな、と思うだろう。
気に入れば指名するし、そうでなければ指名しない。
そういうことはよくあることなんだろうけれど、なぜか、その人に会うのが気まずくて、居心地が悪い。
それで毎回、その人を指名してきた。

こんなことを思うのは私だけなんだろうか。
指名するには指名料がかかる。
指名料を払って、もやもやするなんて。


こんな時、思い出すのは、ワカサギ釣り事件。
昔、友人家族と信州にスノーボードに行った帰りに、諏訪湖に寄った。
そこでワカサギ釣りをする予約をしてあったが、行ってみたら思っていたような感じではなく、トーンが下がってしまった。
その隣に、好きな作家の美術館があって、できればそちらに行きたい。
友人に断って、自分たちは美術館に行こうという夫に、
せっかく予約してくれたのに、土壇場になって断ったら気分を悪くする、と私がごねる。
その時、夫が言った言葉を私は忘れない。

「人の気分を悪くするのはダメで、自分の気分を悪くするのは良いの?」

後頭部をガツンとはたかれたような気持ちだった。

友人が外でたばこを吸っている間に、受付で二人キャンセルし、彼らの分の代金を払った。
そして友人に自分たちは美術館に行くから、ここで落ち合おうと言った。
友人はあっさりと、「いいよー」と言った。

断ったら相手が気分を悪くするかどうか、それは相手でなければわからない。
それを、ああじゃないか、こうじゃないかと勝手にシミュレーションするのは私の悪い癖だ。
美術館でおおいに楽しんだ2時間後、落ち合ってみたら、彼らが釣ったワカサギは、たったの1匹。
ほんとうに行かなくてよかったと思った。


ワカサギ釣り事件で学んでいながら、いまだ私は同じことをやっている。
ロックダウンの直前、その美容師さんが、新しいお店のスタッフとして転勤することになった。
その人は栄転。私はこれで指名の問題から解放され、ホッとした。
今回、指名なしで行った。
担当してくれたのは若い女性で、いつもと違う感じの仕上がりで新鮮だった。
その人もとても感じがよくて、ふと湧いてきた、次に指名しようかという思いを
即座に切り捨てた。
今後は出たとこ勝負、フリーで行くことにする。
私のような煮え切らないタイプの人間は、指名制にはほとほと向いていないと
今更のように思い知るのである。