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★「恒久法」の現状と危険性について      へそ曲がり

2008年03月16日 09時14分52秒 | 国内政治・経済・社会問題
☆病院で寝ていても気が気ではありません。評論・報道の雑誌を読めば読むほど世界や日本の未来が心配になります。特に改憲議論が後退する中、頭をもたげてきた「恒久法」の動向です。

 名古屋学院大学講師の「飯島 磁明」氏が『恒久法がもたらす危険な時代』というタイトルで、“「改憲派の前首相が退陣しても、憲法状況の危険な動きは収まってはいない。自民党が民主党を抱き込んで制定しようとしている恒久法こそ、解釈改憲を実現できる究極の武器だ”と述べられている記事を3回に分けて紹介します。(「週刊金曜日」1月11日号 )
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 まだ国民の間ではよく知られてはいないが、恒久法とは、一口で言えば憲法9条を変えることなく、内閣の一存で自衛隊の海外戦闘を決定できるようになる法律だ。
 もしこれが制定されてしまうと、自衛隊が他国民を殺傷したり、あるいは逆に殺傷されるような事態が当たり前のようになりかねないという危険性を秘めている。それが意図するのは、憲法9条の実質的な空洞化にほかならないだろう。
 自民党は甲斐賢を決してあきらめてはいないが、改憲ができなくてもそれが目指すものが実現しかねない。したがって憲法状況を決める2008年最大の争点は、この恒久法にある。
 日本はこれまでアフガニスタン戦争にはテロ特措法、イラク戦争にはイラク特措法を制定して自衛隊を派兵し、戦争に協力してきた。だがいずれも「特別措置」という枠がはめられた限時法だった。派兵の期間が最初から限定され、延長する場合には国会の承認が必要となるなど、例外的な措置として見なされていたことを忘れてはならない。
 なぜなら9条がある限り、自衛隊は簡単に海外に派遣できないはずだったからだ。同時にイラク特措法のように、自衛隊が派遣されるのは「非戦闘地域」であって武力行使はできない戦闘になりそうな状況に置かれたら基本的には撤退する・・・という建前があった。
 ところが恒久法のもとでは自衛隊の武器使用基準が緩和され、「任務遂行」のためなら「敵」に発砲しても構わないというように変えられてしまう恐れがある。そうなると憲法9条があっても、実体的に自衛隊の海外派兵のみならず、戦闘行動も発生する可能性がある。無論、海外派兵にあたっては基本計画のようなものが国会に提出されるだろうが、いったん可決されればもはや国会のチェックは及ばなくなる。
 この恒久法が最初に論議されるようになった主なきっかけは、小泉内閣時代に福田康夫首相が官房長官だった当時の02年12月、同長官の私的諮問機関の「国際平和協力懇談会」が「提言」を発表し、恒久法の整備を打ち出してからだ。
 これを受けて03年7月10日の参議院外交防衛委員会で、「恒久法に踏み切らなかったのはどういうことでしょうか」と自民党議員から質問された際、福田官房長官(当時)は「時間的に・・・・間に合わなかった」と答弁している。しかもそこでは、「地方公務員や民間の方にも(派遣を)お願いする」と述べている点に注目する必要がある。つまり、自衛隊を派兵した場合、医療や技術者など自衛隊だけではフォローできない専門職まで動員することが想定されている。

