九条バトル !! (憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)

憲法論議はいよいよ本番に。自由な掲示板です。憲法問題以外でも、人間的な話題なら何でも大歓迎。是非ひと言 !!!

米経済衰退史と、その復活策   文科系

2019年09月02日 13時23分25秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 これは、『マスコミに載らない海外記事』サイトからの転載です。筆者は、元米経済政策担当財務次官補。
 現在トランプが大きく叫び始めた「在中国米企業は米に戻れ命令」に関わって、米国産業衰退史と、この命令促進の具体的方策などが提言されています。なお、この歴史回顧部分には、日本の貧困化と同じ原因などが見えてくるので、興味が尽きぬものがありました。例えば、こんな部分。
『資本主義のアメリカ労働力からの逃避が、アメリカを、雇用が主に低賃金の国内サービス職から成り立つ国、半世紀前のインドに似たものにしてしまっている。暮らしてゆける賃金の仕事が欠如していることが、非常に多くの24-34歳のアメリカ人が独立した暮らしができず、親や祖父母と一緒に家に住んでいる理由だ』

 中見出しは文科系が付けました。かなりな長文ですので、略した部分も多くなっています。
 

【 アメリカ経済を復活させるのは可能だろうか? 2019年8月26日 Paul Craig Roberts

 はじめに トランプの「在中国米企業は米に戻れ」命令

 トランプがアメリカ企業に中国から出て、企業が放棄したアメリカ労働者に雇用を戻すよう命じたことに対し、読者から(私の過去の)功績を認められて私は驚いている。アメリカ経済学者や経済マスコミやワシントン政策当局は、グローバリズムとアメリカの雇用と技術を海外移転することに関する私のアメリカ景気悪化の分析に一度も注意を払ったことがなかったし、読者もそうだろうと私は思っていた。多くの読者が、経済学は彼らの理解を超えると言ってこられる。私の経済記事は、このウェブサイトで一番読まれていない。
 遥か遠くイランのPress TVを含め外国メディアが、ホワイトハウスに対する私の影響について、すぐさまインタビューを求めて私に連絡を取った時、私はまたもや驚いた。その全ては一体何を意味しているのだろう?

 第一に、誰かがトランプに私の最新コラムを見せて、それでスイッチが入った可能性があると私は言いたい。だがトランプが企業に国に戻るよう命じたのは、彼の恫喝の単なるエスカレーションであり、彼の理解ではなく、アメリカ人に良い仕事がないことや、その実収入下落を正す関税の無力さを反映している可能性もある。
(中略)

 米企業の対中進出を振り返る

 先に進む前に、要約しておこう。ソ連が不意に突然崩壊したとき、中国とインドは社会主義を断念し、欧米資本に彼らの経済を開いた。(中略)
 最大の人口を持つ国のインドと中国が至った結論は、社会主義は崩壊に至るが、資本主義が富に至るということだった。世界で人口最大の二国の巨大な不完全就業労働力が、初めて外国による搾取に利用可能になったのだ。労働市場には、巨大な過剰供給労働が存在していたから、労働力は搾取された。すなわち生産への寄与以下しか支払われなかった。労働の供給過剰は、労働力は、企業の収益に貢献したよりずっと安く雇用されることを意味する。
 企業CEOや重役やウォール街は、利益を増やすこの機会に気が付いた。最初に中国に急ぎ入った企業は失望し、機会は見かけほど良くなかったという言葉が出た。だが中国は海外生産を儲かる事業にしようと努力し、製造業雇用が群れをなしてアメリカを去った。結果はアメリカ中産階級と、それによる州や市の課税基盤の減少だった。アメリカは繁栄を止めたが、経済的な損傷は、インフレーションや雇用やGDP成長のニセ報告と、資産の価格と不動産を支えた極めて大量の金の連邦準備銀行印刷で隠蔽された。

 傷を隠すことが困難になった時、中国はアメリカに余りに多くを輸出して、アメリカ労働者を傷つけたとして非難された。中国を非難する人々は、アップル・コンピュータやiPhoneや、ナイキの靴やリーバイ・ストラウスジーンズなどで構成される中国からの輸入の割合を見ようとはしなかった。アメリカ企業の海外生産は輸入の大きい割合を占めている。彼らが売るためにアメリカに戻る時、アメリカ企業の海外生産された商品やサービスは輸入として扱われる。
(中略)

