九条バトル !! (憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)

憲法論議はいよいよ本番に。自由な掲示板です。憲法問題以外でも、人間的な話題なら何でも大歓迎。是非ひと言 !!!

掌編小説 「日本精神エレジー」   文科系

2016年09月11日 20時46分26秒 | 文芸作品
「貴方、またー? 伊都国から邪馬台国への道筋だとか、倭の五王だとか・・・」
連れ合いのこんな苦情も聞き流して、定年退職後五年ほどの彼、大和朝廷の淵源調べに余念がない。目下の大変な趣味なのだ。梅の花びらが風に流れてくる、広縁の日だまりの中で、いっぱいに資料を広げている真っ最中。
「そんな暇があったら、買い物ぐらいしてきてよ。外食ばっかりするくせにそんなことばっかりやってて」
「まぁそう言うな。俺やお前のルーツ探しなんだよ。農耕民族らしくもうちょっとおっとり構えて、和を持って尊しとなすというようにお願いしたいもんだな」

 この男性の趣味、一寸前まではもう少し下った時代が対象だった。源氏系統の家系図調べに血道を上げていたのだ。初老期に入った男などがよくやるいわゆる先祖調べというやつである。そんな頃のある時には、夫婦でこんな会話が交わされていたものだった。
男「 源氏は質実剛健でいい。平氏はどうもなよなよしていて、いかん」
対してつれあいさん、「質実剛健って、粗野とも言えるでしょう。なよなよしてるって、私たちと違って繊細で上品ということかも知れない。一郎のが貴方よりはるかに清潔だから、貴方も清潔にしてないと、孫に嫌われるわよ」
 こんな夫に業を煮やした奥さん、ある日、下調べを首尾良く終えて、一計を案じた。
「一郎の奥さんの家系を教えてもらったんだけど、どうも平氏らしいわよ」
男「いやいやDNAは男で伝わるから、全く問題はない。『世界にも得難い天皇制』は男で繋がっとるん だ。何にも知らん奴だな」
妻「どうせ先祖のあっちこっちで、源氏も平氏もごちゃごちゃになったに決まってるわよ。孫たちには男性の一郎のが大事だってことにも、昔みたいにはならないしさ」
 こんな日、一応の反論を男は試みてはみたものの、彼の『研究』がいつしか大和朝廷関連へと移って行ったという出来事があったのだった。

広縁に桜の花びらが流れてくるころのある日曜日、この夫婦の会話はこんな風に変わった。
「馬鹿ねー、南方系でも、北方系でも、どうせ先祖は同じだわよ」
「お前こそ、馬鹿言え。ポリネシアとモンゴルは全く違うぞ。小錦と朝青龍のようなもんだ。小錦のが  おっとりしとるかな。朝青龍はやっぱり騎馬民族だな。ちょっと猛々しい所がある。やっぱり、伝統と習慣というやつなんだな」
「おっとりしたモンゴルさんも、ポリネシアさんで猛々しい方もいらっしゃるでしょう。猛々しいとか、おっとりしたとかが何を指すのかも難しいし、きちんと定義してもそれと違う面も一緒に持ってるという人もいっぱいいるわよ。二重人格なんてのもあるしさ」
 ところでこの日は仲裁者がいた。長男の一郎である。読んでいた新聞を脇にずらして、おだやかに口を挟む。
一郎「母さんが正しいと思うな。そもそもなんで、南方、北方と分けた時点から始めるの」
男「自分にどんな『伝統や習慣』が植え付けられているかはやっぱり大事だろう。自分探しというやつだ」
一郎「世界の現世人類すべての先祖は、同じアフリカの一人の女性だという学説が有力みたいだよ。ミトコンドリアDNAの分析なんだけど、仮にイブという名前がつけられてる。二十万年から十二万年ほど前にサハラ以南の東アフリカで生まれた人らしい。まーアダムのお相手イヴとかイザナギの奥さんイザナミみたいなもんかな。自分探しやるなら、そこぐらいから初めて欲しいな」
男「えーっつ、たった一人の女? そのイブ・・、さんって、一体どんな人だったのかね?」
一郎「二本脚で歩いて、手を使ってみんなで一緒に働いてて、そこから言語を持つことができて、ちょっと心のようなものがあったと、まぁそんなところかな」
男、「心のようなもんってどんなもんよ?」
一郎「昔のことをちょっと思い出して、ぼんやりとかも知れないけどそれを振り返ることができて、それを将来に生かすのね。ネアンデルタール人とは別種だけど、生きていた時代が重なっているネアンデルタール人のように、仲間が死んだら悲しくって、葬式もやったかも知れない。家族愛もあっただろうね。右手が子どもほどに萎縮したままで四十歳まで生きたネアンデルタール人の化石もイラクから出たからね。こういう人が当時の平均年齢より長く生きられた。家族愛があったという証拠になるんだってさ」
妻「源氏だとか平氏だとか、農耕民族対狩猟民族だとか、南方系と北方系だとか、男はホントに自分の敵を探し出してきてはケンカするのが好きなんだから。イブさんが泣くわよホントに!」
男「そんな話は女が世間を知らんから言うことだ。『一歩家を出れば、男には七人の敵』、この厳しい国際情勢じゃ、誰が味方で誰が敵かをきちんと見極めんと、孫たちが生き残ってはいけんのだ。そもそも俺はなー、遺言を残すつもりで勉強しとるのに、女が横からごちゃごちゃ言うな。親心も分からん奴だ!」