【法案の提出は次期総選挙後か】

 さらに06年8月には自民党の防衛政策検討小委員会が「日本独自の判断で自衛隊の派遣を可能」とし、「正当防衛を超える武器使用を認める」という内容の恒久法(国際平和協力法案)の素案を了承。安倍晋三前首相も昨年7月の参議院選挙後に恒久法を提出するとしていた。そうならなかったのは選挙に負け、自身が辞任を余儀なくされたためだ。
 ところが福田首相が誕生して、事態は再び急を告げている。町村信孝官房長官も11月1日、「新テロ特措法案をめぐる対応が決着以後、早急に検討に着手する」と発言しており、場合によっては次期衆議院選挙後に提出されるかもしれない。同月の「大連立」騒ぎについても、この構想は破綻したという見方が大半だが、楽観できる話ではないだろう。首相と民主党の小沢一郎代表の間では、恒久法の制定の必要性については認識が一致していたからだ。
事実、12月21日に民主党が参議院に提出した政府の新テロ特措法に対抗する「 国際テロリズムの防止とアフガニスタン復興支援等に関する特別措置法(案)」では、恒久法の速やかな制定の必要性を強調。のみならず、「復興支援活動の実施に対する抵抗を抑止するためのやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合」(法案20条)には武器使用を認めている。これは、イラク特措法での武器使用基準を超えるものだ。
 このように自民党と民主党の姿勢に基本的な違いはない。違いがあるとすれば、小沢代表が強調しているような国連決議を自衛隊の海外派兵の要件にするかどうかだけだ。
 さらに問題なのは、こうした法律面での動きと並行して、車の両輪のように実体面でも危険な兆候が生まれている点だ。つまり恒久法が前提とする海外での戦闘を想定して、自衛隊の装備がより遠方での行動を可能とするように同時進行で大型化・高性能化している。
 06年の自衛隊法改正により、自衛隊は専守防衛から脱して「海外任務」が本務となった。98年9月18日、衆議院安全保障委員会で安倍氏はF2支援戦闘機やF15戦闘機で北朝鮮を攻撃できるかどうかを質問していたが、昨年10月に事故を起こした航空自衛隊のF2はその4か月前にグアム周辺で初めて実弾爆撃訓練を実施した。戦闘能力からみてF2は外国に爆弾を投下する運営が想定されているが、このような兵器は専守防衛では認められなかった。
 しかも空自は05年度予算までに、計4機の空中給油・輸送機を発注している。1973年には田中角栄首相(当時)が、「田中三原則」を示して空中給油は行わないと国会答弁しているにもかかわらずだ。その結果、空自のF15などの行動範囲は飛躍的に拡大する。守屋武昌前防衛次官の疑惑の1つになっている大型輸送機CXは、現有のC1よりも航空距離が4倍に延びている。

【現実の生活と絡めた防衛論議を】

 かつての中曽根康弘元首相は「日本列島の不沈空母化」などと発言して批判を浴びたが、その中曽根氏でさえ「空母は持てない」と言明していた。ところが昨年8月に進水した「ヘリコプター搭載護衛艦」の「ひゅうが」は基準排水量が13,500トンもあり事実上の「ヘリ空母」だ。海自の輸送艦も補給艦も、遠洋作戦を想定して大型化している。
 ただ、実際に自衛隊が「普通の軍隊」並みに戦闘状態に入るのは簡単ではない。最初から攻撃を仕掛けるのは、国内外の世論が納得しないだろうからだ。
 逆に、イラクに派兵された陸上自衛隊の隊長が「イラクでオランダ軍が攻撃を受ければ自衛隊は情報収集名目で駆け付けて戦闘に巻き込まれるつもりだった」などと発言したように、撃たれたのでやり返した、あるいは身の危険が迫っていたから反撃したという口実なら、戦闘に移行しやすいのは事実だろう。
 自衛隊の派兵が恒常化したら、「こちらから手を出さない」という建前を崩さなくとも、「任務遂行」という名分でなし崩し的に武器使用が緩和される可能性は高い。
 では、こうした危険な動きをいかにくい止めるのか。たしかに昨年の参議院選挙で自民党は大敗したが、そこでは決して憲法や防衛が主要な争点とされたのではない。むしろ格差社会や年金、医療が中心だった。
 現在、福田首相の支持率が急落したのも、年金や薬害肝炎などの問題で不誠実な対応をしたからだった。したがって憲法や防衛をそれ自体として論じるよりも、現実の生活問題と絡めなければ国民には説得力がない。
 たとえば前述した「ひゅうが」は1隻約1,200億円もし、さらに同艦をもう1隻建造する。海外派兵を可能にする兵器に計2,400億円もかけなければ何ができるだろうか。
 生活保護の母子加算廃止で年間約60億円が削減され、老齢加算の廃止で削減されるのは約330億円だ。
 この約390億円が切られるだけで、多くの生活費をギリギリまで削って生活している人々がどれだけ困難に突き落とされるか分からない。
 何の意味があるのか疑わしい軍艦の巨額の建造費とどちらが有効な税金の使い方なのか、もはや明らかだ。
 今後恒久法が制定されると、日本の在り方が大きく変わっていくのは確かだろう。そこでは究極的には、「国家のために死ぬこと」が最高の美徳であるかのような社会が出現しかねない。そうさせないためにも、「何が有効な税金の使い方か」という論議と絡めて論じることが今こそ必要なのではないか。
コメント (6)
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