 結果、米国内産業力はこのように衰えたが・・・

 最後に四半世紀後に結果として生じたものは、アメリカの製造と産業を支えたサプライチェーンと労働力の解体だった。かつて栄えた工場や工業団地は閉鎖され、潰される走りかコンドミニアムやアパートに換えられた。トランプがアメリカ企業をアメリカに戻すことができたら、それらはどこに行くのだろう?

 海外移転時代は、六カ月の景気後退では済まなかった。それは、熟練した経験豊かな労働者が年を取って、亡くなり、新しい参加者が誰も技能や労働規律を習得しない年月だった。現在、中国は完全に発展した製造・産業経済だ。アメリカはそうではない。
 アメリカ企業が国内に戻るためには、彼らはアメリカの開発半ば、あるいは未開発経済のために、中国の発展した経済を離れなければならない。もし彼らが突然これをするよう強制されれば、彼らは、製造と工業大国としてのアメリカをよみがえらせるために必要な、生産設備、労働力、サプライチェーンや輸送システムを再生できる前に、中国での彼らの生産を失うのだ。雇用統計を見れば、アメリカが製造と産業の仕事を生み出していたのは、何年も昔のことなのがわかる。

 四半期世紀にわたる、資本主義のアメリカ労働力からの逃避が、アメリカを、雇用が主に低賃金の国内サービス職から成り立つ国、半世紀前のインドに似たものにしてしまっている。暮らしてゆける賃金の仕事が欠如していることが、非常に多くの24-34歳のアメリカ人が独立した暮らしができず、親や祖父母と一緒に家に住んでいる理由だ。それは大学出身者が学生ローンを返済できず、負債奴隷に変えられている理由だ。
 これがアメリカ企業を中国からアメリカに戻すために、トランプがしなければならないことなのだ。移行は緩やかでなければならない。彼らがアメリカで生産するための必要条件を再現することができるよう、企業は中国に海外移転した生産を段階的に減らせるだけだ。この過程は、結果的に、未開発の経済に、開発をもたらすようなものだ。

 トランプ、すなわちアメリカ政府は、企業収入が負担をかけられる方法を変えることにより、コストがアメリカ人労働でアメリカ市場のために再び生産することに関連する彼らの労働(や規制や義務などの)コストの大幅増加に対し、企業に支払いをしなければならないだろう。国内市場のために、国内労働で生産する企業は、より低い税率になるだろう。アメリカ市場のために外国人労働者で、外国で生産する企業はより高い税率になるだろう。税率の差は、人件費の差を相殺するように算出可能だ。外国での販売のために外国で生産する企業は影響を受けないだろう。

 もし彼らがアメリカで製造するための条件を再構築できる前に、アメリカ企業に中国から出るようトランプが命じれば、企業は売上高と収入がなくなり、潰れるだろう。

米企業回帰への諸困難

 トランプがアメリカ企業に中国を去って、国に戻ることを命じることができるか否かについて、疑問がおきる。トランプの命令は、単なる美辞麗句であるかもしれない二つの理由がある。
 一つは、企業は、低コストの労働力から生ずる彼らの既存の利益に満足していて、コスト節減を失うつもりがないことだ。あらゆる国で活動している、アメリカのグローバル企業は、アメリカ選挙に干渉する富を持っている。もしトランプがグローバル企業に反対して動けば、彼は他グローバル企業から選挙運動資金を受け取れないだろう。その代わり、彼の競争相手が受け取るだろう。

 トランプは海外移転取り引きは、アメリカ国民ではなく、企業だけのためにうまく機能していると主張することができる。「自由市場」主義の経済学者は、海外生産された仕事には、より良い仕事が置き換わり、海外移転で失われた賃金の損失を上回る値下げで、アメリカ消費者により多く割り戻すと保証した。そうはならなかった。読者の誰が、ナイキの靴、リーバイジーンズ、アップルコンピュータやiPhoneの値下げを経験しただろうか? 企業は自由市場の約束を果たさなかった。彼らはコストは下げたが、価格を維持した。より良い仕事の一つたりとも実現しなかった。企業を守勢に立たせるには、トランプはこれらの主張が必要だろう。