 それから一ヶ月ほどたったある日曜日、一郎がふらりと訪ねてきた。いそいそと出された茶などを三人で啜りながら、意を決した感じで話を切り出す。二人っきりの兄妹のもう一方の話を始めた。
「ハナコに頼まれたんだけどさー、付き合ってる男性がいてさー、結婚したいんだって。大学時代の同級生なんだけど、ブラジルからの留学生だった人。どう思う?」
男「ブ、ブラジルっ!! 二世か三世かっ!?!」
一郎「いや、日系じゃないみたい」
男「そ、そんなのっつ、まったくだめだ、許せるはずがない!」
一郎「やっぱりねー。ハナコは諦めないと言ってたよ。絶縁ってことになるのかな」
妻「そんなこと言わずに、一度会ってみましょうよ。あちらの人にもいい人も多いにちがいないし」
男「アメリカから独立しとるとも言えんようなあんな国民、負け犬根性に決まっとる。留学生ならアメリカかぶれかも知れん。美意識も倫理観もこっちと合うわけがないっ!!」
妻「あっちは黒人とかインディオ系とかメスティーソとかいろいろいらっしゃるでしょう?どういう方?」
一郎「全くポルトガル系みたいだよ。すると父さんの嫌いな、白人、狩猟民族ということだし。やっぱり、まぁ難しいのかなぁ」
妻「私は本人さえ良い人なら、気にしないようにできると思うけど」
一郎「難しいもんだねぇ。二本脚で歩く人類は皆兄弟とは行かんもんかな。日本精神なんて、二本脚精神に宗旨替えすればいいんだよ。言いたくはないけど、天皇大好きもどうかと思ってたんだ」
男「馬鹿もんっ!!日本に生まれた恩恵だけ受けといて、勝手なことを言うな。天皇制否定もおかしい。神道への冒涜にもなるはずだ。マホメットを冒涜したデンマークの新聞は悪いに決まっとる!」
一郎「ドイツのウェルト紙だったかな『西洋では風刺が許されていて、冒涜する権利もある』と言った新聞。これは犯罪とはいえない道徳の問題と言ってるということね。ましてや税金使った一つの制度としての天皇制を否定するのは、誰にでも言えなきゃおかしいよ。国権の主権者が政治思想を表明するという自由の問題ね」
妻「私はその方にお会いしたいわ。今日の所はハナコにそう言っといて。会いもしないなんて、やっぱりイブさんが泣くわよねぇ」 
男「お前がそいつに会うことも、全く許さん! 全くどいつもこいつも、世界を知らんわ、親心が分からんわ、世の中一体どうなっとるんだ!!」
と、男は一升瓶を持ち出してコップになみなみと注ぐと、ぐいっと一杯一気に飲み干すのだった。


                           (当ブログに初出、2006年4月27日)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本代表の見方 1970

