2012年に制定された障害者総合支援法の第7条には「障害福祉から介護保険に移行する時には、国や自治体が障害福祉制度自立支援給付に『該当する』と定めている介護保険給付を優先する」と定めている。これにより介護保険制度に同様のサービスがある場合には、介護保険を原則優先する事になっている。しかしそのため、それまでと同様のサービスが受けられないとか、自己負担が増えるなど障害者の命と尊厳、社会保障が脅かされ問題化している。
例えば、65歳で介護保険になった場合、①障害福祉サービスの生活介護の通所施設・作業所(就労継続支援A型・B型は対象外)や訪問(居宅・短期入所・共同生活介護=グループホーム)、身体介護(食事・排泄・入浴介護等)、重度訪問介護、短期入所、グループホームなどが介護保険に優先され、従来と同水準のサービスが保障されない場合がある。②利用時間も介護保険は介護度で定められ、同じ時間が保障されない。どんなに重度であっても介護保険の認定等級による固定された費用になる(上乗せ給付もあるが、要件を設定する自治体もある)。③障害福祉サービスは非課税所得の場合、利用負担はないが、介護保険の給付は所得がなくても利用料は1割必要である。④事業所が障害者対応でない場合、事業所を変えなければならない。など生活を維持できなくなり、経済的負担も増す。
65歳で介護保険を申請しない事により、それまで受けていた障害福祉サービスを打ち切る事は違法である。2018年12月13日に広島高裁岡山支部(浅田裁判)は、介護保険優先原則を理由とした障害福祉サービスの打ち切り問題での訴訟判決で「障害者総合支援法第7条は、障害福祉サービスを利用していた障害者が介護保険サービス利用を申請した場合に生じる二重給付を避けるための調整規定であり、介護保険制度に申請していない場合この調整規定は採用されない」と断じた。
介護保険を申請しない場合は、はっきりその意志を伝える事が必要である。一度介護保険を申請すると、サービス提供の要件を満たす限り将来にわたって介護保険からサービスが提供される。それを断り、障害福祉サービスを受ける事はできない。
(2019年12月10日投稿)