 二番目の理由は、トランプがアメリカ企業に中国を去って、何であれ残されたアメリカ労働力に戻ることを命じる権限は何もないと主張されていることだ。一時、これはおそらく、その通りだった。1952年、トルーマン大統領が、朝鮮戦争中に鉄鋼生産を止めるストライキを防ぐために、アメリカの鉄鋼産業を国有化した。最高裁判所はトルーマン敗訴と裁定した。だが今日クリントン、ジョージ・W・ブッシュとオバマ政権による大統領職への異常な権力集中が、「対テロ戦争」を戦うため議会によって行政部に与えられた後、今大統領は政令によって裁定することができる。

 トランプは1977年の国際緊急経済権限法を、アメリカ企業を中国から、アメリカに戻るよう命令する権限を彼に与えている法律として引用した。彼は多くの追加権限を持っている。人身保護令に違反して、法廷に提出された証拠がないアメリカ市民を無期限拘留する権限を持っており、適法手続きなしに、嫌疑だけでアメリカ市民の死刑執行を命ずることができる大統領は、欲するものは何でも命ずることができるのだ。

 ジョージ・W・ブッシュ時代の共和党とオバマ時代の民主党に作り出された権力に基づいて、トランプ大統領は、アメリカの雇用を奪い第三世界諸国の地位にアメリカを引き下げるべく、彼らが中国と共謀しているという理由で、生産を海外移転した企業のCEOと理事会を逮捕する権限を持っている。トランプがロシアとの関係を正常化するのを阻止するために使われたばかばかしいロシアゲート物語より遥かに良い論証がこのために可能だ。

 現実的方策

 闇の国家の支援を彼が確実に得られるようにするには、トランプは、アメリカが製造と産業能力を再確立できなければ、世界の覇者として留まるのに必要な兵器システムを生産し続けることができないことをアメリカ軍安保複合体に想起させるだけで良い。新刊、The Real Revolution in Military Affairs(本当の軍事革命)で、アンドレイ・マルチャーノフは、決定的な兵器システムと軍隊の統合で、アメリカは完全にロシアに、いくつかの点では中国にも水をあけられていることを証明している。実際、通常戦争で、アメリカがイランを破ることができるかどうか明確ではない。アメリカ兵器システムの多くの部分は外国で製造されており、それは戦時には供給問題を引き起こす。
 闇の国家の支持があれば、トランプは企業に国に戻るよう命じることができる。
(中略)

 アメリカが世界強国のままでいるつもりなら、製造と産業能力を復活させる必要があるという点においてトランプは正しい。アメリカが、それが認めた途方もない数の第三世界の人々を吸収するつもりなら、中産階級の仕事と昇進の梯子を復活させる必要がある。

 トランプが進むべき道は、企業に彼らが、消費者購買力を破壊し、それにより自分たちの長期的売り上げ破壊するという犠牲を払って、短期的に自分たちの利益を膨張させていると説明することだ。実収入が上昇していないアメリカ人には、アメリカ企業に収入を与える商品やサービスを購入する自由裁量の購買力が無いのだ。もちろんCEOや重役は長期的には、そこにおらず、気にかけないかもしれない。だが大統領は、それを愛国心の問題にして、彼らを困難な立場に追い込むことができるかも知れない。
 次に、企業が課税される方法を変え、アメリカで製造を復活させるために必要な条件を再現するため、トランプは企業と協力する必要がある。これは単純な課題ではない。それには対立ではなく、協力が必要だ。

 その間、移民を吸収する経済がないのだから、移住は保留せねばならず、ワシントンは戦争を止める必要がある。戦争に関連する費用や負債やリスクは、利益よりはるかに大きい。もしアメリカが針路を反転しなければ、未開発国になり下がるだろう。これは我々にとって、独裁者とされる連中や中東テロリストを支援する国々とされるものより遥かに大きな脅威だ。


 Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする