太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

橋を焼くな

2023-08-22 07:44:11 | 日記
英語のことわざに、

Don't burn the bridges.

というものがある。
直訳すると、「(渡って来た)橋を焼くな」。
過去の人間関係を良い状態にしたまま、次に進む、とでもいうのだろうか。
橋は人との繋がりということだろう。

今回の夫の転職。
前のボスが家族で本土に無期限のロードトリップに出かけてしまい、とれるはずの大型契約が流れ、人が辞めていき、仕事はあるものの、建築申請が下りるまでは始められず。
それで結局、夫は次の仕事を探すことにした。
最初にみつけた会社に応募したら、数日後に面接、3分の面接のあと、翌日から仕事、サラリーも前のところと同じ額から、というとんとん拍子に進んだ。

仕事を始めて三日目、夫は初めて新しいボスに会った。
実はそのボスと、前の会社のボスとは15年来の友人で、前の会社のボスが夫のことをとても高く評価していたという。

たまたま見つけた会社に応募した。

これは偶然だったんだろうか。
数ある会社の中から、たまたま前ボスと長年の友人が経営する会社を選ぶなんて。
世間は狭い。狭い島の、まして同業であればなおさらで、どこかで誰かと繋がっていても不思議はないけれど。

新しいボスに初めて会った、という話をしたとき、夫が

「Don't burn the bridges」

と言ったのだ。
喧嘩別れをしたり、気まずい終わり方をした人と、どこでまた縁がつながるかわからない。
もしも前のボスとの関係が良くなかったら、また違った結果になったかもしれない。
母が、

「仕返しなんてのは、何の得にもならないよ。どんな相手にも、後足で砂をかけるようなことをしたらいけない」

と言っていた。
良い人になろうとして、あれもこれも背負い込んでイライラしていた私に、

「あんたは自分で思うほどいい人じゃないんだから無理しなさんな」

と言っておきながら、仕返しなどするな、と言うのだ。
私はそれほどいい人じゃないんだから、仕返しぐらいしたっていいじゃん、と憎まれ口をたたいたけれど、しかし母が言いたいことはわかる。


山奥に潜む仙人でなければ、人は人とかかわらずには生きていけない。
過去に、気まずい別れ方をしてしまった人たちの幸せを願い、今歩いている橋を焼かずに生きていこうと思う。




ベッドマット

2023-08-20 16:52:00 | 日記
朝、起きた時に身体が痛い、と夫が言い出したのは今年に入ってからだ。
5年前、目に見える大きなダニがベッドマットや枕に発生し、マットレスを捨てて買い直した。
祝日セールを狙って、ホノルルのベッドマットの店に行き、いくつも試した中で、その店で1番固いマットを購入した。

そのお値段、約4000ドル(55万円ぐらい)。しかもセールで。

ベッド本体じゃなく、マットだけ。
ローテーションしながら使えば最低10年はもちますよ、と店員は言ったけれど、あれから5年しかたってないじゃないか。


実は私はマットが柔らかくなったことをまったく感じない。
私は昔から体の凝りとか張りを感じないタイプで、マッサージに行くと決まって
「机を押しているみたいだ」
とか
「こんな指が入らない背中は見たことがない。内臓は大丈夫ですか」
などと言われてきた。
そんなことを言われても、わからないのだから仕方がない。
私の肉体は相当我慢強くできているようなのだ。

だから、私は別に今のマットでも構わないのだが、夫がしつこく言うので買いかえることにした。
最近、我が村にもベッドマットの専門店ができ、そこに行った。
9月にある祝日のセールが始まっているので、それ狙いだ。
ショールームに並ぶ、たくさんのベッド。

「この店で1番固いのはどれ?」

単刀直入に聞き、2つに絞って横たわってみる。

「どう?」

夫が私に聞く。

「うん、いいネ」

夫が店員と話している間に、私は他のベッドにも寝てみたが、何が違うかよくわからない。
柔らかいかと言われれば、そうみたいだし、固いかと言われたら、そうかもしれない。
私に聞かずに自分が気に入ったのを買ってくれ、と思う。