2016年09月11日 17時19分24秒 | Weblog
日本のサッカーを見るなら、その前に南米やヨーロッパの代表やクラブのゲームを見て、まともなサッカーとはこんなもんだよというのを知らないとツラいんだよ。
野球に例えると、中国や東南アジアのチームがWBCの大会等でたまに来日して試合することがあるが目の肥えた日本のファンからするとアラがよく分かる。あのスイングは有り得ないとかあの守備体系は違うとか。野球の常識との比較は普通のファンでもすぐに出来る。
しかし、残念ながらサッカーになるとそうはいかない。日本の立場は野球で言うところの中国や東南アジアになる。
やってる方も見てる方も何となく分かったつもりになってるだけなんだよな。
だから日本代表のサッカーの見方であさってが続出するわけよ。
南米やヨーロッパのクラブや代表と比較すれば簡単に答えは出る。
その動きは有り得ないとかそこでそのプレーは無いだろうというレベルなんだよ。これは日本だけでなくアジア全体が。
だから何時になってもアジアのサッカーは浮上出来ない。幸い日本は金を掛けて海外から監督を輸入出来る。しかしこれも野球で言えばノムさんがフィリピン等に指導に行くようなものだから選手の能力とのギャップが激しい。ファンとのギャップも激しい。無理があるんだよね。でもだからといってレベルに合わせた監督をなんてやれば益々世界から取り残される。今は世界中のサッカーがテレビ観戦出来るのでファンはかなり目が肥えてきたがそれでもまだツラいんだよな笑
日本のサッカーを日本の中だけで考える人間は数多いから。分かるでしょ。
おれやおれの友人達のようにたまに日本の試合を見るような人間からするとビックリするような分析を聞かされるんだよね。おいおいそれは有り得ないぞという。来日する監督もそんな気分かもしれない。これもあれも知らないでプレーしてたのかという。だからもう少し南米やヨーロッパのまともなサッカーを見た方がいいのよ。じゃないとこの場面ではこうするのが当然というセオリーも分からないから。それを分からないで分析してもあさってでしょう。海外に行く選手がレギュラーに定着出来なかったり活躍が長く続かないのも根本的な部分に問題があるから。監督にして見れば、あのプレーが出来るのに何でこんな簡単なミスをするんだとなる。適当な積み重ねのツケが回ってくるだけ。
海外のゲームを見れば一発なんだけどね。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本代表 1970

2016年09月11日 01時07分30秒 | Weblog
W杯最終予選2試合が終わり、まあ酷い内容でございました笑
目についた問題点は大きいのが3つ。
DF、SH、香川。
DFは相変わらず吉田がやらかし、森重、W酒井とのパス回しも危険。
SHは長谷部の劣化が激しい。
パス回し、スペースのカバーは危なくて見ていられない。
そして香川。
ボールを欲しがり長谷部の近く迄下がるのはいいが、その後をどうした
いのかさっぱり分からない。
だから結局、岡崎、本田、浅野、清武等が死ぬ。
ザッケローニ時代から代表で輝けない原因をいつまで経っても解消出来ない。
動いちゃダメなタイミングで動き過ぎるんだよ。
あれでは裏取るのが得意な岡崎や浅野は消える。
そういう香川への評価が低かったザックは、不動のトップ下に本田を起用して攻撃はスムーズにやってたが、今は見る影もない。
結局、香川にこだわるとプレミア優勝チームのレギュラーFWがベンチスタートという、この方がある意味ミラクルの構成になる笑
もう香川は外せよ。見飽きた。
替わりに清武でも本田でもいいから岡崎を活かせるトップ下にしてくれ。攻撃の問題点はこれだけで殆ど片付くんだから。
そんなことより守備なんだよ。ヤバイのは。
長谷部がいい時は山口がボールを狩って長谷部が散らす。或いは長谷部が狩って、遠藤が散らすことでスムーズにいった。
しかし今は、山口が狩っても長谷部がロストする。山口はパス能力は低すぎるので、長谷部をスルーしてボールの供給は出来ない。やってもミスになる。初戦に抜擢された大島も長谷部のミスの最大の被害者にしかならなかった。
というわけで、長谷部も外せ。
次に吉田。何でバイタルであそこまで手を遣うのか分からない。そんなに笛吹かれたいのかね笑あそこまでいくともう病気だぞ。結局そこから失点する。プレミアでも同じことやってベンチの信頼を失ってるのだから、いい加減に直せ。
でも高さのある吉田は外せないんだよな。
つまり、今の代表は、吉田→長谷部→香川というチームの背骨にあたるセンターラインがことごとく不安定なんだよ。だから内容がひどくなる。まあ人材は居るのだから早めに見切りをつけるようにしてくれ。ハリルならばそれは間違いなく出来るはず。初戦山口の代役に大島を起用したのは流石最適解を出せる監督だなと思ったからな。
コメント (9)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする