2020年5月5日、大阪府は新型コロナウイルス対策本部会議を開催し、特別措置法に基づく休業と外出自粛要請の段階的解除に向けた独自の基準「大阪モデル」を決定した。吉村洋文・大阪府知事(大阪維新の会)は、安倍自公政権に抗議する姿勢を見せ、威勢よく、頼れる救世主顔をしてメディアに登場し、多くのテレビ番組も高く評価しているせいかこの事を取り上げている。
ところでその基準は、①感染経路が不明な新規感染者が10人未満、②検査を受けた人に占める陽性患者の割合(陽性率)が7%未満、③重症病床の使用率6割未満、の3点。これを「警戒信号の消灯基準」とし、①と②については過去7日間の平均をみる。
感染状況が悪化した場合に、改めて休業や外出の自粛要請をする基準は、①1週間の経路不明者の平均が前週と比べて同じか増加、②経路不明者の人数が概ね5人以上、③陽性率が7%以上、の3点をすべて満たす事としている。
おまけに、大阪城や通天閣などをライトアップし、「警戒信号の消灯基準を満たしているうちは緑色。警戒信号が点灯すれば黄色。概ね2倍になった場合は赤色」とするなどとしている。
さて、吉村氏がこの「大阪モデル」を独自に決定した裏には何か「維新の会」としての意図目論みが存在するのではないかと考えているのであるがどうでしょう。それというのも、このコロナウイルス問題で多忙を極めている中であるにもかかわらず、今月5月8日、内閣の判断で検察幹部(検事長)の「役職定年」を延長できるようにする検察庁法改正案の委員会審議を松本文明・衆院内閣委員長(自民)が、野党の要求を無視して職権で強行に開催したが、その際出席したのが自民、公明以外では、「日本維新の会」だけだったからである。
吉村府知事の「大阪モデル」は、2025年「大阪万博」を実現するために「維新の会」に注目させイメージアップを狙うものである。また、安倍自公政権に対して対抗的な態度を見せるのは、裏では相互了解済みの企てで、安倍自公政権にとっては「今後のコロナ政策」において「時間」を稼ぐためと、「維新の会」に「お先棒担ぎ」をさせ、府民(国民)の反応を観察するためで、「維新の会」としては党の評価人気を高め、国会において今後さらに自民党の補完勢力として議席を増やすための「印象操作」である。それは公開の場に出る際に、胸に「2025大阪万博」をアピールする文字が大書されている上着を彼が常に着ている(非常識だと思うが)事からも明かであろう。そしてこの「大阪モデル」のさらなる問題は、上記の基準が「砂上の楼閣」の論理である事だ。それは、特に①②に関してであるが、これらの基準の数値が真に有効性を持つのは、基本的には、府民(国民)が、感染の不安を解消するために、どんな制限も受ける事なく速やかに「PCR検査」を受けられる態勢が整備された上での検査総数を基にしていなければならないであろう。しかし、「大阪モデル」はそこを故意に触れないようにしているのである。これでは得られた数値が上記の基準を満たしているか否かは正確に判断できない。つまり、詐欺のような判断、府民(国民)を欺瞞する判断であるといってよい。このような事から、「維新の会」の「大阪モデル」はパフォーマンスに過ぎないというしかないのである。この論理は安倍首相のもの(5月4日の記者会見)と同根であり、無責任極まりないのである。例えばそれは、(検査数が少ないにもかかわらず)「緊急事態宣言から間もなく1カ月。一時は1日当たり700人近くまで増加した全国の感染者数は、3分の1まで減少した。収束に向けた道を着実に前進している。……感染拡大を回避し、減少へと転じさせる事ができた」というものである。どれだけの府民(国民)がその通りであると納得したであろうか。騙されてはいけない。今国民が安倍自公政権や吉村府知事など自治体首長に要求すべき事は、全国民が手続きや費用面などで大きな負担なく気軽に「PCR検査」を受けられるようにせよ、という事である。
(2020年5月9日投稿)