5分ほどで、夫が決めた。
恐る恐る値段を聞いてみた。4000ドル以下であるように祈る。

「1500ドルちょっとになりますねー」

え?安い!
安くないのかもしれないけど、4000ドルに比べたら激安。
いいじゃんいいじゃん、これなら2つ買えるじゃん。(いらないけど)
マットを保護するカバーは、今使っているものがサイズが微妙に合わないこともあるかもしれないが、なんとか押し込んでみよう、と話していたのだが、

「保護カバーも、どうせならいいやつを買おう」

つい調子に乗って、私はそんなことまで言う。

来週、新しいマットが届く。
10年もつのか。







ジーンズがお蔵入り

2023-08-19 07:11:51 | 日記
以前と同じものを食べて、同じように体を動かしているのに、贅肉が下半身に溜まってゆく。
50代半ばぐらいまでは、下腹部は平らだった。
それが、まるで別の生き物のように下腹に脂肪が集まり、さわるとひんやりしていて不気味だ。
体重も、ちょっと前までは、ほんの少し気をつければスルっと元の体重に戻ったのが、今はテコでも動かない。
顔も上半身も変わらないので、それほど太ったようには見えないのがいいんだか、悪いんだか。


私の身体、いったいどうしちゃったんだろう。(年とったんだよ・・・)

仕事でよく動いていてこれだから、仕事を辞めて家にいるようになったらブクブクと肥えていくような気がする。


今日、外出するのに、久々にジーンズを履いてみた。
それは10年前のものに、大人用では私のサイズがみつからずに、ジュニアのセクションで買ったクロップドパンツ丈。
最近履いてなかったのは、贅肉がついているのがわかっていたから、履いてそれを確認するのが怖かったのだ。

案の定、太もものあたりで「ん!」となり、ボタンをしめるときに「んん!」となったが、なんとか押し込んだ。
今日、着ていきたいシャツにはこれが1番合うので、無理して履いて出かけた。
運転していると、血流が止まるんじゃないかと不安になる。
くしゃみでもしたら、ボタンが飛ぶかもしれない。
用事を済ませ、帰宅してそれを脱いだら、下半身の血液がいきなり巡ったような開放感。

引き出しの中に、これを買った時のサイズのジーンズが何本もある。
どれもお気に入りだが、履けない服を後生大事にとっておいてもしょうがない。

でも、もしまた痩せたら?

と、かすかな期待があって、処分できずにいる。


「あたしらの年齢で下半身が痩せるときには、上半身は骨皮で首なんかスジスジで、腕の血管はぼこぼこに浮き出てるんじゃない?」

ホラーのようなことを言って脅すのは同い年の友人。
むろん反論などできようもない。

過去の栄光にすがり、着れなくなったものを無理して着て、窮屈な思いをするよりも、今の自分に合ったものを気分よく着るほうがいいとは思っても、

でも、また痩せるかもしれないし・・

と、そこに戻ってしまう。
大昔、まだ二十代だった頃、デパート内のブティックで働いていた友人から聞いた「9号のオンナ」の話を思い出す。
その人は常連のお客さまなのだが、ちょっとふくよかなのに9号サイズの服しか買わない。
腕回りとかぴちっとしてしまうので、上手に11号の服を勧めるも、
「でも私、9号だから」
の一言で却下。
「小さいサイズを無理して着るより、自分に合ったサイズを着るほうが痩せてみえるんだけどなぁ」
と友人は言っていた。


ああそれなのに、結局履けないジーンズが詰まった引き出しをそっと閉めた。
お蔵入りしたジーンズたちの運命や、いかに。







やっぱりね・・・

2023-08-18 07:23:36 | 日記
銀行の小切手帳のことなんだけど。
小切手がなくなってきたので、銀行に新しい小切手をオーダーした。

6月20日に。

3週間以内に郵送で届くといっていたのに、1か月たっても来ない。
それで、銀行に用事があって行ったついでに確認してみたら、IDのアップデートが必要だったので家の固定電話に電話をしたが、誰も出ないのでそのままになっていた、ということだった。(その辺の記事はコチラ

銀行に届けてある代表電話は義両親の家の固定電話だが、携帯電話の番号だって届けてあるんだから、そっちにかけてくれたっていいんじゃないかと思うんだけどね。
いまどき固定電話なんか、飾りだもの。

今さらそれを言ってもどうにもならないので、その場でIDを再確認して、今度こそオーダーした。

それが7月20日

待てど暮らせど来やしない。
それで今日(8月17日)、ギャラリーからの小切手を換金するついでに確認してこようと銀行に出かけた。
銀行に着いて、小切手を出そうとしたら私が持ってきたのは小切手が入っていた封筒だけで、肝心の中身はダイニングテーブルの上に置き忘れてきた・・・_| ̄|○
慣れっこだけど自分にガッカリしつつ、それでも小切手帳のことだけはハッキリさせようと窓口に行った。

コンピューターで調べてくれた窓口係の女性が言った。

「7月24日に郵送した、ってことになっているけど、まだ届いてないんですよね?」

ないからここに来たんじゃないか。
もうちょっと調べてみると言って、女性が席を立った間に、シュートメにテキストメールを送った。

『ひょっとして、銀行からの小切手帳を受け取ってなんかいないよね?1か月前にオーダーしたのにまだ来てないんだけど』

実は義両親は今朝、ハワイ島にプチバケーションに出かけたばかりで、気が引けたのだけど、メールならいつでも読めるし。

戻って来た女性が、

「今日、もう一度オーダーし直して、今度はこの支店に送るようにして、来たらあなたの携帯電話に連絡する、というのはどうかしら」

と言う。
それなら、送った、受け取ってない、のやり取りはなくなるし、店まで受け取りに行く手間などたいしたことじゃないので、そうすることにした。
結局、振り出しに逆戻り。
6月20日にオーダーしたはずが、2か月たった今、それはなかったことになっている。まったくのゼロ地点。

いい加減、は、おおらかさ。
ゆるさ、は、ゆとり。
呑気、は、のんびり。
そうでも思わないと、胃がキリキリしてくる。

3度目の正直でオーダーして、帰宅し、シャワーを浴びたところにシュートメから電話。

「何週間か前に小切手帳を受け取ったんだけど、家にいるなら、私の書斎に行ってみてくれる?」

私は素っ裸にタオルだけひっつかんで、義両親の家まで走る。
シュートメが言う場所に小切手帳が入っていたが、それは義両親のもの。
何か所か、言われた場所を見てみたが、私たちの小切手帳はなかった。

「じゃあ私たちのだけだったのねえ。あまりよく見ないでそこに入れたけど」

素っ裸にタオル1枚で自分の家まで走る。
どうか今、誰も来ませんように。
猫たちが、なにごとかと走る私を見送っている。



やっぱりね。
もう驚かない。
驚かないけど、なんとかならんか、とは思う。

6冊の小切手が入っているファイルが届くのだが、今回、6冊目の小切手を使い始めたと同時にオーダーしたから、まだ最後の小切手はずいぶん残りがあって困ることはない。
でも、もし無事に受け取ることができたら、今度オーダーするときには、5冊目を使い始めるあたりにオーダーしようと心に誓う。





変化を愉しむ

2023-08-17 09:12:20 | 日記
夫が、転職をした。

2年余り前に始めたコンストラクションの仕事がとても好きで、同僚たちもボスもみんないい人たちで、今までで1番好きな仕事だ、と夫はいつも言っていた。
夏前に、ボス(44歳)がいきなり自宅を4億円で売り、豪華なキャンピングカーで家族でアメリカ本土をロードトリップの旅に出た。期間は未定。
ビジネスパートナーがそのあとをみていたのだけれど、夏にほぼ契約確定だった超大型物件が、まさかの契約流れになった。

建築の仕事は申請許可がおりないと手がつけられない。予定の仕事はいくつかあるのだけれど、許可待ちで、今週は仕事がないから休みだとかいったことが続いて、人が辞めていき、3人が残った。
ビジネスパートナーは、失業保険を申請すれば引き受けると言ってくれていたが、説明もなしにいなくなってしまったボスにも不信が残るし、先のことを思うとここらが潮時だと夫は判断し、職探しをすることにしたのだ。


ハワイに移住してから12年、夫の転職にようやく慣れ、何年か前までのようにジタバタはしなくなった。
最初の転職のときは私はうろたえたが、夫の持病のウツが出て、初めてみるウツ状態に怖くなった。
その次からは、辞めたい、という夫に、ほとんどの人は嫌だけど我慢しているんだから、などともっともらしいことを言って説得したつもりになっていたけれど、そういう理屈は夫には通用しないことを私は学ぶ。
常識だと思い込んでいたことも、実は真っ赤なウソなのだ。
それを私が信じたとき、初めてそれが現実になるだけのことなのに。



夫はけして怠け者ではないどころか働き者で、私よりもずっと良い人間だ。
その人が、もうこれ以上ここにはいられない、というのだ。だったらそれでいいじゃないか。



という気持ちになるのに、何年かかったか。

前々回の転職のときは、職場の中で逆・人種差別にあって(夫だけが白人)、挨拶しても返されないし、「汗臭くてかなわない、とみんなが言っている」とマネージャーに言われて、デオドラントを変えたりしたのだが、オフィスで働く人たちは汗をかかないが、肉体労働をする人が汗をかくのは当たり前。
人に向かって「臭い」と平気で言う人たちの中で、2年も仕事をしていたのだ。
変化を恐れるあまり、臭い事件のとき、そんなとこはもう辞めな、と言ってあげられなかった自分がつくづく情けない。


自分に正直に、自分の気持ちを大切にして、変化を恐れない夫を私は今、尊敬すらする。
はたから見れば、どんでん返しの変化をしながら生きてきたようにみえる私だけれど、実はとても変化を恐れていて、何が待っているかわからない場所に飛び込むぐらいなら、目の前の不満に慣れて見て見ぬふりしていたいタイプ。
だから、変化すべきときには、背中を飛び蹴りされてようやく飛び降りることになる。


夫の何回目かの転職のとき、私はまだジタバタしていて、ぽろりと韓国人に愚痴を言ったら、
「(職を転々とするのは)評価が落ちるんじゃ・・」
と言われて、「そんなこたぁ百も承知じゃ!!」と頭に来たが、なんのことはない、私自身が思っていることをそのまま人に言わせただけ。
人から言われることは、自分が思っていること。
人からされることは、自分が自分にしていること。


だから、転職しそうになるときには、

「最善のことだけが起きてる」
「なんだか知らないけど、これでますますうまくいっちゃう」

と思うことに努め、私は私のことを淡々とやるようにしてきた。
私も仕事をしているし、絵もまあまあ売れているし、しばらく夫が働かなくても困らないのも確か。

すると韓国人が、言った。
「〇〇(夫)は上手に仕事を見つけて来てスゴイよね。誰でもあの人に会えば、すごくいい人間だってわかるから、採用したくなるんだよ」



仕事を探し始めたのが先週のこと。
最初に応募したところの面接が昨日で、その場で採用で、今日から仕事に行っている。
同じコンストラクションの仕事だが、ちゃんとした組織で、1年勤務すれば年に2週間の有給休暇や、リタイア後の投資なども用意されており、さらには前の会社と同じ時給で採用してくれた。
日本では考えにくいけれど、有給休暇のない職場は多い。私の職場も、ようやく今年から年に5日の有給休暇が認められるようになったばかり。


先ほど、昼休みの夫から電話があった。

「初日の感想はどう?」

「うん、うまくいってるよ」

明るい夫の声を聞いてほっとする。
変化を愉しむということは、自分の人生を、相手を信じる、ということでもある。
今までだって大丈夫だったように、これからだって大丈夫なんだ。
変化したい!とは思わないまでも、少しは変化を恐れなくなっている。それは、開き直りでも腹を括ったのでもなく、信じる力がついてきたのだといいなと思う。